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その魔獣使い、人類の敵につき。  作者: 有澤准
第一章 迷宮編
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第五十五話 試練を乗り越えた先にあるもの

 意識が覚醒する。


 いや、その言い方はおかしいか。そもそもずっと俺の脳はフル回転し続けていたのだから。

 むしろ、身体が覚醒したと言うべきだろう。


 つまり、ニナの記憶をクリアした。真実を見つけ出す事に成功した。


「っくぅ……」


 ゆっくりと身体を起こし伸びをする。相変わらず眩しい部屋だ。目が眩んで開けられない。


 ニナも無事に戻ってきているだろう。

 そう思って、ニナが八雲に膝枕されているであろう場所を、眩しさに慣れてきた瞼をこじ開けて見てみると……。


「えっ……」


 なんか、12歳ぐらいの知らない少女がいた。


 いたというか、ニナの代わりに八雲に膝枕されていた。


 思考が停止してしまう。

 ニナ、どこいった?


「いや、主殿。これニナ嬢」


 膝枕している八雲がすやすやと眠っている彼女の頬をつつきながら言う。


「……んぅ……?」


 それでどうやら彼女も覚醒したらしく、目を擦りながら起き上がる。


 しばらく辺りを見回して、八雲と俺の顔を交互に見てから、自分の身体を見下ろした。


「……なんで2人とも、私の事見て……なにこれー!?」


**


 どうやらニナは眠っている間に進化したらしい。


 そういえば、トラウマが原因で進化できなくなっているとか前に話していたような気がする。今回の件でトラウマが解消され、進化に至ったという事なのだろう。


「いや、しかしなぁ」


 このタイミングはどうなんだろう。


 普通戻って来れた事を喜び合って、感動の涙を流し合う場面だと思う。唐突すぎてちょっとついていけない。


「わああ、凄いよ、ユキト! 八雲ちゃん! 私進化したよ!」


 まあ、本人が喜んでいるからいいか……。


 ニナは立ち上がってくるくる回りながら自分の姿を確かめている。


 起きている姿を見るとそこまで以前と変化は無い。普通に成長したという感じだ。

 だが、もともと整った顔をしていることもあって結構大人びて見える。少なくとも幼女から少女に進化した感じ。


 尻尾は4本に増えていて、ついでに髪の毛が結構伸びている。ショートボブだったのに肩にかかるぐらいまでになった。


「ユキト、ユキト! 私もう子供じゃないよ!」

「いや、それはない」

「それはないな、ニナ嬢」

「えっ」


 ぶっちゃけまだ八雲よりは年下に見える。ロリといえばまだロリ。


 ショックを受けた表情でよろめいて膝をつくニナ。そこまでか?


「悲しい……やっと子供扱いされなくなると思ったのに……」

「あー、悪かったよ……ほら、こっちこい、ニナ」

「やだ! 子供扱いしないでよ!」


 といいつつ、ジリジリこっちに寄って来ている。どうやら身体は欲求に抗えないらしい。素直な奴だ。


 まあ、しょうがないのでこっちからニナのそばに寄ってやる。


「?」


 そして、わしゃわしゃとニナの頭を撫でる。


「……よく頑張ったな、ニナ」


 ニナは一瞬きょとん、とした表情をして、えへ、と満面の笑みを浮かべた。


「うん! ……ありがと、ユキト、八雲ちゃん」


 八雲もふっ、と頬を緩ませて、ニナの頭を撫でた。


「うむ。おめでとう、ニナ嬢」

「えへへ……あれ? 結局まだ私が最年少扱いされてる……?」


 ニナが首を傾げているが、大丈夫だ。ドラゴンの卵があるから最年少じゃないぞ!


**


 俺たちは次に進む前に一度105階層に戻ってきていた。


 ボロボロの廃墟が立ち並ぶそこには、もう生命の気配はない。ただ朽ちる事のない龍の躯だけが転がっている。


 きょろきょろと見回しながらニナは瓦礫の中を動き回っている。俺もガラクタをひっくり返しながらあるものを探していた。


 ニナの両親の遺品である。


 俺とニナは記憶の中で彼らの姿を見ている。なので、彼らが身につけていたものは覚えている。145年も前の物があるかは分からないが、全くないわけでもないだろう。


 ちなみに、八雲は八雲でいろいろ探索しているが、彼女はニナの両親の姿を見ていないので意味は無かったりする。何か面白い物が無いか探しているだけだろう。


「むう……またこの石か……」


 ちなみに、彼女はさっきから大量の蒼い石を発見してはポケットに押し込んでいる。なんかあの石、この階層じゃない場所で見た覚えがある気がするが……なんだっただろう?


「あっ!」


 ニナが瓦礫の中で声をあげた。

 何か見つけたのだろう。俺と八雲はニナの元に向かう。


「見つけたか?」

「うん……」


 瓦礫の奥深く、地下室のような空間にそれはあった。


 地面に突き刺さったニコルの剣と、それに引っ掛けられたディオナの外套。


 それは、まるで墓だった。

 かなり新しく作られたようで、剣は錆びてはいるものの埃は被っていない。


「……ネルか」

「だね……」


 この超難易度の階層でこんなものを作れるのはネルしかいない。


 おそらく、俺たちを追い越して先にこの階層に入ったとき作ったのだろう。


 もしかすると、彼女が龍種を皆殺しにしたのは、暇つぶしでも、俺たちのためでもなく、敵討ちだったのかもしれない、とふと思った。


 ニナが墓の前でしゃがんで、何かに気付いたように地面を眺めている。


「『待たせたね』って地面に掘ってある」

「……そっか」

「私ね、お墓参りってしたことないんだ。どうすればいいの?」

「あー……といっても、俺は異世界人だしな……八雲ちゃーん、お願いします」


 やれやれ、と八雲が肩をすくめる。


「最近妾の事を辞書かなにかかと勘違いしてないか? ……まあ、スティルゼ教だと死者を悼んだりする事は無いな。死者はみんなスティルゼ神の元に行くらしい。だから神に感謝を捧げるとかなんとか」


