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『この作品に、タイトルは付けられなかった。』  作者: qp46


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13/19

13話『送信』

インターホンが鳴る


反射的に顔を上げた


数秒止まる


また鳴った


部屋は静かだった


コーヒーメーカー


適当に置かれたマグカップ


クッション


視界に入る度、昨日の言葉が頭の奥で蘇る


『あなたがいると、あの人は凡人になってしまう』


唇を噛む


スマホが震えた


『開けろ』


湊先生だった


画面を見つめる


返せない


数秒後、

また通知が来る


『寝てる?』


小さく息を吐いた


スマホを伏せる


しばらくして、

外が静かになった


帰ったんだろうか


分からない


でも確認する気にはなれなかった


ノートパソコンを開く


白い画面


カーソルだけが点滅している


書かなきゃいけない


なのに頭の中へ浮かぶのは、湊先生の言葉ばかりだった


『お前がいた気するわ』


『怒鳴った方がお前っぽい』


『やっと書き始めた感じする』


強く目を閉じる


駄目だ


これ以上一緒にいたら、本当に壊してしまうかもしれない


湊先生を


スマホを手に取る


メッセージ画面を開く


何度も打って、

消して、

また打つ


『一度執筆に集中したいので、しばらく距離を置かせてもらえませんか』


送信


数秒


すぐ既読がつく


喉が小さく鳴った


返事はすぐだった


『そうか』


それだけだった


静かにスマホを閉じる


部屋は静かだった


なのに前より、

ずっと落ち着かなかった

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