表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その魔獣使い、人類の敵につき。  作者: 有澤准
第二章 魔族領編
70/73

第六十四話 六人旅、スタート

 ブロロロ、とエンジン音をたてながら俺たちを乗せて三輪トラックは進んでいく。


 牽引されている荷車の中は思いのほか快適だった。所謂幌馬車という奴らしく、白いキャンパス製の幌がかけられていて外気の寒さをほとんど感じなかった。


「すごいね、ユキト! 外の世界にはこんなのがあるんだね!」

「うむ……知ってはいたが便利なものだな!」

「私、前で動いてる変なのに乗ってくる!」

「妾もいきたい!」

「じゃあ一緒に行こ!」


 ニナはそう言うと、八雲の手を引いて器用に幌馬車から三輪トラックの荷台に乗り移っていった。ニナと八雲ちゃんは初めての馬車……じゃないな、なんだ、これ? 謎の3輪トラックに大はしゃぎだが、俺としては異世界に唐突に出てきたこの謎の近代的乗り物が気になる。


「なあ……ここ異世界だよな……?」


 そばで地図とにらめっこしている峰村に問いかけると、峰村は首を傾げた。


「あぁ? そうに決まってんだろ」

「いや、なんで車があるんだよ……」

「今、次どの街にいくか決めてんだよ。鏑木に聞け……獣人のキッズがいるってことは……この町は駄目だな……うーん、いや、そもそも魔族もいるし……」


 そういうと、すぐに峰村はぶつぶつ言いながら地図に向かってしまった。


 しょうがないな……確かに運転してる立花と違って鏑木は暇そうにしてるし鏑木に聞くか……。

 といっても、俺、実は鏑木のこと声デカいから苦手なんだよな……。


「あー、その、鏑木」

「あん!? んだよ白井」

「あの三輪トラックはなんなんだ……? もしかしてこの世界って結構科学力があるのか……?」


 すると、ぷっ、と鏑木が噴き出した。


「っべぇーな、白井! そんなことも知らねえのかよ!」

「しょうがないだろ、今日まで迷宮の中にいたんだよ……」


 間違いなく俺が最強の世間知らずだぞ、やるかオラ。


「あ? あぁ、そうか、そりゃそうだわな。てか今日出てきたばっかりなのかよ! まあいいや、教えてやるよ!」


 ずい、と鏑木が身を乗り出す。それにしてもでかいな。こいつ身長何センチあるんだ。俺だって170は超えてるけど、俺より20センチはデカい。そのくせヒョロい感じでもなくてがっちりした体つきをしている。


「あの乗り物はな、3輪モトラドっていうんだよ。なんでも何代か前の勇者が作ったものらしい。やべえよな」


 そういうことか。確かに、勇者の中にそういう技術者が混じっていてもおかしくない。


「まあそいつが作ろうとしたのはバイクだったらしいんだが……エンジンを魔法で再現しようとしたら予想外にデカくなっちまって後輪が2つに増えたんだってよ」

「あー、だからバイクと車を合体させたみたいな見た目してんのか……」


 言われてみれば、モトラドってドイツ語でバイクという意味だ。たしか、ドイツの車会社のバイク部門もなんとかモトラッドって社名だったな。3輪モトラド。なるほど。


「てか、魔法ってことはこのエンジン、魔力で動いてるのか?」

「あぁ、そうだぜ。魔力を込めるとエンジンが動く。仕組みは知らねえけどな。その辺はバイクバカの立花の方が詳しいぜ」

「誰がバカだオラァ!」


 幌馬車の外で運転している立花が怒鳴る。聞こえてたのかよ。


「そう言う意味のバカじゃねえよ! アホ!」

「アァん!?」


 一触即発である。不良のガン飛ばし合い怖い。というか、運転しながら後ろを見るんじゃねえ。


「で、エンジンの仕組みだったか? お前、普通のエンジンの仕組みはわかんの?」


 と思ったら、さらっと話題を振られた。なんだ? 一触即発じゃなかったのか? 不良のノリっていまいち分からないな……。


 とりあえず話しやすくするためにおそるおそる3輪モトラドのほうに移動する。外気が直に当たって寒い。ニナと八雲は流れる景色を楽しそうに眺めているが、よく耐えられるな。


「ええと、実家ではメンテナンスしてたし分かるよ」

「え、お前メンテできんのかよ? じゃあ運転も出来んのか? 動かし方MTのバイクと一緒なんだけど……いや、でもお前大学でバイクなんて乗ってたか?」

「いや、実家の手伝いでカブに乗る機会があって……」


 なんだかんだで牧場は広かったので、高校生になってからは原付の免許をとって原付で移動していた。だから一応、基本的なメンテナンスぐらいは出来るし、興味があったからエンジンの仕組みなんかは調べてみたことがある。


