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天正十年の小夜曲  作者: 水上千年
第二章
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和睦

 北畠もまた疲弊していた。大河内城は堅牢ではあるが、あまりにも日数が長引いていたところに北畠の妻子が人質にとられてしまったという情報が入ったときの衝撃たるや。何代もの間本拠地だった多気谷を大御所のみならず御本所具房までもが去ってしまったために武運が尽きてしまったのだと城中では誰となく噂した。

 ついに戦を終わらせる時が来たようだ。

 和睦の条件として、信長の息子茶筅丸と具教の娘の雪姫を夫婦約束させるという案が提示された。今、雪姫は人質となり信長の陣にいるはずだ。具教と具房は条件をのむしかなかった。

 かすかに光がさす竹林。少女が枯葉に埋もれるように倒れ伏している。

 まだ焦げ臭い風が流れてくる中、多気丸は少女の肩を軽く叩いた。


「死んでいるのか?」

 

 少女は声にならないような声で呻いた。どうやら生きているらしい。

 多気丸は逃げ延びた北畠の者がいるのではないかと、節々が痛む身体で先ほどから竹林の中を探索していたのだった。この少女は北畠の御殿に勤めていた女房だろうか。着ている物はそれなりに上等だ。

 助けよう。北畠の姫様方を守りきれなかった、その償いのような心持ちだ。

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