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その魔獣使い、人類の敵につき。  作者: 有澤准
第一章 迷宮編
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第四十三話 ドラゴンの卵

 目が覚めた。瓦礫の隙間から偽物の日の光が差し込んでいる。

 硬い石の床の感触。思えば、ベッドじゃないところで寝るのもすっかり慣れてしまった。案外3週間も野宿していれば慣れるものである。


「すう……」


 毛布をめくるとニナと八雲が俺にくっついて爆睡していた。


 なんだ、この状況。


 完全に幼女のニナはともかく、少なく見積もっても13歳ぐらいには見える八雲にくっつかれると落ち着かな……。


「……いや」


 なんだろう。

 落ち着く……。


「うーん?」


 俺は寝っ転がったまま首を傾げた。


 異性と寝ていれば多少ドキドキするものだと思うのだが、全くしない。

 むしろ昔、夜泣きする妹に添い寝していた頃のような……。


「あ、そうか」


 俺は彼女たちを妹とか、娘のようなものだと思っているのだ。


「ふーむ」


 なるほど。そういうことなら納得である。

 とりあえず俺は彼女たちを起こさないようにそっと毛布から出ようとした。


「ん……」


 が、そこで何かに引っ張られた。

 視点をおろすと、そこには俺の裾を掴むニナの姿があった。


「ゆきと……むにゃ……」

「……」


 その手を、そっと外す。

 そして、今度こそ布団から出ようとして……。


「はっは〜ん?」


 いつの間にか起きていた八雲が、ものすごく意地の悪そうな目で俺を見ていた。


**


「ほんと、いつの間にあんなに懐いたんだかなあ」


 朝でもこの地下深くの迷宮では清廉な空気だったりはしない。だから気分的には爽快さなどはないのだが、俺は八雲と散歩していた。


「いやあ、妾が出会ってからずっとあんな感じだがな。ぞっこんだ」

「ぞっこん? 兄貴みたいに思われてるだけだろ」


 ニナは起きる気配がなかったのでそのまま寝かせてある。起きれば気配感知で俺たちが外に出ている事に気付くだろう。


「んー……まあ、そういうことにしておくか。少なくとも妾は主殿のこと、好きだぞ?」

「仲間として?」

「いいや、家族として」


 少し驚いて俺は八雲の方を振り向いた。


「どうした、主殿」

「家族……なのか」

「ん? まあ、ニナ嬢もそう思っていると思うぞ?」


 あっけらかんと笑って、八雲はしゃがみ、その辺の瓦礫をひっくり返しはじめた。


「家族……か」


 そういえば、昨日家族の話をした。

 ニナとはもう三ヶ月一緒に暮らしている。言われてみれば、家族みたいなものかもしれなかった。


「いや、八雲ちゃん。お前はまだ俺と会ってからそんなに経ってないだろ。いくらなんでも懐き過ぎだよ」

「そんなことはない」


 八雲はごろごろと瓦礫をひっくり返し、出て来たガラクタを検分しながら言った。折れた杖のようなものの先についていた蒼い鉱石をしげしげと眺めて、彼女は懐にしまう。


「む、なんだか綺麗だな……まあ、妾、まだ生後3週間も経ってない赤ちゃんだからな! 人生のほとんどは主殿たちと一緒なのだ! 家族といって差し支えない!」

「……そういえばそうだった」


 あまりに彼女が大人びているので忘れていた。


「あー、なんつーか……まあ……そうなると、ニナに取っては俺が兄貴で、八雲ちゃんにとっては俺が親父ってことになるのかな?」


 ちょっとそう考えるとこそばゆいものがある。悪くない、と思う。


「いや、弟」

「なんでだよ!」


 そう大声で突っ込みをいれたところで、遠くから誰かが走ってくる足音がした。


「もー! 2人で散歩ずるい!」


 ニナは全力で走って来たらしく、息を整えながら文句を言う。


「あ、おはようニナ」

「おはようニナ嬢」

「え、あ、おはよう! ……んん?」


 挨拶をすると笑顔で返して来たものの、はて、と彼女は首を傾げた。


「やっぱ俺、こいつがお姉ちゃんなの納得いかない」

「妾も」

「何で顔合わせて早々罵倒されてるの私! お姉ちゃんだよ!」


 まあ、年齢的にはそうなのだろうが。


**


 とりあえず朝飯をさっさと済ませ、ドラゴンの素材調達に取りかかる事にする。


「とはいっても」

「とはいってもなあ」

「とはいってもだね、これは」


 あまりにもドラゴンの量が多い。数十匹……で済んでいるのか? 軽く100を越えているような気がする。


「ニナ、魔袋の容量はどうなんだ?」

「これ全部は無理! というか、普通に一体分も入るか怪しいよ……前も素材取ったし……」


 となると、素材は厳選しなくてはいけないだろう。

 であれば一番いいドラゴンの素材を取るべきだろう。


「よし!」


 俺はとりあえず一番デカいドラゴンの死体のもとに向かう。多分こいつが一番いいはずだ!


