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学園編-14



ドンドンと扉を叩く音で、私は目を開けた。

カーテンの隙間からうっすらと光が差し込んでいる。


私は適当に髪を整えて服を着替えると、そっと部屋から出た。


下の階からオリビアの怒声が聞こえる。

嫌な予感がして、私が慌てて階段を下りるとそこには見知った顔があった。


「ケイ…、」


「迎えの時間だ、モルガン」


冷ややかな視線が私に突き刺さる。

私が憶さず睨み返すと、オリビアが怒気を孕んだ眼差しで私の腕を捕った。



「貴女、王家の関係者だったのか、一体何のつもりだ」


ケイに見つかり連れ戻される事よりも、オリビアが敵視している国の人間として生かされていることが彼女にバレたことが何よりも心苦しい。


私は何も言葉を返せず、俯いて唇を噛んだ。


その腕を振り払ったのはケイだった。



「彼女に手を出すのは遠慮願いたいフォーシス夫人、…帰るぞ」


ケイはそのまま私の腕を引くと、後ろに控えていた騎士へ身柄を引き渡す。


私は無言のままオリビアに視線を送る。

このまま別れたら恐らくもう一生逢えることはない、自分の肉親への最後の言葉だった。


「私が、国を変えます」


オリビアの目が見開かれた。

目の前で扉がしまる。


騎士達に連れられながら、私は空を仰いだ。



「泣くのか?」



ケイは相変わらず愛想の無い仏頂面で私を一瞥する、

私はぎちぎちと音が鳴るほど手を強く握りしめると、精一杯の嫌悪を含ませて


「絶対に泣いてなんかやらないからな」


と、吐き捨てると馬車に詰め込まれた。



城につくと直ぐに部屋に放り込まれ、扉は表から施錠されてしまった。

バルコニーの扉も鍵が掛けられている。


ケイは「しばらく反省していろ」と言い残すと、私を置いて出ていった。



1人っきりになった部屋で、私は茫然と締め切られた扉を見つめていた。

1人になると色々考えてしまう。


私は混み上がる衝動に任せて目の前の扉をいきおいよく蹴りつけた、

金属がぶつかり合う大きな音がしたが、女1人の力では扉はびくともしない。




「すっごい気が立ってるね~、物騒なことはやめておくれよ」



呑気な聞き覚えのある声に、私は扉を蹴った気持ちの勢いのまま声の主を睨み付けた。


声の主、マーリンはわざとらしく怯えた顔をして肩をすくめた。


「おおこわ、折角わざわざ来てあげたのにそんな怖い顔して…」


「白々しい、あんたもどうせ一枚噛んでるんでしょ、あんなに早く見つかるとは思ってなかった」



ガラス越しにバルコニーを覗くと、昨日書いた魔方陣は跡形もなく消えていた。


恐らくあの魔方陣から場所が特定されるであろう事は予想済だったが、ここまで早く私がいなくなったことがバレてしまうとは思っていなかった。



マーリンは声を上げて笑うと、悠々と腰かけていた窓の縁から跳ねるように降りて両手を上げた。



「アッハハ、今回のは僕は何もしてないよ?君、コソコソ嗅ぎ回ってたのバレバレだったからさ、ケイ卿の見張り強化されてたんだ。

ダメダメ、やるならもっと上手く立ち回らなきゃ~」



顔の前で指をぐるぐると回され、私は力任せにその腕をはたき落とそうとしたが上手く避けられてしまう。



「まだまだ人としても未熟だね僕の弟子は、短慮軽率なクソガキだ」


つくづく癇に障る男だ、私は苛立ちを抑えきれず込み上げてくる涙を懸命に堪え、マーリンを睨みながら勢いのまま胸ぐらを掴んだ。

マーリンも今度は抵抗せず、正面から私の怒りを受け止める。



「教えなさい、母を…イグレインを殺したのは誰なの、全部知ってるんでしょ」



マーリンは胸ぐらを掴まれたまま無表情を貫いていたが、私のその言葉に目を細め、口元は三日月の様に笑みを湛えた。



「彼女は殺されたんじゃなくて、自分から愛する人と最期を共にする事を選んだんだよ」


外は日が暮れ初めて、部屋の中も薄暗くなり始めていた。

消えかけの西陽がマーリンの若々しく美しい白い顔を照らし、心の読めない魔術師をより一層不気味にみせる。


私は服を掴む手に再度力を込めると、その魔術師にぐっと顔を近づけた。



「嘘だ、真実を話してお師匠様、イグレインと一緒に死んだのは誰なの?」



マーリンがより一層愉しそうに笑う。


「…そこまでわかってるんなら、聞く必要あるのかなぁ?」


「魔術師のイグレインは私の生まれた歳に戦争に出され死んだと言われている、そして私と似つかない金髪の、魔術の使えない妹、この城…物語の答え合わせがしたいのよ私は…


母が制約を交わしたのは、母の愛したゴルロイス様じゃないんでしょう」




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