第91話:ノルディアからの招待
◆ 手紙の到着
疫病終息から、1ヶ月後――
グリーンヘイブン。
完全に平和が戻っていた。
ある日の午後。
おっさんは、館の執務室にいた。
書類を見ている。
その時――
セバスチャンが入ってきた。
「康太郎様」
「ノルディア王国から、手紙が届きました」
おっさんは、顔を上げた。
「……ノルディア?……」
「……留学生たちからか?……」
セバスチャンは、頷いた。
「はい」
「王国の公式な手紙のようです」
おっさんは、手紙を受け取った。
開封する。
読む。
そこには――
丁寧な文字で、書かれていた。
「グリーンヘイブン伯爵、康太郎殿」
「お久しぶりです。トーマスです」
「私たち留学生は、皆元気にしています」
「グリーンヘイブンで学んだことを、国で実践しています」
「おかげさまで、大きな成果が出ています」
「ぜひ、その成果を康太郎様に見ていただきたく」
「ノルディア王国へのご訪問を、お願いいたします」
「王様も、ぜひお会いしたいとおっしゃっています」
「お待ちしております」
おっさんは、微笑んだ。
「……成果か……」
「……どんなことを、やっているんだろうな……」
◆ 若者たちの訓練
その頃――
訓練場。
ダニエルとヴィクターが、剣の稽古をしていた。
二人とも、騎士見習い。
ダニエルは20歳。
ヴィクターは19歳。
二人とも、結婚して落ち着いた。
でも――
訓練は、欠かさない。
ダリウスが、指導している。
「もっと腰を落とせ!」
「剣先がぶれている!」
ダニエルが、剣を振る。
速い。
力強い。
ヴィクターが、受ける。
「うっ!」
でも、耐える。
反撃する。
二人の剣が、ぶつかり合う。
火花が、散る。
ダリウスは、腕を組んで見ている。
「……良くなったな……」
「……二人とも……」
「……半年前とは、別人だ……」
稽古が終わった。
二人とも、汗をかいている。
息を切らしている。
でも――
笑顔。
ダニエルが、言った。
「ヴィクター、強くなったな」
ヴィクターは、笑った。
「お前もな」
「でも、まだまだだ」
「もっと強くならないと」
ダニエルは、頷いた。
「ああ」
「この街を、守らないとな」
二人は、拳を合わせた。
◆ 領地経営の勉強
執務室の隣の部屋。
アレクサンダーとオスカーが、地図を広げていた。
アレクサンダーは18歳。
領地経営を、学んでいる。
オスカーが、指導している。
「この地域は、農業に向いている」
「土壌が良く、水も豊富だ」
「だから、麦を育てる」
アレクサンダーは、メモを取っている。
真剣な顔。
「はい」
「でも、灌漑が必要ですね」
オスカーは、頷いた。
「その通りだ」
「水路を、どう引くか」
「それが、重要だ」
アレクサンダーは、地図に線を描いた。
「こう引けば、効率的かと」
オスカーは、確認した。
「……なるほど……」
「……良い案だ……」
「……半年前は、こんなこと考えられなかったのに……」
「……成長したな……」
アレクサンダーは、照れくさそうに笑った。
「オスカー様のおかげです」
◆ 魔道具開発
ゴードンの工房。
ルーカスが、魔道具を作っていた。
17歳。
ゴードンの弟子。
真面目で、器用。
ゴードンが、そばで見守っている。
「魔石の加工は、丁寧に」
「急ぐな」
ルーカスは、頷いた。
「はい」
小さな魔石を、削っている。
慎重に。
少しずつ。
形が、整っていく。
ゴードンは、感心した。
「……良くなったな……」
「……最初は、よく割っていたのに……」
ルーカスは、笑った。
「はい、何個も割りました」
「でも、ゴードン様が根気よく教えてくれたので」
ゴードンは、ルーカスの肩を叩いた。
「お前が、頑張ったからだ」
その時――
真理が、工房に入ってきた。
蒼を抱いている。
「ゴードンさん、ルーカスさん」
「お茶、どうですか?」
