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学園編-10




人だかりが退いていく。



グローディアは深呼吸をして胸を撫で下ろすと、崩れるように椅子にへたりこんだ。


「グローディア、めっちゃ露骨に王子様嫌いなの表に出てたよぉ~」


「き、嫌いじゃない!勘違いされてしまうからやめて頂戴!」


呆れたように笑うジャンヌに、グローディアは慌てて訂正をするが、周りの目線を見る限りそんな一度の訂正程度では収拾がつかないほどには、

お互いの派閥争いに見えていたであろうことは明白だった。


グローディアはがっくりと肩を落とす。


ここまでの学都での生活で、アレキサンダーと接点をほぼ持たずに過ごしてこれたのは自負しているが、いかんせん何故かグローディアの周りに集まってきたのは曲者揃いだった。


学都入学の際からアレキサンダーのライバルとして名前が上がっていたガラハットの幼なじみは、その王族に叔母を処刑された一族の娘なのだから当たり前に名前が一人歩きをしてしまった結果、

周囲からは「学都の影」と噂されているのは知っている。


そんな二人に寄りつくのももちろん一癖二癖あるような人達ばかりで、


グローディアの目の前にいるジャンヌ・ベッカーは、王都にある貴族御用達の高級娼館である『ミセス・ベッカー』の一人娘である。

娼婦上がりながら商才のあるベッカー婦人は、商会ギルドの重役で商人達の女主人といった風格のある人物らしい。


ジャンヌはその血を色濃く受け継いでいるのか、かなりの人たらしでのらりくらりと色々な貴族のお坊ちゃん達をその手練手管で虜にしており、純粋培養の御嬢様達には「雌狐」と陰口を言われているが、本人は全く気にしていない様子だ。


グローディアとは寮が同室ということで仲が良く、お互い居心地が良いと付き合っていた。



一方、先ほどガラハットと行動を共にしていたギルベルト・アードラーは、

入学試験の筆記テストで一位を取った秀才である。

魔術師としても才能に長けており、騎士科で勉強をし、将来は騎士団で現場ではなく、官僚コースである枢機院に所属し、実質軍部のトップである元帥になるという夢を追っている。


ただし、性格にはかなりの難があり、自分の認めた人間以外をかなり見下している節があるので、反感を買うことがかなり多い。


さらに枢機院で最も次期元帥に近いと言われているグローディアの父、ヴェインに憧れを抱いているため、グローディアには至極丁寧に接してくるのだ。

それにより裏で「フォーシスの参謀」と呼ばれている。



そんな、学都の灰汁をこしとったような面子が揃っていれば、何がなくともグローディア達がヒール役として認識されるのは回避できない事だった。



しかも今日は新入生の入学式だ。


現在の王、アーサーには子供が二人いる。


一人は今年19歳になるアレキサンダー、そしてもう一人が、今年16歳になる、アレキサンダーの妹であるエリザベート王女である。



"アーサーの娘であるエリザベートは、16歳の春に貴族や王族の子供が集まる学園都市に入学することになる。"



グローディアの脳裏に、生まれ変わる直前に聞いたゲームのあらすじを読み上げるマーリンの声がこだます。


「私の人生…ここからが本番なのよ…」


テーブルに肘をついて両手で顔を覆いながらボソボソとぼやくグローディアに、訳知らぬジャンヌは大袈裟に驚いたそぶりで笑いながらグローディアの頭を撫でる。


「やだやだ!そんなに深刻?ほら元気出してぇ~!」


無抵抗にしていたら目が回るほど撫でられたが、グローディアの心はここにあらずであった。



物心ついた頃に、マーリンに言われたとおりグローディアが自宅の書庫に行くとそこにはこの時代背景にはそぐわないネットレビューのカラーコピーの束が落ちていた。


それを読んだ限りでわかっているのは、4人の攻略対象キャラクターと、グローディアの最後の処遇だ。


一人は言わずもがな、先ほど現れた王子であるアレキサンダー・ペンドラゴン。

もう一人は、アレキサンダーの従者兼相棒と称される人物、ダーマット・シュバリエ。


さらに、なんと幼なじみのガラハット・ペリノア・ノーザンバーランド。


そして裏キャラとして、ギルベルト・アードラーが設定されているらしい。



この中でグローディアの身が滅びるようなレビューが書かれていたエンディングは、

アレキサンダーと、ダーマットのルートらしい。

どんな顛末になるかはわからない。ご丁寧にもマーリンはネタバレを含むレビューは削除していた。


ただ、レビューによれば「見ていてスッキリしました!」や「グローディアの最後は切なかった」などと書かれている事から、決して良いようにはならないなというのが安易に想像できる内容だった。


その時からグローディアは、出きる限りこの二人には悪い印象は与えず、かつ、できるだけ近づかずに過ごそうと心に誓い生活してきた。


そうして出来れば、幼なじみのガラハットとヒロインがくっつくのが望ましい。



「そういえばさぁ、騎士科の実習おわったら恒例の懇親会じゃない?グローディアは今年もパートナはガラハットにお願いするのぉ?」



グローディアはバッと顔を上げると、

「そう懇親会だわ…」と呟いた。




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