表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非リアから追放され、可愛い四姉妹とのドキドキハラハラな共同生活。ハーレムのようで、ざまあしかないんだけど  作者: ぴこたんすたー
第1章 自宅に女四人が揃ってもハーレムじゃない法則

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/46

第4話 同士も何も人様の食卓でくつろがないでよ

◇◆◇◆


「ねえ、あの日に交わした約束を覚えてる?」


「ああ、忘れはしないよ──」


 雪がちらつく街並みの寂れた公園で、少女は呟く。

 今夜は氷のように冷たい。

 温かいのは、二人が繋いだ手のひらの感覚だけ。


「──ずっと黙っていたんだけど、僕は君のことが……」


 僕は少女に初めて、胸の内を打ち明ける。

 知って知らずか、彼女が嬉しさで頬を緩ます、そんな静かな夜。


「僕は君のことが……」


「ワッショイ!」


「ハッスル!」


 ──ふとそこへ、騎馬隊による、上半身裸の筋肉質の一組の男共が現れる。

 その一つの肉塊が、僕と少女の間に強引に割り込んできた。


「そーれ、見やがれ、お祭りだああああー!!」


 騎馬隊の展望席で、一人の男子が吠えたてながら命令を下し、僕らの周りで容赦ない邪魔をしてくる。

 何だよ、今は大事な話をしてるのに……。


『ダンダンダン‼』


 すると、遠くから削岩機のように、喧しく鳴る音が聞こえてきて──。


****


『──ダンダンダン‼』


「──さっきからうるさいなー、僕の周りを彷徨(うろつ)くなー!」


 僕は視点が逆さの状態で、絨毯の方に頭を向けていた。

 どうやら寝ぼけて、ベッドから滑り落ちたらしい。

 幸い、体の半分の主導権である両足は無事であり、床に向けての全体の衝突をギリギリで食い止めている。


『ダンダンダン──‼』


 だから何なんだ、この異常すぎる破壊音は……というか、そもそも、この世界で発する音なのかこれ?


 僕は体勢を整えて、ベッドから飛び起き、いつもの軽快な黒いシャツと肌色のチノパンに早着替えし、音の発生源を探す。

 不快な音は窓の外ではなく、この家の中から聞こえているようだ。


 ここにドデカイ()()()リゾートを建てるために、立て壊しをしている業者の仕業かな?


 そんなことはさせないよ。

 僕は大きなスコップを持って、音も立てずに部屋から出る。


「もうどうしてそうなるのよ‼」


『ダンダンダンー‼』


「だから切り方自体がなってないつーの‼」


 スコップを構えた前傾姿勢で進む中、キッチンの方から次女の美冬(みふゆ)と思われる怒声が響いてくる。

 この腹に堪えるような、削岩機のような騒音と一緒に……。

 こんな朝も早くから、雄鶏のように騒がしい姉妹だよね……。


「だって美冬の言う通りにしたら、こうなるわけで」


「嘘おっしゃい! アタシは正論を述べてるだけ。秋星(あきほ)のセンスが無さすぎなのよ!」


 秋星と美冬、お互いに相性が悪いのか、この家に来た当初から、ぶつかり合う関係。


 何やら今日も朝から、姉妹で揉めてるようだ。

 だから彼女でもない姉妹なんかと、シェアハウスしたくなかったんだよ。


 それに話の筋からして何だ? 

 着替えコーデでもしてるのか?

 場所がキッチンからして、エプロンの問題かな?


『──ねえ、美冬。このエプロンどーう?』


『まあ、今どき流行りの裸エプロン!! ご立派な性分だわー‼』


『私の殿方の志貴野(しきの)くんも、これでイチコロね』


『秋星違うわよ、それはチョココロネよ‼』


「──でへへっ」


 僕の妄想ラインは本日も絶好調だ。

 もう興奮越えて、ほどばしるマグマが吹き出そう。

 ゆっくりとスコップを床に置き、キッチンの手前で衝動的になった鼻の頭を指で押さえる。


「……このキモオタは、こんな所で何ボーと突っ立てるのかしら? エプロンがどうとか呟いてるし、地球一の変人なのかしら?」


「美冬、怪我人にそんな言い方はないでしょ」


「あのさ、秋星、ちゃんと見てよ。怪我も何もエロい妄想で、鼻血流してるだけじゃん。マジでキモ」


 エロじゃない、健全な男の生理現象だ。

 響きは似てるけど、生理食塩水ともちょっと違う。


「……どこかで頭を強く打ったのかも」


 四女の春子(はるこ)は優しいよね。

 あれから色々とあったけど、本人はその件に関しては追求してこないし。


「じゃあさ、夏希(なつき)お得意の寸止め特大パンチで驚かせたら、止まるかもね!」


 あの、三女の夏希様、その止め方はしゃっくりだよね?

 息の()を止めてどうする。

(そこまでは言ってない)


(ところ)でさ、お前ら、朝っぱらから人様のキッチンで何してんの?」


「はあ? 見て分かんない? 朝食を作ってるのよ!」


「飯なら冷蔵庫に食パンがあるけど?」


「バカねえ、無いから作ってんじゃない!」


 えっ、つい三日前に冷蔵庫の食材が空だったんで、買い物に行ったばかりなのに?