ゴードンは、微笑んだ。
「ああ、ありがとう」
ルーカスも、頭を下げた。
「ありがとうございます、真理様」
真理は、お茶を置いた。
そして、蒼を見た。
「蒼、パパのお仕事、見てる?」
蒼は、笑っている。
「あー、うー」
ゴードンは、蒼を抱き上げた。
「よしよし」
真理は、微笑んでいる。
幸せそうな家族。
◆ ロバートの成長
厩舎。
ロバートが、馬の世話をしていた。
16歳。
平民出身。
孤児だったが、おっさんが引き取った。
真面目で、働き者。
馬にブラシをかけている。
優しく。
丁寧に。
馬が、気持ちよさそうにしている。
ダリウスが、通りかかった。
「ロバート」
「馬の世話、上手になったな」
ロバートは、照れくさそうに笑った。
「ありがとうございます」
「馬が好きなので」
ダリウスは、頷いた。
「良いことだ」
「馬は、戦場でも大事な仲間だ」
「大切にしろ」
ロバートは、頷いた。
「はい」
ダリウスは、続けた。
「お前も、騎士を目指すか?」
ロバートは、少し考えた。
「……分かりません……」
「でも、康太郎様のお役に立ちたいです」
「どんな形でも」
ダリウスは、ロバートの頭を撫でた。
「良い心構えだ」
◆ バハムートと子供たち
庭。
バハムートが、人の姿でいた。
50代前半の、銀髪の男性。
でも――
子供たちに、遊ばれていた。
ホープ、希望、光。
3人が、バハムートに乗っている。
「バハ、はやく!」
「もっと!」
「あー、うー!」
バハムートは、四つん這いになっている。
馬のように。
子供たちを、背中に乗せて。
「……重い……」
「……お前たち、重すぎる……」
でも――
嫌そうではない。
むしろ、楽しそう。
おっさんとセシリアとアリシアが、ベンチに座って見ている。
セシリアが、笑っている。
「バハムートさん、すっかり子守ですね」
アリシアも、微笑んでいる。
「子供たちも、バハムートさんが大好きですね」
おっさんは、微笑んだ。
「……古代竜が、子供のおもちゃか……」
「……誰が想像できただろうな……」
バハムートが、おっさんを見た。
「康太郎……」
「……助けてくれ……」
おっさんは、笑った。
「……自分で何とかしろ……」
バハムートは、溜息をついた。
「……これも、平和の証か……」
子供たちが、笑っている。
「バハ、すき!」
「だいすき!」
「あー!」
バハムートは、照れくさそうに笑った。
「……まあ、悪くないな……」
◆ 訪問の相談
夕方――
おっさんは、みんなを集めた。
広間。
セシリア、アリシア、ゴードン、真理、ダリウス、オスカー。
そして――
若い男性貴族たち。
ダニエル、ヴィクター、アレクサンダー、ルーカス、ロバート。
おっさんが、手紙を見せた。
「……ノルディア王国から、招待状が来た……」
「……留学生たちの成果を、見てほしいと……」
みんな、驚いた。
「ノルディア王国!」
「留学生たちですか!」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……行こうと思う……」
「……でも、街を空けるわけにはいかない……」
おっさんは、若者たちを見た。
「……お前たちに、任せたい……」
ダニエルが、前に出た。
「康太郎様」
「お任せください」
「私たちが、街を守ります」
ヴィクターも、頷いた。
「はい」
「訓練の成果を、見せます」
アレクサンダーも、言った。
「領地経営も、お任せください」
「オスカー様に教わったことを、実践します」
ルーカスも、頷いた。
「魔道具の修理も、やります」
ロバートも、言った。
「僕も、できることをします」
おっさんは、五人を見た。
成長した顔。
頼もしい顔。
おっさんは、微笑んだ。
「……ありがとう……」
「……お前たちなら、大丈夫だ……」
「……信じている……」
