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学園編-11



懇親会は、新入生を歓迎する名目でのダンスパーティーであり、男女でパートナーを組んで出席するのが定例となっている。

おそらく、そんなイベントは確実にフラグイベントだ。


今までグローディアに寄り付く相手もおらず、ガラハットも引く手あまただが「面倒だ」という理由から二人で組んで出席していたが、

今後のことを思うと、ガラハットとヒロインにペアを組ませてどうにか懇親会に参加させるのが望ましい。



「私、今回はガラハットと組むのやめます、只でさえ変な派閥の噂が立てられてるのだもの」



グローディアがそう答えると、ジャンヌはその大きな瞳をこれでもかと見開いて身を乗り出してきた。



「え、じゃあグローディア誰と組むの…アテはあるの?」


「見つからなければ参加しなければ良いだけのことよ、もともと社交界は苦手だし、懇親会なんてコネ作りの場所でしょう?」


グローディアが将来なりたいのは国家公務員だ。国家試験さえ通過することができれば、コネクションや貴族同士の繋がりなどはさして気にすることではない。


「いや、参加しないなんてご令嬢でそんなの変に噂立つよぉ…からかわれて陰湿な嫌がらせとかされたらどうするの…」


「ならばガレス叔父様と出席する、それなら問題ないでしょう?」


テコでも意思を曲げようとしないグローディアに、ジャンヌは「も~!」と呆れた声を出す。


「グローディアってほんと頑固!」


そう言うとジャンヌはテーブルに肘をついて顎をのせた。

その顔は呆れながらも笑っており、グローディアはそんなジャンヌの向かいの席で「まぁね」と微笑んだ。


ゴーン、ゴーンと、鐘の音が聞こえる。

午後の最後の授業の終わりを告げる鐘だ。


「今日はこの後入学式だし、早めに食堂で夕飯すましちゃおうよ」


「…そうね」


勢いよく立ち上がるジャンヌに続いて静かに椅子を引くグローディア。

正直お腹は全く空いていなかったが、ジャンヌと過ごして少しでも気を紛らわせたかったのもあり、素直に着いていくことにする。







それから入学式でヒロインであろう少女を見つけるまでにそう時間はかからなかった。


大講堂の中心の通路を歩く新入生の列、ピンクゴールドのクリクリの髪の毛をツインテールにして、淡いブルーのリボンで結んだ実に愛らしい容姿の少女は一人だけ浮世離れしていた。


グローディアの隣に立っていたジャンヌが、

「あれ、あれがエリザベート王女よね」と声を殺して耳打ちしてきたが、グローディアは正直それどころではない。



とうとうこの時が来てしまった。



マーリンの説明では、いつからゲームが開始するのかは明確に断言されていなかった。

ただエリザベートが16歳になったという話が上がるまでまったく面識のなかったグローディアは、恐らくまだストーリーが進み始めていないだろうと踏んでいた。


しかし、ついにヒロインが自身の前に現れたのだ。


今まで1度も見たことがなかったが「まるで宝石のようなピンクゴールドの髪色」という事だけ聞き及んでいたので、グローディアはすぐにヒロインを見つけることができた。



一瞬、ヒロインと目があった気がした。



グローディアは慌てて視線を正面に戻し、少しだけ肩身を狭くみせる。


何とか自分を認識させないようにしなければ、会ったことすらなければ話は進まないだろう。

そもそもグローディアは裏でなにか悪いことをしているわけでもなく、やましいこともしていない。

むしろ出会ったところで何が起こるということも無いだろうが、会わないに越したことはない。


そう自分に言い聞かせると、再び背筋を伸ばして短く息を吐いた。


そういえば、妹が入ってきたのだ、アレキサンダーはどういう顔をしているのだろう。

と、好奇心でグローディアは斜め後ろにいる王子の顔をチラッと伺う。



その顔は微笑んでいたが、どこか違和感を覚えた。

エリザベートを見ていないのだ。


親族が入学してきたというのに、一切視線を送っていないように見える。

グローディアはゆっくり前に向き直るともう一度ヒロインを見る。


ヒロインはアレキサンダーの方を見ているようにみえた。



「どうかしたの?」



キョロキョロと視線をさ迷わせるグローディアに、ジャンヌが再度耳打ちをしてきた。


「いいえ…何でもないわ」


グローディアは首をふってすました顔をする。



そんな事はどうでもいい、自分が平穏に暮らせるのならば、藪をつついて蛇を出すくらいなら、見なかったことにしよう。


そう心に決めてグローディアは新入生の挨拶に拍手を送った。





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