第97話:エルフの驚き
◆ 街の案内
翌日――
おっさんは、アルヴィンとエリスを街に案内していた。
グリーンヘイブンを、見て回る。
アルヴィンが、言った。
「人間の街は、初めてだ」
「どんなところか、見てみたかった」
エリスも、興味津々。
「私も、です」
「エルフの国とは、違うでしょうか?」
おっさんは、微笑んだ。
「……見てくれ……」
◆ 魔道具工房
最初に――
ゴードンの工房へ。
中に入ると――
魔道具が、たくさん並んでいる。
光の魔石を使ったもの。
治療用、浄化用、様々な種類。
ゴードンが、迎えた。
「ようこそ」
「エルフの方々」
アルヴィンは、魔道具を見回した。
「……これは……」
「……全て、魔道具か……?」
ゴードンは、頷いた。
「ああ」
「この街では、魔道具が普及している」
「生活を、便利にするために」
エリスが、治療用魔道具を手に取った。
「これは、何ですか?」
ゴードンが、説明した。
「治療用の魔道具だ」
「病気を、治す」
「疫病の時に、多くの人を救った」
エリスは、驚いた。
「素晴らしい……」
「こんなもの、見たことがありません」
アルヴィンも、感心している。
「エルフにも、魔法はある」
「でも、道具にするという発想はなかった」
「人間の知恵か……」
おっさんは、首を振った。
「……ゴードンの知恵だ……」
「……俺じゃない……」
ゴードンは、照れくさそうに笑った。
◆ 農地
次に――
農地へ。
広大な農地。
野菜、麦、果物。
たくさん育っている。
アルヴィンが、土を手に取った。
「……良い土だ……」
「……豊かだ……」
おっさんが、説明した。
「……循環型農業だ……」
「……肥料を使って、土を豊かにする……」
「……収穫したら、また土に還す……」
エリスが、聞いた。
「循環型……?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……全てが、循環している……」
「……無駄がない……」
アルヴィンは、感心した。
「なるほど……」
「自然の摂理に、従っているのか」
「エルフも、そうだ」
「だが、ここまで体系化されていない」
◆ 市場
次に――
市場へ。
賑わっている。
商人たちが、品物を売っている。
野菜、肉、魚、布、道具。
様々なもの。
人々が、行き交う。
笑顔で、話している。
エリスが、その様子を見た。
「……活気がありますね……」
「……みんな、楽しそうです……」
おっさんは、頷いた。
「……この街は、身分差別がない……」
「……貴族も、平民も、平等だ……」
「……だから、みんな笑っている……」
アルヴィンは、驚いた。
「身分差別が、ない……?」
「本当か?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……人は、身分じゃない……」
「……心だ……」
アルヴィンは、しばらく黙っていた。
そして――
笑った。
「……お前は、本当に変わっているな……」
「……でも、だから素晴らしい……」
◆ 下水道へ
おっさんは、アルヴィンとエリスに言った。
「……次に、見せたい場所がある……」
「……この街の始まりだ……」
アルヴィンが、聞いた。
「始まり?」
おっさんは、頷いた。
「……ついて来てくれ……」
おっさんは、二人を下水道へ案内した。
地下へ。
階段を降りる。
暗い。
でも――
魔道具の光で、照らされている。
下水道。
広い空間。
でも――
綺麗だ。
悪臭がしない。
水が、流れている。
透明な水。
エリスが、驚いた。
「……下水道……?」
「……でも、綺麗です……」
おっさんが、説明した。
「……最初は、汚物まみれだった……」
「……俺は、ここに捨てられた……」
アルヴィンとエリスは、驚愕した。
「捨てられた!?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……異世界召喚されて、即座に下水道に捨てられた……」
「……汚物まみれの中、セシリアと出会った……」
「……そして、ここを浄化した……」
おっさんは、壁を指さした。
そこには――
魔石が、埋まっている。
たくさんの魔石。
採掘した跡。
「……ここで、魔石を発見した……」
「……この魔石が、全ての始まりだ……」
◆ 排泄物から魔力
アルヴィンが、聞いた。
「魔石が、下水道に……?」
「なぜだ?」
おっさんは、説明し始めた。
「……排泄物には、魔力が残っている……」
「……人が食べたものの、魔力が……」
「……それが、長い時間をかけて魔石になる……」
エリスは、目を丸くした。
「……排泄物から……?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……最初は、俺も驚いた……」
「……でも、自然の循環だ……」
「……食べて、排泄して、魔力が魔石になる……」
「……その魔石を使って、魔道具を作る……」
「……魔道具で、人を助ける……」
「……全てが、繋がっている……」
アルヴィンは、しばらく黙っていた。
考えている。
そして――
驚愕の表情になった。
「……なんということだ……」
「……排泄物から、魔力を……」
エリスも、困惑している。
「……え……」
「……それは……」
でも――
アルヴィンの表情が、変わった。
驚愕から、理解へ。
そして――
感動へ。
「……待て……」
「……これは、真の循環だ……」
エリスが、聞いた。
「アルヴィン様……?」
アルヴィンは、おっさんを見た。
「康太郎」
「お前は、すごいことをしている」
「我々エルフは、自然を大切にすると誇っていた」
「排泄物は、土に還す」
「それで、自然の循環だと思っていた」
「でも……」
アルヴィンは、魔石を見た。
