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竜の瞳と聖女の涙  作者: 小鳥遊 美鈴
第一章  竜の瞳と宝石の花
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第二十話  頼る事

 レナは数日静かに過ごした。お腹が空いた時にだけ外でご飯を食べに出る日々にハナには怪訝そうな視線を向けられるが深くは詮索してこなかった。


「あの2人、今はなにしてるんだろう?」


 まだブルーメとグレンからの連絡はなく、依代の種は変わらずなんの変化もない。便りがないのは元気な証拠というが果たして……。

 コツコツと編み物を生産し様々なレースのカチュームが出来上がっていた。これもセットにすれば付加価値が上がり良い値で売りつけることが出来るだろう。レナは早くフリーマーケットで販売をしたいなと思った。


(早く目が覚めればいいのに)


 ブルーメとグレンがいないこの状況で、双子はともかくシャンディはめんどうな事になるのは分かってはいてもレナはそう考えてしまった。すやすやと眠る3人を眺めまた1日が終わる。


 それから何日か経って、依代の種からブルーメが生えてきた。



「やぁ、僕が居なくて寂し……もう、冗談が通じないのはよくないよー? まあ、ともかく元気そうだねぇ」


「あなたも変わりがないようで」


「ふふっ、そうそう僕たちねぇ、ちょーっと帰るの遅くなっちゃうかもしれないんだぁ」


 不穏な事を笑顔で宣うブルーメの頬をレナは軽くつねりどういう事だと問えば、ギフト持ちの厄介な者に見つかって怪しまれているとの事。下手に動けばすぐに王に告げ口をされ、そうなると帰る難易度が跳ね上がる。今はじっと大人しくしていないといけないとブルーメは言った。


「それからねぇ、今王様は城には居ないみたいでね。聞いて驚いてよ? そっちに向かってるみたい」


「私の所へ? なぜ」


「あーえっと、違うよ。君の元って言うよりは国民に顔見せみたいな感じ? 国民の暮らしぶりとか見て行きたいってさー。ふっ、良い王様だよねぇ」


 ——本当にそれだけならさ。

 とりあえず暫くは出歩かない方がいいかもとブルーメは言い残し種に戻った。


(厄介事の方が来るのは嫌だなぁ)


 レナは快適に引きこもれるようにすぐさま外に必要なものを買いに走った。仕舞い込んでいる在庫を放出しても良かったが、緊急の時や食べたくなった時まで残しておきたいと考えていた。パン屋を梯子し、お持ち帰りのできる食べ物はどんどん頼み仕舞っていく。ブルーメの話を聞いたあとだからなのか、妙に街の中は浮ついているようだとレナは感じた。


「ルキフェル様がもう少しでいらっしゃるそうよね、楽しみだわぁ」


「王様が顔見せに来るのはいつぶりだったかな、でかい祭りになるな」


 通りすがる人々が王様の話題を口にしている。小耳に挟む程度だがどうやら国民には慕われているようだった。どんなに身なりが汚れている者にも手を差し伸べ生活していけるように補助をしたり、孤児院を建て身寄りのない子どもたちが路上で飢え死にしないようにと手を回し、年々ホームレスなど減っているという。それだけを聞いたならばとても国民思いの良い王様だが、裏ではあんな事をしていると知ったならこの人たちはどう思うんだろうなとレナは横目に通り過ぎていく。


「……あっ、どうしようかな」


 レナはついつい手持ちのお金を使い込んでしまった。去年沢山稼いでいたが値上がりした香辛料を好きなだけ買い、今回もついでだと食料以外に調度品や布類と様々に買い込んだ。今ではレナは1人で生活していない。住人が増えて色々と改築などをして生活を豊かにしようと思った結果だった。


(宿代はなんとか出せるけど今後ケーキとか買いたくなっても買えないのはなぁ……)


 材料はあれど作るには設備であったりレシピを知らなかったりするものが多い。レナは稼ぎにギルドへ向かうか迷った。ブルーメたちが帰ってくるまでまだまだ時間がかかるという。またゴーシュたちはすやすやと眠り続けている。


(けどうっかり依頼を押し付けられたら……)


 レナは悩みに悩んだ。悩んでそして、


「とりあえず一旦帰ろう」


 ハナの宿屋へ足を向けた。



「レナちゃんお帰りなさーい」


 宿屋へ戻ればハナが笑顔でレナをお迎えした。そうしてお迎えしながらもハナは手を動かしている。沢山宿泊予定が入ったらしく食材の手配やらなにやらで忙しいらしい。暇だったレナは手伝いを申し出た。


「レナちゃん本当にいいのー? 本当に助かるわぁ」



 ハナは嬉しそうにレナに仕込みをお願いした。今日の夕食はハンバーグだとの事で大量の合挽き肉を捏ねて後はすぐ焼けるように形を整えていった。


「ねえハナさん」


「なぁに?」


 ハンバーグを作りながらレナはハナにいいアルバイトか何かないかを聞いた。するとハナは少し考えおずおずと言葉を紡ぐ。


「レナちゃん、きっとレナちゃんが自分から言ってくれないって事は私に出来る事はないんだろうって思って黙ってたのだけれどもやっぱり隠されたりするのは寂しいわ。お友だちも全然見ないし何かあったのかなって思う。私、レナちゃんに昔から助けられてるからなんでも力になりたいって思ってるしどんどん頼って欲しいの。アルバイトだって本当はギルドに行って依頼をこなした方が手っ取り早いのにそうしないって事は他に困った事があるのでしょう?

 なんでもいいのよ、迷惑だったり無理かどうかはお願いされた本人が決めるものなの。レナちゃんが沢山悩み込む前に相談して欲しいわ」


「……そこまで切羽詰まったものではなかったのだけれど……そうか、そういうものなのね。私もハナさんから色んな事を学んできた。それに感謝してる。

 私、1人でも大抵の事はなんでも出来るしこなしていける。だから誰かに頼るのって普段からした事ないから少し新鮮な感じがするね。ねぇハナさん、少し相談したいことがあるのだけれどいい?」


「えぇ、もちろん」


 ハナはレナの言葉を遮る事なく静かに話を聞いた。とても忙しいはずだが時には作業の手を止め大事だと思ったところは殊更真剣に聞き、レナの話が終わった時に初めて口を開いた。



「それならもっと早く言ってくれても良かったわ。でも相談してくれて嬉しい」


「嬉しい?」


「そうよ、例えばお友だちだったり好きな人だったり

自分の中で大切な人から頼ってくれたらそれだけ信頼してくれてるんだとかそう思えて嬉しいの。ふふっ、レナちゃんは昔からなんでも出来ちゃったから仕方のない事かもしれないけれど人に頼る事をこれから覚えていけるといいわね。人はお互いに支え合って頼り頼られながら生きていくものだから。

 さてそれじゃあこの急ぎの仕事終わらせなくっちゃね。子どもたちの面倒もきちんと見るからレナちゃんは安心してギルドに行くといいわ、待ってる」


「ありがとう。それじゃあ早速ハナさんの仕事全部手伝ってから稼ぎに出るよ。人は支え合って生きていくんでしょ?」


 レナの事をよく知っている者しか分からないほどの変化で人によっては全くの無表情にしか見えないのだが、その時確かにふわりとレナは優しく微笑んだ。きっと本人は全くの無意識なのだろう、ハナはその表情にドキンと胸が高鳴りそれを誤魔化すように笑い仕事をお願いした。

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