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竜の瞳と聖女の涙  作者: 小鳥遊 美鈴
第二章  竜の瞳と聖女の涙
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第六話  聖女様

 コツコツと子気味いい音を立てて中へ足を踏み入れ、厳かな雰囲気の内装に圧倒されたのか双子は言葉もなくただ足を進めていた。このような場所に簡単に足を踏み入れて大丈夫なのかとレナが不思議に思っていると大きな扉の前に辿り着いた。この奥に聖女がいるらしい。扉の横に立つ男が箱を出すとレナは箱の中に札束を入れる。その多さに双子は驚いていた。


「レナ様こんなにいるのでしたか?」


「これは気持ちを入れれば良いからほんとならコイン1枚でもいい。でもあえてケチる必要もないでしょう? 気前よく見てもらえるのだから」


 ドロワもゴーシュもあまり納得はしなかったがレナがそういうならとそれ以上言葉を重ねなかった。

 すぐに静かに大きな扉が開かれさらに奥に続く扉があった。その扉の前には幾人かの列が出来ており順番待ちで暫く時間がかかりそうだなと見てとれる。


「しばらく暇だな」


「もうお兄ちゃんが言い出したんでしょう」


「だけどよーキレーな絵はなんか壁とか天井とか沢山描いてあるけどそれ以外見るもんがないし」


 やいやいと小言を言い合い始めた双子を宥めるべくレナはカラフルな飴玉を出し食べさせた。2人はもごもごと飴を頬張り暫く無言になる。


「レナってさ、俺らにお菓子出しときゃ黙るって思ってるとこあるだろ」


 飴を舐め終わったゴーシュがジト目でレナを見上げるがそれに答えず先ほどよりも大きな飴玉を押しつけゴーシュを静かにさせた。それをみたドロワはため息を一つ。やれやれと言いたげなドロワに気がついたゴーシュが文句を言おうと口の中にあるまだ形の大きな飴玉を噛み砕き口を開いた所ですかさずレナが飴玉を投げ入れゴーシュを驚かせた。


「食べてるうちにすぐ順番回ってくるから大人しくね」


 他に並んでいる者の中にはゴーシュたちと背丈の変わらない子どもがいるが静かに大人しく並んでいる。ガリッと飴を再び噛み砕きゴーシュは飴玉のお代わりを次々と要求していった。


「次だね」


 やがてレナたちの順番が回ってきた。3人同時に中へ入ろうとして足止めを食らう。曰く聖女の安全のために1人ずつ入れとの事。仕方がないとまずはゴーシュから中へ入っていく。


 暫くしてまた呼ばれ今度はドロワが。出口はまた別にあるらしくゴーシュは戻ってこなかったが、兵士が扉のすぐ近くで待っていると言伝を頼まれていた。こういった事はよくあると兵士は笑っていた。

 それから程なくしてついにレナの番がやってくる。静かに中へと入ると部屋の奥に座る者がいた。確かに背格好はゴーシュに似ているかもとレナは思った。


「どうぞ前へ」


 言われるがままに聖女へと近づいていく。聖女の周りに護衛の者は居らず、出口と入口の2箇所にそれぞれ2人ずついるのみだった。随分と手薄な警備だなと訝しむとそれを感じとったのか聖女はクスクスと笑う。


「他国からいらっしゃった方は大体驚かれるんですよ。さて、あなたのギフトを見ましょうか」



 そういうや否や聖女は目を閉じて暫し無言になる。レナは今何をこの人は見ているのだろうかとじっと聖女を観察しているとカッと目を見開き聖女はまるで信じられないものでも見るかのような表情をレナに向ける。


「あの……」


 レナが声をかけると、ハッと聖女は表情を戻しひとつ大きく息を吸い神妙な面持ちで語り始めた。


「あなたに聞きたいことがある。……自身が何者かを判っていますか?」


 視線を逸らさずじっとレナを見つめるそれは深い海のような美しい群青色の瞳だった。レナは思わずじっと見返して頭のどこかで確かにゴーシュに顔立ちが似ているのかもと思った。だがそれでも、質問の意味が分からず戸惑いばかりが広がっていく。

 応えないレナに聖女はふと目を伏せて、


「答えはきっとあなた自身が見つけていかなければならないでしょう。あなたが選ぶ答えを見る日が楽しみです」

 と、少し笑った。

 レナはますます訳が分からなくなり、


「私が何者か、それはギフトより知らなければならないことですか?」


 ここへはギフトの事を聞きに来たはずなのにと困惑を隠しきれず疑問を投げかけた。それに聖女は、答えを出さないのもそれも答えになると言う。ますます混乱するレナを見て聖女は笑み、やりたい事をしていけばいいという。


「ギフトは、見れなかったわ。でもあなたは世界と強く結びついている……どんなに時間をかけても解けない、引き千切ることも出来ないほど強固に、雁字搦めに。故にあなたの望みは大抵の事は出来るはず、心当たりあるのでは」


 確信を持って言う聖女にレナは何も言えなかった。


「最後に。あなたのこれからの道に祝福のあらんことを」



 そうしてレナは部屋を後にした。疑問だけを増やして。



「あっ、早くでよーぜ。なんか居心地悪りぃ」


「レナ様お疲れ様です」


 双子のいつもと変わらない様子に何故かほっとして首を傾げた。いつもの事なのに、あの聖女のいる場はゴーシュの言うようにあまり居心地の良い場所ではなかった。


「お待たせ、それじゃシャンディたちが待っているだろうし早く戻ろうか」


 大聖堂を背にし3人が歩き始めたところで何処からか声をかけられる。


「おーい、さっきぶりだなぁ」


「あれおっちゃん! 友人を待ってたんじゃないのか?」


「そうっだぞ。だが途中で用事が出来たらしくてな、もう別れたんだ。これから帰りかな?」


 ここに来るまで同じ馬車に乗っていた中年の男が側までやってきた。ポリポリと首を掻きながら男はゴーシュに笑いかけた。それに対してゴーシュがそうだよと言えば男は笑みを深め、またご一緒に馬車良いかなと聞く。


(帰りは静かに帰りたいんだけど……)


 チラリと見やればゴーシュはいいよなと表情が物語っていた。ドロワはレナの微妙な空気を感じ取ってかゴーシュを黙らそうとしてレナはそれより先にいいよと答えた。


(考える時間は後にでもあるし、ゴーシュが楽しそうだしな)



 ゴーシュはこの中年の男の話す冒険話などがいたく気に入ったらしい、帰りはずっと話をせがんでいた。

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