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非リアから追放され、可愛い四姉妹とのドキドキハラハラな共同生活。ハーレムのようで、ざまあしかないんだけど  作者: ぴこたんすたー
第2章 四人の花に囲まれても得られるものは不幸せ

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第6話 これから家で世話になるから、その記念にね

◇◆◇◆


「──今日は付き合って、一週間記念日だね」


 腰まで長い黒髪の女の子が()()()()()、こちらに手を伸ばしてくる。


「何、この程度で腰抜かしてるの? 私の王子さまになるって言ってたじゃん!」


 そうか、僕は怖い思いをして、動けなくなって……男の癖に情けないなあ。

 女の子から引き上げられ、僕は強く決意する。


 これからも何があっても、彼女を守っていこうと……。


「さあ、さっさと次に行くよ。時間は限られてるんだから──」


****


「──おっ、遅いよ‼ 何時だと思ってるの?」


「ごめん、昨日、あまり寝付けなくてさ。気が付いたら明け方で……」


「だったら、ずっと起きてれば良かったじゃない。女の子を一時間も待たせて!」


「だから悪かったってば……」


 午前10時、お昼前の人気の少ない公園。

 赤いロングスカートで肌色のトレンチコートを羽織った、大人なコーデの秋星(あきほ)がプンスカと怒っていて、僕の顔を思いっきり睨みつけた。


「んっ……」


「何の真似だよ、セイウチ?」


 秋星が軽く目を瞑りながら、顎を少しだけ別の方向に反らしたが、僕には魚が欲しいセイウチの動作にしか見えない。


「違うわよ。遅れた罰として、そこの出店のアイスを(おご)ってって、言ってるのよ!」


「だったら声に出して言ってくれよ」


 餌が欲しいという観点は合っていたが、アイスが食べたいときたか。


志貴野(しきの)くんね、自分から買い物に付き合うと言わせて、堂々と遅刻して、そんな態度じゃあ、一生彼女なんて出来ないわよ‼」


「……うぐぐ。すいません。秋星お姫様……」


 本当に秋星には頭が上がらない。

 同じ同級生なのにしっかりしてると言うか……料理を作るのは、壊滅的に駄目だけどね。


「……何が壊滅的に駄目だって?」


「いや、気のせいだよ……」


****


「毎度ありがとうございました!!」


 笑顔の店員さんの明るい挨拶を聞きながら、僕はコーン付きのアイスを二つ持って、秋星に片方を手渡す。


「ううっ、意外と高かった……」


「何、もしかして泣いてるの?」


「ああ。玉ねぎのペーストが目に染みて……」


「そんなアイスの種類あったかな?」


 一つ500円もするアイスって、学生には敷居が高いよねと思いながら、アイスを食べる。

 バニラが濃厚で上品というか、スーパーの安売りアイスの味と全然違うよね。


「じゃあ、念願の買い物タイムだな。どこに行けばいい?」


 アイスのコーンを口に放り投げた僕は、秋星に行き先を教えてもらう。


「……志貴野くん」


「何だい?」


 秋星が俯いた顔で震え、両方の拳を握ってる。

 アイスだけじゃ飽き足らず、ジュースにするためにオレンジでも潰す気かな。


「そういうことは前もってリサーチしておくものよ。折角(せっかく)の買い物デートで、女の子にリードされてどうするの!」


「はあ……女の子って、ワガママの固まりだな。お腹イタイ」


「どっちがワガママなのよ‼」


 秋星が僕に向かって、ガチで怒ってる。

 通行人から『ねえ、あれって修羅場じゃない?』などと、噂され、耳を塞ぎたくもなるよ。


「うーん、じゃあ、ここの洋服店に入ろう。そうしよう!」


 この際、人目につかない場所なら、どこでもいい。

 僕は秋星の片手を掴み、目の前にあった、お洒落な店に入ろうとする。


「ちょ、ちょっと、志貴野くん、大丈夫なの!?」


「心配するな。今日は僕の奢りだよ」


「……志貴野くん」


 ヤベエ、無意識に秋星と手を繋いでしまった。

 そりゃ怒るよな。

 セクハラ容疑で、お役ごめんか?


「どうした、真っ赤な顔して?」 


「……何よ」


「もしかして、秋星もお腹イタイ?」


「もう、女の子に対して、その発言は失礼よ‼」


 気を遣ってるつもりなのに、何で機嫌が悪いんだよー?