「主殿、それはA級の鈍重龍だ。こっちの小さいS級の方がいい」

「ずこー」


 盛大にずっこけつつ、俺はすごすごと八雲ちゃんの元に戻り、彼女の目の前にある死体を鑑定した。


『蒼龍の死体

情報開示不可』


『技能:鑑定:Lv3に上昇』


「あ、鑑定レベル上がった……」


 色んなものを鑑定していけばレベルは上がるのだろうか。とりあえず、レベルが上がった効果を確かめるためにもう一度鑑定する。


『蒼龍の死体

蒼龍の死体。死んでいる』


「ふざけんな!」

「どうしたのユキト!?」


 んなもん分かってるわ! 書かれなくても分かるわ!

 しょうがないので「蒼龍」という部分に意識を合わせもう一度鑑定する。


『蒼龍

 S級魔獣。龍種の一種。変質した鱗が冷気を帯び蒼く輝くことから、蒼龍の名を持つ。高い身体能力に加え冷気を操る能力を持ち、並大抵では敵わない力を持つ』


 こんな奴と戦わなくてよかった。

 なんというか、ネルに感謝である。


「あー、じゃあ素材剥ぎ取りはこいつでいいのだな? 主殿。見た目もいいしな」

「おう、そうしよう。これってどこかで売れるのかなあ」

「売れるんじゃないか? クモデータベースによるとかなり高値で取引されているようだぞ……そもそも龍の素材というものは高いのだがな」

「そうなの? 八雲ちゃん」


 ニナが魔袋からナイフを取り出し、俺たちに渡した。


「うむ。龍の素材というのはとても朽ちにくくてな。なにせ100年前の死体が一切腐っていなかったなんていう話もある。そういったことから武具の素材としても需要が高いのだ。生物の王などと呼ばれることもあるから、箔が付くといって金持ちに人気な素材だったりするぞ」


 そこまで腐らないとは、防腐剤でも使っているのだろうか……なんていうのは冗談として、ドラゴンという生き物は微生物や菌すら寄せ付けないのだろう。


「ほんと、戦いたくない相手だな……」

「ほんとだね」


 とりあえず、ナイフ自体は通るようなので重要そうな部分から剥いでいく。牙や爪、鱗……ある程度剥いだところで俺たちは不思議なものを見つけた。


「なんだ、これ」


 楕円形の物体が肉塊の中から出てくる。


「あれか、龍玉って奴か!」


 ドラゴンが身体に秘めている宝玉。某狩りゲーだと激レア!

 一人で目を輝かせていると、2人に冷めた目で見られていた。


「なにそれ」

「これは普通に卵だろう」

「なんだ卵か……卵ォ!?」


 ほい、とニナが渡して来た卵は野球ボールほどの大きさがあった。ずっしりと重く、それでいて少し温かい。


「え、これ、生まれるの。とっくに腐ってるんじゃ」

「ドラゴンの卵は腐らないよ。温めれば生まれるんじゃない? ……ユキト、何してるの」


 俺はいそいそとニナの尻尾の中に卵を埋めようとしたのだが、ニナは俺から守るように自分の尻尾を抱え込んでしまった。


「え、あっためようと思って」

「思って、じゃないよ! いろいろ言いたい事はあるけどなんで私の尻尾なの!」

「あったかそうだから。駄目か?」

「駄目だよ!」


 うーむ。困った。


「というか、孵化させるつもりなのか? 主殿」

「だってドラゴン生まれるんだろ? ロマンじゃん」


 そう言うと2人は腕を組んで唸りはじめた。


「うーん……孵化自体は可能……だと思うけど……」

「ドラゴン……ドラゴンって懐くのか、そもそも」

「だ、だよねえ……あ、でもユキトの魔獣敵対無効なら……」

「確かにドラゴンは生まれつき知性がある……大丈夫、なのか?」


 2人は目を合わせてから、俺の方に向き直った。


「ユキト! ちゃんとお世話できる?」

「主殿、ドラゴンが大きくなって可愛くなくなったからって捨てたりしたら駄目だぞ!」

「お前らは俺のおかんか」


 というわけで、ドラゴンの卵を俺は手に入れた。


 ちなみに、ドラゴンの卵は温める必要はなく、近くにいる保護者の魔力を吸って自然発熱するらしい。便利なものである。


 しかし、俺の場合澱みから出来た魔力なのだが大丈夫なのだろうか……。

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