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その魔獣使い、人類の敵につき。  作者: 有澤准
第二章 魔族領編
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第六十一話 新スキル、解放

 ところで、である。


 覚えているだろうか。

 勇者佐倉と会話した際のことだ。

 

 佐倉は俺に、ご褒美と称して短刀のスキルを解放したと言っていた。わざわざ、剣術スキルはゴミじゃないとまで言って付与させたスキル。

 流石です佐倉様。一生ついていくぜ。


「というわけで、道中魔物が出たら試していいか?」

「……いいけど、離れてやってね?」

「うむ……」


 なんか警戒されている。なぜだ?


「前に突然スキル使って、私たちのこと巻き添えにしたの忘れたの?」

「あー」


 そういえば、砂漠の階層で紫電一閃が解放されていたのに気付いたとき、2人をひっつかんで思いっきり吹っ飛んだんだったな……随分前の事のように思えたが、実際はそれから3日も経ってなかったりする。


「ちょうど良く私も魔力あんまりなくて戦えないし……」


 ニナはかなり安心した顔をしている。そんなに嫌だったのか、アレ。


「じゃあ、八雲ちゃんサポート頼むわ」

「妾も嫌なんだが!?」


 全力で拒否されると傷つくわぁ。


「まあまあまあスキルを試すだけだから!」

「またろくでもないことになる予感しかしない……」


 がくっ、と八雲は肩を落とす。


 本当に、俺のことをなんだと思ってるんだ。


 ただ、流石にぶっつけ本番というのもなんなので、短刀のスキル欄を確認しておく。思えば鑑定レベルも上がっているし、何か情報が追加されているかもしれない。


『名称:狐式白刀

分類:刀

澱みを周囲、使用者から吸収し魔力に変換し、還元する。

魔力を込めることで起動。追加で魔力を込めることでスキル発動。


【壱ノ型:情緒纏綿】刀身に魔力を纏わせる。

【弐ノ型:紫電一閃】魔力を噴出させ高速で移動する。

【参ノ型:妨功害能】自分で考えてみよう!笑


[CALL]』


「ぶっとばすぞあの野郎!!!!!!」

「ぴゃっ!!?」

「ニナ嬢が2メートルぐらい飛び上がったぞ」

「ご、ごめん……ん?」


 なんだ、この隅っこに表示されてる[CALL]ってボタン。なぜかここだけ雰囲気が違うというか、文字の色まで違う。


 そのボタンに意識を集中させると、頭の中になぜか電話のコール音が鳴り響いた。


『もしもし、佐倉です。やあ! ようやく気付いたね! いつになったらかけてくるかと思』


 ぶちん! と鑑定を打ち切る。


 とんでもなくいらない機能をつけやがって!

 やっぱりゴミだ! あいつゴミだ! 流石とか言って損した!


 そこで、ニナがひょい、と短刀に手をかざした。鑑定したのだろう。


「スキルが増えたんだね! 中身は分からないけど……また、あの時みたいになっちゃうようなものだったら、いやだけど……」


 最後の方は消え入りそうな声になりながらニナは呟く。どうやら[CALL]には気がつかなかったようだ。


 彼女は、俺が発狂する事にかなり抵抗があるらしい。


 ……それもそうか。あの時だって目を覚ました後散々泣いていたし、絶対にこの狂化スキルは使うべきではないのだろう。


「むー。2人とも鑑定できて羨ましい。妾も鑑定スキル欲しい」


 八雲はちょっと拗ねながら手の中の石ころを転がしている。


 と、言われても鑑定スキルは村で鑑定石の粉末を飲んだから発生したのであって……。


 ……あれ?


 ふと、最初の召喚の時の鑑定士が持っていた杖を思い出す。

 アレの先端についてたのって蒼い鉱石だったよな。


 ちらり、と八雲の手の中の鉱石を見る。やっぱり蒼い。

 この石は、105階層で八雲ちゃんが見つけてきたものだ。


 ……もしも、である。


 村にあったあの鑑定石の粉末が、迷宮から掘り出されたものだったとしたら?