 妾はスティルゼ教徒どころか魔獣だからよくわからん、と八雲。


 となると、キリスト教とあまり変わらないな。

 だが……。


「ニナの両親はスティルゼ教徒だったのか?」

「ううん、うちの村はスティルゼ神への信仰はなかったよ。オデッ……おばあちゃんは、神様なんていないってよく言ってたなあ」

「じゃあ、スティルゼ神に祈ってもしょうがないな。主殿のところではどうだったのだ?」

「俺のところ? 俺のところは……まあ、手をあわせて死んだ人の冥福を祈るとか、そんな感じだよ」


 正直宗教には詳しくない。若い日本人だとそんなもんだろう。


 だが、ニナと八雲ちゃんはそれで納得したらしく手をあわせて目を瞑った。俺も同じようにして彼らの冥福を祈る。


「……」


 彼らの働きは、必ずしも無駄ではなかったと思っている。


 確かに、直接的には何も得られなかったのだろうけど、残されたニナやネルにこうして目には見えないものを遺していったのだから。


 しばらくして、俺たちはそこを立ち去った。

 墓の前に刻まれた文字は、ほんの五文字だけ増えた。


**


 場所は106階層。

 俺たちの前にはぽっかり空いた部屋の出口と、その先に繋がっている白い階段がみえている。


「よし……話によれば、ここを抜ければ外……のはず!」

「そうだね!」

「うむ!」


 準備は大丈夫か、と互いに目配せし合い、その階段に踏み込む。


 階段はなぜか上りじゃない。下っていた。外に出るのなら上に出ると思うのだが。


 すぐに階段は終わり、広い空間に出た。


 丸いホールのような奇妙な空間。出口はどこにも無く、中央に何かが鎮座している。


「なんだ、ここ……」

「う……」


 ニナと八雲が顔をしかめて、居心地悪そうに身じろぎする。


「どうした?」

「なんか……ここ、やだ……もやもやする」

「妾でも感じるぐらい、澱みが濃いぞ、この場所……! どこかから澱みが絶えず吹き出ている!」


 そして、八雲はニナを抱き寄せて俺に押し付けた。すぐに自分も俺に抱きつく。


「むぎゅ!」

「なんだよ?」

「変な意味は無い! 主殿に出来るだけ近づいていないと妾達も残滓化するレベルでヤバい、ということだ」


 そういえば、残滓は澱みの大量噴出に晒される事で発症するのだったか。

 であれば、澱みを吸収し続けている俺に張り付いていれば安全という事だ。


「……106階層で最後だって話だったが……」


 ホールの壁を鑑定してみるが、鑑定スキルは何も情報を寄越さなかった。


「となると、調べてみるべきは……」

「あの中央の何か、だろうな。澱みの噴出源もアレだろう」


 正直、澱みが大量噴出している物体に近づきたくはないのだが。デメリットは特に俺にはないがイメージ的に……。


 だが、その他には特に何も無いようだ。しょうがないので三人で固まって近づいていく。


 近づくにつれ、確かになんとなく気配のようなものを感じた。これが澱みのオーラなのだろうか? よく分からない。


「これッ……」


 ニナがその物体にある程度まで近づいたところで声をあげた。八雲も物体を首を傾げながら見ている。


「……あ」


 俺もようやく気付いた。


「死体……?」


 それは、何かに祈るように手を組んで跪いている男だった。


 その姿は自然だった。

 今にも動き出しそうなぐらい肌は綺麗で、どこも風化していない。


 なら、なぜ死体だと思ったのか。


 単純な事で、彼の胴体には大きな穴が空いていたのだ。ぽっかりと空いた穴の内側には、青白く光る魔方陣のような物がびっしりと張り巡らされていた。


「なんだ……これ……?」


 疑問が口をついた瞬間、魔方陣が一気に増幅した。男の死体を一気に覆い尽くし、そのままホール全体まで広がって巨大な魔方陣を構築する。


 そして、俺の身体まで覆い尽くす。


「ユキトッ!」

「主殿!」


 そのまま、俺の意識は途絶えた。


おまけのニナ進化後ステータス


『種族:魔獣『白狐(人化):E→白気狐(人化):D』

名前:ニナ・オデット・ルナーリア

性質:異端の民

適性:魔術師 

階層:「魔獣領域Lv52」「神聖領域Lv1」「???領域Lv1」

ステータス

基本体力:278→378

基本耐性:220→320

エーテル適性:890→1390

エーテル耐性:730→930

神聖領域干渉限界:0/17800→0/47800

技能

「念話Lv7」「叡智への強制干渉Lv3」「身体魔法強化Lv4→5」「魔法適性Lv3→4」

「魔力感知Lv3→4」「気配感知Lv3→4」「聖魔法適性Lv2→3」「炎魔法適性Lv2→3」「猛毒耐性Lv10」「布生成Lv4」

特殊技能

「癒しの毛」「共鳴呼応」』


久しぶりのニナのステータス表記。なんだかんだでレベルは104階層から一つも上がってなかったりします。誰も倒せてないからね!



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