「うわー、使えるな白井! やべえ、そこのでくのぼうより全然使えるわ! こいつらときたら運転しようともしねえから俺がずーっとこのクッソ寒い中運転してんだよ! いやー、たすかったたすかった」


 わはは、と心底愉快そうに笑う立花。なぜか俺が運転する話になっている……。


「いや、それより仕組みの話を……」

「あ? あー、そうだったな。といってもほとんど変わらねえよ。魔力を込めると火を噴く鉱石ってのがあってな、そいつを加工して爆発させてんだ。しかもこの鉱石、メチャクチャ長持ちする。一応交換期限はあるけど何年も使い続けられる代物だ。つーわけで、ガソリンなんて無くても魔力さえあれば動くってわけだ! エコだよな」

「それは凄いな……元の世界のハイブリッドなんて目じゃないじゃんか」

「まあ、でも問題もあってな。魔力を流し続けないといけないんで疲れんだよ、これがさ。俺の場合普通に数十キロも走ったら魔力がつきちまう。予備に魔力石は持ってるけど高いからあまり使いたくないしよ!」

「電気自動車みたいだな……」

「あぁ、それだわ。そんな感じ。参ったもんだよ。つーわけで、本当なら魔力が多い奴がパーティにいない限りは長旅なら馬車を使うのが普通だな」

「お前らの中にはいないのか?」

「斗真は戦術士、鏑木は盾使い、俺は忍者だぜ。魔法特化は誰もいねえ」


 忍者……?


 ちらっと立花を見る。鏑木とは反対にかなり小柄だ。忍者というか、あれだな。さっき温泉にいた猿を思い出した。


「……ええと、じゃあなんで馬車じゃなくてモトラドに乗ってんだ?」

「速いからだよ。最高速で100は出る。教会の奴らを振り切るんならこれが手っ取り早いんだ。馬だと荷車を引っ張ってたら速度出ねえだろ。世話するのも大変だし」

「そういうことか。てかこの荷台引っ張って100キロも出んのか、やべえな……」

「ヤベえよな。荷車無しならもっと出る。中には300出せるアホみたいな車種もあるみたいだぜ」

「一瞬で魔力切れそう」

「それな」


 他にも後輪がキャタピラになってる悪路走破用の奴とか、戦闘用の装甲つきモデルもあるらしい。凄いな3輪モトラド。


「じゃあ他にもなんかハイテクなものってあるのか? パソコンとか携帯電話とか」

「ないない。電気は流石に無いみたいだからその辺はまだ出来てねえんだろ」

「あくまで魔法で代用できるものってことか……」

「おう、白井。おしゃべり中悪いんだけどちょっと話聞かせろ」


 突然幌馬車からしかめっ面で峰村が出てきた。手には地図を持ったままだ。


「お前さっき、迷宮から今日出て来たって言ってたよな」

「あぁ、そうだけど……?」

「んじゃ、そこのガキンチョ2人は何なんだ」


 つい、と峰村はニナと八雲を指差した。


「見た感じ獣人と魔族って感じだけどよ……いくら魔族とはいえ迷宮の奥底に人がいるわけねえだろーよ」


 それは当然の疑問だ。

 そしてごもっとも、魔獣である。


 だが、それを明かして良いものだろうか。魔獣から人化するにはかなりの高ランクが必要になるとオデットから聞いたことがある。彼女たちは俺の能力のせいで即座に人化したわけだが、普通なら人化した魔獣は高ランクであるがために畏怖の対象になっていてもおかしくない。