五人は、涙を流していた。
「……ありがとうございます……!」
ダリウスが、言った。
「私も、サポートします」
「若者たちを、導きます」
オスカーも、頷いた。
「私も、です」
おっさんは、頷いた。
「……頼む……」
◆ 出発準備
翌日――
出発の準備が、始まった。
おっさん、セシリア、アリシア。
ホープ、希望、光。
ゴードン、真理、蒼。
リーナも、同行する。
「商談もあるしね」
若者たちが、荷物を運んでいる。
「これも、持っていきますか?」
「はい、お願いします」
セバスチャンが、指示を出している。
「食料は、十分に」
「水も、忘れずに」
マリアが、メイドたちを指揮している。
「着替えも、用意して」
みんなで、協力している。
バハムートは、人の姿で立っている。
「俺も、行くのか?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……お前も、仲間だ……」
バハムートは、微笑んだ。
「……まあ、いいだろう……」
「……子供たちの護衛だ……」
子供たちが、バハムートに抱きついた。
「バハも、いくの!」
「やった!」
「あー、うー!」
バハムートは、子供たちを抱き上げた。
「……お前たちは、重いんだぞ……」
◆ 若者たちへの言葉
出発の朝――
おっさんは、若者たちを前にした。
ダニエル、ヴィクター、アレクサンダー、ルーカス、ロバート。
五人が、並んでいる。
おっさんが、言った。
「……数週間、留守にする……」
「……街のことを、頼む……」
ダニエルが、答えた。
「はい」
「お任せください」
おっさんは、一人一人の顔を見た。
「……ダニエル……」
「……お前は、騎士として街を守れ……」
「……ヴィクターと協力して……」
ダニエルは、頷いた。
「はい!」
「……ヴィクター……」
「……お前も、同じだ……」
「……ダニエルを支えてくれ……」
ヴィクターは、頷いた。
「はい!」
「……アレクサンダー……」
「……領地経営を、頼む……」
「……オスカーと相談して……」
「……良い判断をしろ……」
アレクサンダーは、頷いた。
「はい!」
「……ルーカス……」
「……魔道具のことは、お前に任せる……」
「……困ったことがあったら、ゴードンの工房にある資料を見ろ……」
ルーカスは、頷いた。
「はい!」
「……ロバート……」
「……お前は、みんなを支えてくれ……」
「……できることを、全部やってくれ……」
ロバートは、涙を流しながら頷いた。
「はい!」
おっさんは、五人に頭を下げた。
「……ありがとう……」
「……お前たちを、信じている……」
五人は、涙を流していた。
でも――
しっかりとした顔。
「お任せください!」
◆ 出発
馬車が、用意された。
おっさん一行が、乗り込む。
住民たちが、見送りに来ていた。
「いってらっしゃい!」
「気をつけて!」
若者たちが、前に並んだ。
敬礼。
おっさんは、手を振った。
「……行ってくる……」
「……頼んだぞ……」
馬車が、出発した。
ゆっくりと。
街を出ていく。
若者たちは、見送り続けた。
馬車が、見えなくなるまで。
ダニエルが、みんなに言った。
「さあ、仕事だ」
「康太郎様の期待に、応えよう」
四人は、頷いた。
「おう!」
五人は、それぞれの仕事に向かった。
街を守るために。
成長した姿を、見せるために。
グリーンヘイブン。
若者たちが、成長していた。
ダニエル、ヴィクター、アレクサンダー、ルーカス、ロバート。
それぞれが、自分の役割を果たしている。
おっさんは、彼らを信じて街を任せた。
ノルディア王国へ。
留学生たちの成果を見に。
新しい旅が、始まる。
バハムートは、子供たちのおもちゃ。
でも、それも平和の証。
温かい物語が、続く。
(次回:第92話「ノルディア王国訪問」に続く)