 ニナも気付いたらしい。俺に目配せして、八雲ちゃんに手を差し出す。


「八雲ちゃん、ちょっとその石、貸してくれない?」

「ん? いいが……返してくれよ、ちゃんと。落としたりするなよ」


 どんだけその石気に入ってんだよ。


 とにかく、八雲ちゃんから受け取った石を俺とニナで鑑定する。


『鑑定石

 鑑定スキル発動のための媒体』


 見事に鑑定石だった。なんの工夫もひねりも無く鑑定石だった。


 ふぅー、とニナは息をつき、おもむろに身体魔力強化を発動した。


「……八雲ちゃん。今から私、酷い事するね? でも八雲ちゃんのためだから」

「え、ニナ嬢? ちょ、ちょっと待って、ちょッ……!」

「えい」


 ニナが鑑定石を握りしめると、バギン、と石が粉砕された。


「ニナ嬢、よくもーッ!」


 がくり、と崩れ落ちる八雲。マジでどんだけ気に入ってたんだよ。というか、まだいっぱいあるしいいだろ。


「違うのだ! あの石が妾のお気に入りだったのだー!」

「八雲ちゃん、口開けて」


 ニナは石をさらにニギニギしながら粉々にしていく。身体強化のときの握力、凄いな……。ニナとは喧嘩しないようにしよう。死んじゃう。


「ふぇえ……」


 八雲は若干涙目になりながら大人しく口を開ける。お気に入りのものを粉砕されてなお、ニナを信じるその姿は健気だ。


「素直でよろしい」


 そんな八雲ちゃんの口にニナは容赦なく鑑定石の粉末をぶち込んだ。容赦なさすぎだろ。


「もぎゅ!?」

「はい、飲み込んで」

「もっ、むぅー!? むぐ! ごくん! な、何をするだァー!」


 慌てすぎて誤植みたいになってるぞ。


「いや、鑑定スキル欲しいんだろ? だから鑑定石の粉末を飲ませたんだよ」

「それならそうと先に説明しろ! 妾イジメかと思ったわ! あ、なんか頭痛い! めっちゃ痛いんですけど!?」

「5時間ぐらい痛むよ、それ。私に掴まってないと死ぬから」

「なんだそれー!?」


 ひしっ、と八雲はニナに抱きついた。幼女に中学生が抱きついているみたいでちょっとおもしろい。


「おもしろくない! おもしろくないからな!」


 ぎゃんぎゃんと文句を言う八雲だが、鑑定スキルが手に入るのだから納得して欲しい。


「とりあえず、これで八雲ちゃんは鑑定スキル獲得、と。一件落着」

「ん? 妾これだと戦えないんじゃないか?」

「……あっ」


 せめて今じゃなくて夜、寝る前にやればよかったと今更思った。


 だが、よく見たらニナがドヤ顔をしていた。

 まさかこいつ、俺のスキル実験に八雲を付き合わせないために……!? 恐ろしい子……!


**


 ある日、森の中、熊さんに出会った。


 というわけで、森の中を進んでいたら魔獣に出くわした。そんな童謡みたいなほんわか雰囲気ではない。


「グルルル……!」


 見た目は普通に熊。大きさも普通に熊。だが、その毛皮の色は緑色だ。さらに至る所の毛皮が甲殻のようになっている。


「ユキト、気をつけてね」

「あぁ」


 ニナと八雲は後方で待機。一応ドラゴンの卵は預けてある。たいした事じゃ割れないらしいが、やはり卵を抱えて戦うのは抵抗があるからだ。


 睨み合いを続けつつ鑑定する。


『種族:『フォレストシェルベアー:C』

名前:なし

性質:異端の獣

適性:なし 

階層:「魔獣領域Lv57」「神聖領域Lv1」

ステータス

基本体力:320

基本耐性:450

エーテル適性:20

エーテル耐性:220

神聖領域干渉限界:0/5

スキル

なし

固有スキル

開示不可』


 Cランク。ニナ以上という事だ。

 ステータスも俺より大幅に高い。レベルは圧倒的に上だし当然か。


 ……いや?


「バオオオオ!!」


 しびれを切らしたのかシェルベアーが飛びかかってくる。


 さらっと避ける。たいした動きじゃない。


 むしろ、このステータスだと一番始めに村で戦った魔物の方が強いじゃないか。


 そもそも、ネルに比べたらなんてことはない――。


「共鳴!」

『警告:神聖領域干渉限界:10120/999999』


 一回共鳴を使うだけでステータスは目の前のシェルベアーを遥かに超えた。

 大きく振るわれた爪を刀で受ける。そのまま勢いで指ごと爪を切り飛ばされたシェルベアーは明らかに戸惑いの表情を見せた。俺みたいな非力そうな人間に軽々受け止められ、あまつさえ手傷を負わせられた事が不可解なのだろう。


 これだけの力量差なら新しいスキルを試すのには好都合。短刀に魔力を込めてスキル名を叫ぶ。


「参ノ型、妨功害能!」


 これで、とどめだ。

 刀を持っていない方の手に疼くような感覚が生じて、慌ててシェルベアーに向かって突き出す。その瞬間に手のひらから野球ボール大の澱みの塊が出現した。


 ……投げろってことか? OK!

 どうやら遠隔攻撃に違いないぜ!


「いくぜぇ! ふんっ!」


 思い切りぶん投げると音もなく一気に澱みボールは飛んでいき、ちょっと狙いは外したもののシェルベアーの肩に直撃した。


「やったぜ!」


 はっはっは、クマくんなどひとたまりも……。


「バオ?」


 全然元気だった。傷一つなかった。

 澱みボールは当たってすぐにあっけなく霧散して、なんなら衝撃もなさそうだった。


「「えぇ……」」


 どうみてもノーダメージだ。後ろの2人もげんなりしている。なんならクマくんも戸惑ってる。


 え、なに?

 なんなの、これ?


 え、なに? 騙されたのか、これ?


 何も起きないと判断したのか、熊が飛びかかってくる。


「あー、もう! 情緒纏綿!」


 短刀に澱みを纏わせて太刀程度の長さまで伸ばし、飛びかかってくる熊の懐に潜り込むようにして薙ぐ。


「えっ!?」


 意外と毛皮が分厚い!?

 俺が振るった刀は熊の毛皮の表面を浅く切るに留まった。

 しかし、多少は気になったらしい熊が怒号を上げる。

 だが、咆哮の隙を許さず思い切りその口に太刀をねじ込む。そして、そのまま超圧縮された澱みの刀身を解放した。


「ボァ」


 変な声を上げて熊の口から澱みがボン! と噴き出し、熊は崩れ落ちた。

 もう動く事は無いだろう。


「え? なに……? なんなの、これ? 何このスキル?」

「で、でもCランクの魔獣、一人で倒せたのは凄いと思うよ?」

「主殿、ドンマイ」


 2人の慰めの声が今は辛い。


 結局、何回か地面やら木やらにぶつけて試してみたものの、一切ダメージがないことが分かった。何にぶつけても情けなく霧散してしまう。

 まあ、せいぜい目くらましに……つかえる、かも?


 というわけで、暫定ゴミスキルが一個増えた。

 チクショウ、佐倉。絶対に許さないからな。


スキルの名称と事象を少し変更しました。

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