 女の子の心って、宇宙の神秘みたいだよね。


****


「……何なんだ、このお店は?」


「ここはね、有名なブランドものを取り扱っている高級店なの。主にセレブ御用達の」


「何かの悪い冗談だよね?」


 どの洋服の値札を見ても、複数の万札が羽ばたいていくという、一般人には容赦ない金額。


 ふーむ、洋服にも富裕層の専門店とかあるのか。

 道理(どうり)で、数字の桁が違うわけだ。


「それで私の服を選んでくれるんだよね。どれにするの?」


「えっ、あっ、ああっ‼」


「あの……、何で前のめりになってるの?」


「いや、ただの男の子の生理現象です!」


 秋星を女と意識する度に、近くにあるランジェリーコーナーに、つい目がいってしまう。

 男って、想像以上にクズな生き物と、美冬(みふゆ)に罵られそうだ。


「クスクス。何でクズか、よく分からないけど、志貴野くんって、面白いねw」


「ああ、よく親友に言われるんだ‼」


「それって、ズバリ俺のことか?」


「あっ、賢司(けんじ)くん。ヤッホー!」


「ヤッハー、白い歯ー、秋星ちゃーん‼」


 どこから沸いたのか、奥の部屋から親友の賢司が顔を出してきた。

 相変わらずのイケメンで、芸能人のように歯並びも綺麗だ。


(ところ)でさ、賢司って、神出鬼没だね」


「ああ。お前の歩く所に現れる神だからな……って、何ちゃってー‼」


「ちゃってー、じゃないよ。くれぐれも僕たちの邪魔はしないでよ」


「ププッ。そんな強がり言って、お子ちゃまの小遣いで買えるような場所ですかあー?」


 賢司が口に手を当てながら、ニヤニヤと含み笑いを漏らす。


「……すいません。後でATM寄るんで、お金貸して下さい」


「うむ。分かればよろしい」


 僕の財布の残高は、千円が数枚。

 かと言って、冷やかしは悪いし、お年玉貯金を下ろすしかないな。


****


「あーっ。久々に羽を伸ばせたよ。楽しい時間って、あっという間だね」


「そうだね」


 財布の中も、あっという間に空しくなったけど。

 キャッシュコーナーで下ろすって言ったのに、賢司もギリギリしか、お金貸してくれなかったもんね。


「それよりも()()ワンピ、本当にタダで貰ってもいいの? 財布がどうとか呟いてるし、それなりに()が張ったんじゃない?」


「いや、大丈夫だよ。これから家で世話になるから、その記念にね」


「ありがとう。今度のお出かけの時に着ていくね」


 その白い清楚な柄のワンピースで好きな男をメロメロにして、ずっと仲良くして欲しいという、強い願いを込めたんだ。

 イタい思いをして買っても、着てくれなかったら、衣装選び責任者として、マジで凹むからね。


「……よし、そこで抱き寄せてチューだ」


 電柱に身を隠してるつもりのあの親友が、とんでもないことを言い出す。

 このヤベエ人は、いつまでついてくるんだろう。


「賢司さあ、物陰に隠れて、変なこと言わないでよ」


「俺は金貸しの地蔵だからな」


「それを言うなら、傘地蔵でしょ?」


 賢司が電柱から出てきて、今度は己の重要さを求めてくる。

 傘地蔵の公式とか、あったかな?


「クスクス。本当に仲が良いね。二人とも」


「まあ、コイツとは長い付き合いだからな」


「……まだ高校で出会ってから、そんなに間もないんだけど?」


「出会いに年数なんて関係ないよ。私は志貴野くんと出会えて良かったし……」


「えっ……?」


 秋星の声が急に小さくなり、肝心の言葉が伝わらない。

 それって、月とすっぽん?


「ああっ、何てね。ただのジョークよ」


「ただのねえ……」


 僕の前で、冗談を言う子には見えないんだけど?

 しょうがない、隣の夜ご飯担当(賢司)に訊いてみるか。


「おい、賢司。女の子って、()()()脳がパンクして、おかしなことを言うのかな?」


「お前の方が十分おかしいぞ……」


 そうか、僕は暑さで頭がやられてるのか。

 夕暮れの住宅街で、秋星が笑顔でこちらに手を振る中、僕は大きな買い物袋を両手に抱えて、彼女の元へと急いだ。


 ……というか、賢司がいた店の奥がバーゲンセール中だったとはいえ、秋星、服の買いすぎじゃね?

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