第88話:治療魔道具開発
◆ ゴードンの工房
翌日――
早朝。
ゴードンの工房。
ゴードン、セシリア、リリアが集まっていた。
机の上には、白い魔石が並んでいる。
たくさんの魔石。
ゴードンは、徹夜していた。
目が、赤い。
でも――
諦めていない。
「治療用魔道具……」
「絶対に、完成させる……」
セシリアが、心配そうに言った。
「ゴードンさん、少し休んでください」
ゴードンは、首を振った。
「いや、時間がない」
「感染者は、増え続けている」
「一刻も早く、完成させないと……」
リリアも、言った。
「でも、倒れてしまっては……」
ゴードンは、微笑んだ。
「大丈夫だ」
「康太郎が、俺を信じてくれている」
「だから、応えたい」
セシリアとリリアは、頷いた。
「……私たちも、協力します……」
◆ 理論の確認
ゴードンが、説明した。
「治療用魔道具の理論は、こうだ」
「白い魔石に、お前たちの治癒の力を込める」
「でも、それだけじゃ足りない」
「結界や護符とは、違う」
「病気を、完全に治す力が必要だ」
セシリアが、聞いた。
「どうすれば、いいんですか?」
ゴードンは、考えた。
「お前の光の祝福は、浄化の力がある」
「リリアの治癒の力は、傷を癒す」
「この二つを、合わせる」
「そして――」
ゴードンは、魔石を手に取った。
「魔石の中で、増幅させる」
「そうすれば、病気を完全に治す力になるはずだ」
リリアが、聞いた。
「増幅……?」
ゴードンは、頷いた。
「ああ」
「魔石には、魔力を蓄える性質がある」
「そして、増幅させる性質もある」
「だから、理論上は可能だ」
「でも……」
ゴードンは、少し躊躇した。
「まだ、やったことがない」
「うまくいくか、分からない」
セシリアが、言った。
「やってみましょう」
「試さないと、分かりません」
リリアも、頷いた。
「はい」
「私たちの力を、全て込めます」
ゴードンは、二人を見た。
「……ありがとう……」
◆ 最初の試み
ゴードンが、白い魔石を置いた。
大きな魔石。
拳ぐらいの大きさ。
「まず、セシリア」
「お前の光の祝福を、この魔石に込めてくれ」
「できるだけ強く」
セシリアは、頷いた。
魔石の前に立つ。
手を差し出す。
そして――
祈った。
「光よ……」
「この魔石に、宿れ……」
「浄化の力を……」
「病を、完全に払う力を……」
光が、溢れ出た。
セシリアの手から。
強い光。
温かい光。
光が、魔石に吸い込まれていく。
魔石が、輝き始めた。
白く。
美しく。
強く。
セシリアは、汗をかいている。
力を込めている。
全力で。
10分、20分。
セシリアは、疲れている。
でも――
続ける。
ゴードンが、言った。
「もう、いい」
「十分だ」
セシリアは、手を下ろした。
息を切らしている。
「はぁ……はぁ……」
リリアが、セシリアを支えた。
「大丈夫ですか?」
セシリアは、頷いた。
「……はい……」
「……大丈夫です……」
ゴードンは、魔石を手に取った。
光っている。
セシリアの力が、込められている。
「次は、リリア」
「お前の治癒の力を、込めてくれ」
リリアは、頷いた。
魔石の前に立つ。
手を差し出す。
「癒しの力よ……」
「この魔石に、宿れ……」
「病を、治す力を……」
光が、魔石に吸い込まれる。
魔石が、さらに輝いた。
二つの力が、混ざり合う。
セシリアの浄化の力。
リリアの治癒の力。
魔石の中で、融合していく。
リリアも、全力で力を込める。
汗をかきながら。
祈りながら。
ゴードンは、魔石を見つめていた。
(……頼む……)
(……うまくいってくれ……)
◆ 失敗
しかし――
魔石が、突然割れた。
パキッ。
二つに。
光が、消えた。
ゴードンは、呆然とした。
「……失敗……?……」
セシリアとリリアも、驚いている。
「……え……?……」
ゴードンは、割れた魔石を見た。
「……力が、強すぎた……?……」
「……それとも、融合の方法が間違っていた……?……」
ゴードンは、頭を抱えた。
「……くそ……」
セシリアが、ゴードンの肩に手を置いた。
「大丈夫です」
「もう一度、やりましょう」
リリアも、頷いた。
「はい」
「諦めません」
ゴードンは、二人を見た。
涙を流していた。
「……ありがとう……」
◆ 試行錯誤
それから――
何度も、試した。
魔石を変える。
力の込め方を変える。
順番を変える。
でも――
うまくいかない。
割れる。
光が弱い。
融合しない。
失敗が、続く。
ゴードンは、疲れていた。
セシリアも、リリアも。
三人とも、限界に近い。
でも――
諦めない。
「もう一度……」
「もう一度だけ……」