 ここは、適当に誤摩化して……。


「ええと、それはだな……」

「私、獣人じゃないよ?」

「妾も魔族じゃないぞ?」

「おい」


 あっさりバラすんじゃねえよ。


「はあ?」

「あ、えーと、こいつらの冗談でな?」

「いや、待て……」


 案の定峰村は首を傾げていたが、すぐにその表情が青ざめた。

「白井……お前の適性って魔獣使いだったよな……まさか、人化魔獣か!?」

「そうだよ?」

「うむ」


 うっわ、と峰村は頭を抱え、3輪モトラドは突然急ブレーキをかけて止まった。


「魔獣ゥウー!? このガキンチョがぁ!?」

「人化してるってことはSランク以上じゃねえか! おいおいおいマジかよ!」

「とんでもねえもんを従えてんじゃねえよ白井……生きた心地がしねえよ……」

「いや、従えてるっていうか……違うんだ。あーもう、説明するしかねえか……俺のスキルでな、仲間の魔獣が低ランクでも人化するってのがあるらしいんだよ」

「なんだ、そのスキル」

「俺が聞きたいよ」

「じゃあ、こいつらはSランクとかそういうのじゃないってことか?」

「あぁ。ニナがD、八雲ちゃんはEだ」


 ほっ、と峰村は安心したようにため息をついた。


「迷宮の中で仲間にした魔獣ってことか……焦ったわ……にしても、本当に変なスキルだな」

「俺もそう思ってるよ。まあ、デメリットもあるんでなんともいえないんだけどさ」

「ふうん……しかし、見た目は完全に犬人と鬼族だな」

「そうなの? 私、狐なんだけど」

「狐人なんてのは聞いたことがないけどな」


 ニナが首を傾げながら自分の耳をピコピコと動かす。


「かわいいねえ」

「そうだねえ」

「ふふ……動物っていいよねえ」

「実家の犬に会いたい」

「どうしたのみんな!?」


 おっと、男4人で和んでしまった。


「やっぱ獣人とか魔族の見た目だと街には入れないのか?」

「正直キツい。獣人は奴隷もいるからいけなくもないが、魔族はアウトだ。つーか魔獣ってことは検閲がある街の鑑定もすり抜けられないだろ」

「それはステータス改ざんするから大丈夫だよ!」

「は?」

「ニナ、性質は変えられないんだっての……俺が残滓だから無理だ」

「あ、そっか」

「お前ら、何の話をしてるんだ? 改ざん?」

「お気になさらず」


 しばらく訝しげな顔をしていたが、まあいいか、と峰村は地図を広げた。


「まあ、検閲で鑑定が無い街は辺境にいくほど増えるから多分大丈夫だ。八雲だったか? そこの嬢ちゃんは角以外はあんまり目立った特徴はねえ……。帽子を被れば隠せるだろ。ちょうど良く使ってた奴があるからあとでやるよ。犬……じゃなくて狐のガキンチョは尻尾がデカいから隠しようがねえなあ。よく見たら尻尾も多いし、獣人が目立つ街だとまずいかもな」

「うーん。どうしたもんかな。次の行き先が決まらないってことか?」

「正直な。一応、この国にも獣人が生活できてる地域もあるんだ。そこなら周囲に埋もれるから多少はバレにくくなるだろうが……」


 少し驚いた。

 最初の印象から、この国は人間以外は全部敵認識だと思っていたのだが。


「州制だからな。ある程度地域によって差はあるんだよ。特に、へんぴな場所になるにつれて教会の影響も弱まって獣人迫害は弱くなってく。で、俺たちは教会の影響外に出るのを目的にしてるからな。俺たちもいずれはその州に向かいたかったんだが」


「だが」ということはなにか問題があるのだろうか。


「遠いんだよ。メチャクチャ遠い。正直、立花の魔力じゃ一日に100キロ移動できれば御の字だ。ここからだとその州まで20日は軽くかかる」

「ってことは、2000キロ……!?」

「そういうこった。補給のために最低2回は街に寄る必要がある……となると、な」


 ちらり、とニナの方を峰村は見た。


 うっ、とニナがたじろいで、シュン、と尻尾を丸めた。


「ごめんなさい……」

「あ、いや、ガキンチョが悪いわけじゃねえんだ。生まれは自分では変えられねえからな。悪いのはどっちかって言うと残滓だった白井だ」

「俺の残滓も生まれつきみたいなもんですけど!?」


 唐突に俺に矛先が向いた。いや、分かってるよ。正直俺が悪いよ。


「しかし、魔力不足か……」


 あれ?

 魔力と言うなら、適任がいるじゃないか。


「それって、運転する奴が補充し続けなきゃいけないのか?」

「いや、同乗者でも良い。魔力さえ供給できればな」

「だったら、ニナなら出来る」

「ふえ?」


 ふえ? じゃないよ。


「ニナのエーテル適性は1300ぐらいある。足りないか?」

「せんさんびゃくぅ!? 立花の5倍はあるぞ、オイ!」

「あ、そっか。私がこのくるま? に補給し続ければいいんだね?」

「妾もニナ嬢ほどではないが魔力は練られるぞ」


 はいはいはい、と元気に八雲が手を挙げる。


「それに、俺も魔力を練る特訓中だし、多分手伝えるはずだ」


 澱みの魔力だけど……まあ、多分平気だろ。


「それなら……いける! 7日もあればいけるはずだ。やべえな、おい! 流石に教会もそんな速度で移動するなんて予測してないはず……完全に裏をかける! お手柄だガキンチョたち!」

「え、えへへ」

「まあ妾だからな!」

「とにかく、それならいけそうか?」

「あぁ。聞いてたな? 立花」

「おう。白井も運転できんだろ? なら交代すればいけそうだぜ!」

「じゃあ早速向かうぞ! 目的地はフランク州……魔族戦争前線スレスレのガチの辺境だ、覚悟しろよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