「お前たちは、そこから新しい価値を生み出した」
「排泄物から魔力を取り出し」
「魔石にして」
「魔道具を作って」
「人を助けている」
「これこそ、真の循環だ」
「無駄がない」
「全てが、活かされている」
エリスも、理解し始めた。
「……そうですね……」
「……素晴らしい……」
「……全てが繋がっている……」
「……循環している……」
おっさんは、照れくさそうに笑った。
「……大げさだ……」
「……ただ、必要だったからやっただけだ……」
アルヴィンは、おっさんの肩を叩いた。
「いや、すごいことだ」
「エルフは、長く生きている」
「自然を知っていると、誇っている」
「でも、お前から学ぶことがある」
「本当の循環を」
おっさんは、微笑んだ。
「……ありがとう……」
◆ 二日酔いの朝
翌朝――
アルヴィンは、頭を抱えていた。
宿舎の部屋で。
「……頭が、痛い……」
昨夜、おっさんと飲みすぎた。
良い酒だった。
でも――
飲みすぎた。
エリスが、心配そうに見ている。
「アルヴィン様、大丈夫ですか?」
アルヴィンは、苦笑した。
「ああ、大丈夫だ」
「ただの二日酔いだ」
その時――
ノックの音。
おっさんが、入ってきた。
「……大丈夫か?……」
アルヴィンは、笑った。
「ああ、すまない」
「良い酒だったが、飲みすぎた」
おっさんは、水を渡した。
「……これを、飲め……」
「……楽になる……」
アルヴィンは、水を飲んだ。
「ありがとう」
しばらく、黙っていた。
そして――
ふと、思い出したように言った。
「そういえば……」
「酒といえば……」
おっさんが、聞いた。
「……ん?……」
アルヴィンは、真剣な顔になった。
「ドワーフだ」
おっさんは、驚いた。
「……ドワーフ……?……」
◆ ドワーフのこと
アルヴィンが、説明した。
「ドワーフは、酒好きで有名だ」
「彼らの作る酒は、最高だ」
「でも……」
アルヴィンの表情が、曇った。
「ドワーフは、険しい山に住んでいる」
「エルフの国と、魔王の国の間に」
「我々エルフも、魔物に襲われた」
「ドワーフも、同じはずだ」
おっさんは、頷いた。
「……そうか……」
アルヴィンは、続けた。
「エルフとドワーフは、仲が良くない」
「昔から、諍いがあった」
「でも……」
アルヴィンは、窓の外を見た。
「同じ亜人だ」
「魔物に襲われているなら……」
「心配だ」
エリスも、言った。
「ドワーフの方々も、助けるべきでは……?」
おっさんは、考えた。
「……ドワーフか……」
「……会ったことは、ない……」
「……でも、お前たちと同じように……」
「……魔物に襲われているなら……」
「……助けないといけない……」
アルヴィンは、おっさんを見た。
「本当に、助けるつもりか?」
「お前は、ドワーフを知らない」
「頑固で、人間を嫌っている」
「助けても、感謝されないかもしれない」
おっさんは、首を振った。
「……関係ない……」
「……困っている者を、助ける……」
「……それだけだ……」
アルヴィンは、涙を流した。
「……お前は、本当に……」
「……すごい人間だ……」
おっさんは、照れくさそうに笑った。
「……そんなことない……」
◆ 今後の方針
おっさんは、会議を開くことにした。
ゴードン、真理、ダリウス、オスカー。
そして、アルヴィンとエリス。
会議室に、集まった。
おっさんが、説明した。
「……ドワーフのことだ……」
「……彼らも、魔物に襲われている可能性がある……」
「……助けに行くべきか……」
ダリウスが、聞いた。
「ドワーフは、どこにいるんですか?」
アルヴィンが、地図を広げた。
「ここだ」
険しい山脈を指さす。
「この山の中に、ドワーフの国がある」
「地下都市だ」
「でも、正確な場所は分からない」
「ドワーフは、外部に場所を教えない」
ゴードンが、言った。
「行くのは、危険だな」
「山道も険しい」
「魔物もいる」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……でも、放っておけない……」
「……情報を集めよう……」
「……まず、ドワーフの国の場所を……」
オスカーが、言った。
「商人たちに、聞いてみます」
「ドワーフと取引している者もいるはずです」
リーナが、入ってきた。
「呼んだ?」
おっさんは、リーナに頼んだ。
「……リーナ……」
「……ドワーフのこと、知っているか?……」
リーナは、考えた。
「ドワーフね」
「取引したことは、ある」
「でも、国の場所までは……」
「調べてみるわ」
おっさんは、頷いた。
「……頼む……」
◆ アルヴィンの感謝
会議の後――
アルヴィンが、おっさんに言った。
「康太郎」
「ありがとう」
「ドワーフのために、動いてくれて」
おっさんは、首を振った。
「……当然のことだ……」
アルヴィンは、微笑んだ。
「いや、当然じゃない」
「普通の人間なら、やらない」
「でも、お前は違う」
「だから、信頼できる」
おっさんは、照れくさそうに笑った。
エリスも、言った。
「康太郎様は、優しいです」
「種族関係なく、助けてくれる」
「素晴らしいです」
おっさんは、二人を見た。
「……お前たちも、仲間だ……」
「……仲間のために、動くのは当然だ……」
アルヴィンは、おっさんの肩を叩いた。
「良い友達を持った」
グリーンヘイブン。
エルフたちが、街を知った。
魔道具、農業、市場。
そして――
下水道の秘密。
排泄物から魔石を得る。
真の循環。
エルフたちは、感動した。
そして――
新たな課題。
ドワーフのこと。
彼らも、魔物に襲われている可能性。
おっさんは、助けようとしている。
種族関係なく。
困っている者を、助ける。
それが、おっさんのやり方。
新しい冒険が、始まろうとしている。
(次回:第98話に続く)