 僕は不思議に思いながら、冷蔵庫の中身を見てみるが……。


 扉の中は何も食材がなく、がらんどう。

 おまけに調味料の味噌、マヨネーズ、ソース、ケチャップ、豆板醤さえもない。


「えへへ。昨晩お腹が空いてましたんで、冷蔵庫の食材をペロリといただきました」


 そこで夏希がすまなそうな表情で、悪戯そうに小さく舌を出す。

 僕の穏やかな感情は、波にさらわれた。


「頂いて済む問題じゃないだろ。三日分の食材を返せ!」


 夏希に迫り、怒りの感情をぶつける。

 流石(さすが)の僕も、本気(マジ)で怒ったよ‼


「いや、もうこの場で吐けー‼」


「そんな前傾の巨人みたいなことできないって」


 夏希が腰を低くし、ボクシングのジャブのポーズをしてるけど、余程、僕に責められたいみたいだね。

 大方、調味料もまるごと胃に収めたのだろう。

 病院のレントゲン検査にて、飲み込んだ容器が丸ごと映るに違いない。


「何だって。お前はできる前から諦めるのかな?」


「目が怖いって」


「誰のせいだよ!」


「まあまあ、志貴野お兄ちゃん。一旦落ち着いて」


 夏希への怒りの沸点が超えて、八つ当たり気味で反論する僕。

 他の姉妹が庇っても、人の食料を勝手に食べるのは泥棒と一緒だよ。


「あの、そんなことより、お腹空いてない? 秋星お姉ちゃんが朝食の準備が出来たって」


「今はそれどころじゃないよ。これから夏希を縛り上げて……」


「ひいい、リアタイ鬼畜ごっこは勘弁して!」


 とりあえず、夏希、何のゲームネタだよという、旬なツッコミは棚に置いておく。


「まあ、ゲームごっこもいいけど落ち着けよ、同士」


 同士という呼びかけに、僕の注意がそっちにそれる。

 食卓のテーブルでナイフとフォークを持って、堂々と実食しようとする賢司(けんじ)がいたからだ。

 僕は予想外の親友の登場に心の整理がつかず、頭を掻きむしる。


「同士も何も人様の食卓でくつろがないでよ。どうやって入ってきたの?」


「えっ、そこの可愛いお嬢ちゃんから、そこの志貴野と同じ高校のイケメンさん、朝食いっぱい作ったんでいかがですかーって誘われて」


 だからって他人の家に入って、食事を待つとは。

 イケメンなら不法侵入でも、スマイル0円を見せれば犯罪にならないのか?


「えへへ。ハルは可愛いだって」


「……ハル、本当に勘弁してくれよ」


 中学で、この勧誘力。

 春子の言動にも困ったものだね。


「それよりもめひくわねへのか?」


「食べながら喋らないでよ」


 賢司が口に大量の食べ物を頬張りながら、僕に解読不明な質問をする。

 ご飯粒がオリンピックの競技みたく、勢いよく飛んでるよ。


「悪いな。オリンピックも何も、あまりにも美味しい朝食だったんで胸が踊ったぜ」


「この料理のどこが?」


 皿にのった黒く焦げた物は、ペースト状で原形さえも留めてない。


「あの、美味しくないんなら、無理して食べなくても……」


「何言ってんだ、秋星姉ちゃん! 出された物はきちんと食べないと勿体(もったい)ないし、失礼にあたるだろ‼」


「はあ、お腹イタイ……」


 昔からモテていた賢司は、女性に対する口の言い方も巧みだ。

 よくこの状況下で、そんなクサイことを言えるね。

 それを傍目にしてると、急性胃腸炎になりそうだ。

 本当、お腹がキリキリ痛むよね……。


「まあ、胃痛はともかく、志貴野も食べてみろよ。こんな美少女に囲まれての飯なんて生きてる内には早々にないぜ」


「僕には自然と人の我が家に溶け込んでる、賢司の方に感心するよ」


 僕が思ったままの答えを口に出す。

 この悪友には正攻法からぶつからないと、話が通用しないからね。


「ふっ、コミュ力の高さなら負けねえぜ」


「……いや、別に競ってないから」


 出たよ、男性お得意のマウント攻撃。

 何かしろ競争しないと気が済まないのは分かるが、何でも火種にしないでほしいよ。


「そんなことより、早くしないとご飯冷めるよ。秋星が折角(せっかく)作った肉じゃがなんだし」


「美冬、これはジャガイモのサラダだよ」


「うへぇ、マジで? 本当に料理のセンス無いわ……」


 そうか、ジャガイモだから、ドロドロに溶けた料理になってるのか。

 賢司はウマイと叫びながら、黒い絵面の朝食をかきこんでいるけど、胃にも悪いから、よく噛んで食べてよね。


「さあ、たーんと召し上がれ!」


「夏希は食料を漁っただけだよね!!」


 和やかな朝食をぶち壊すような、鼻高々な夏希を叱りながら思う。

 事件の再発防止として、冷蔵庫にも何かしらの鍵が必要だと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