◆ おっさんの訪問
その時――
工房の扉が開いた。
おっさんが、入ってきた。
「……ゴードン……」
ゴードンは、おっさんを見た。
「……康太郎……」
おっさんは、三人の様子を見た。
疲れている。
汗をかいている。
でも――
諦めていない目。
おっさんは、ゴードンに近づいた。
「……無理するな……」
ゴードンは、首を振った。
「無理じゃない」
「これは、俺の仕事だ」
「魔道具師としての、仕事だ」
おっさんは、ゴードンの肩を叩いた。
「……分かっている……」
「……でも、お前が倒れたら困る……」
「……少し、休め……」
ゴードンは、黙っていた。
おっさんは、続けた。
「……俺も、手伝う……」
「……何ができるか分からないが……」
「……一緒に、考えよう……」
ゴードンは、涙を流した。
「……康太郎……」
「……ありがとう……」
◆ 新しいアプローチ
おっさんは、割れた魔石を見た。
「……これは?……」
ゴードンが、説明した。
「力を込めすぎて、割れた」
「融合の方法が、分からない」
おっさんは、考えた。
(……融合……)
(……二つの力を、一つに……)
そして――
思いついた。
「……ゴードン……」
「……段階的に、力を込めたらどうだ?……」
ゴードンは、おっさんを見た。
「段階的?」
おっさんは、説明した。
「……最初は弱く……」
「……少しずつ、強くしていく……」
「……魔石を、慣らすように……」
ゴードンは、目を輝かせた。
「……なるほど……!」
「……それなら、割れないかもしれない……!」
おっさんは、頷いた。
「……やってみよう……」
◆ 再挑戦
新しい魔石。
セシリアとリリアも、準備した。
ゴードンが、言った。
「今度は、段階的に」
「最初は弱く」
「少しずつ、強くしていく」
二人は、頷いた。
セシリアが、手を差し出す。
「光よ……」
「優しく、宿れ……」
弱い光。
でも、優しい光。
魔石に、吸い込まれていく。
魔石が、ほんのり輝く。
ゴードンが、見守る。
「いい……」
「そのまま、少しずつ強くしていけ……」
セシリアは、少しずつ力を強める。
光が、強くなっていく。
でも――
急がない。
ゆっくりと。
魔石が、光を受け入れている。
割れない。
輝きが、増していく。
10分後――
セシリアが、手を下ろした。
「……これで……」
ゴードンは、魔石を確認した。
割れていない。
光っている。
「……成功だ……!」
次は、リリア。
同じように。
段階的に。
優しく。
少しずつ。
治癒の力を込めていく。
魔石が、さらに輝く。
二つの力が、混ざり合う。
融合していく。
魔石の中で。
美しく。
強く。
リリアが、手を下ろした。
「……終わりました……」
ゴードンは、魔石を手に取った。
見る。
確認する。
そして――
笑った。
「……できた……!!」
「……治療用魔道具が……!!」
「……完成した……!!」
セシリア、リリア、おっさん。
三人とも、涙を流した。
「良かった……!」
◆ テスト
すぐに――
隔離施設へ。
ゴードン、セシリア、リリア、おっさん。
四人で、急いだ。
施設に、入る。
感染者たちが、横たわっている。
苦しそうに。
ゴードンが、最初の患者のそばに行った。
40代の男性。
高熱、咳。
苦しんでいる。
ゴードンは、治療魔道具を男性の胸に当てた。
「頼む……」
「効いてくれ……」
魔道具が、輝いた。
強い光。
温かい光。
光が、男性の体を包む。
浸透していく。
男性の表情が、変わった。
苦しそうな顔が――
楽になっていく。
呼吸が、整う。
咳が、止まる。
熱が、下がっていく。
おっさんは、男性の額に手を当てた。
「……熱が……」
「……下がっている……!」
セシリアが、確認した。
「……本当に……!」
リリアも、涙を流している。
「……効いています……!」
男性が、目を開けた。
「……あ……」
「……楽に……なった……」
ゴードンは、涙を流しながら笑った。
「……成功だ……!!」
「……治療魔道具が……!!」
「……本当に、効いた……!!」
◆ 治療開始
それから――
次々と。
全ての感染者に。
治療魔道具を使った。
一人、また一人。
光が、包む。
病が、癒されていく。
熱が下がる。
咳が止まる。
体の痛みが、消える。
感染者たちが、回復していく。
「……楽になった……」
「……ありがとうございます……」
「……助かった……」
涙を流す者。
笑顔になる者。
喜びの声が、響く。
おっさんは、その様子を見ていた。
涙を流しながら。
(……良かった……)
(……間に合った……)
セシリアが、おっさんの手を握った。
「……コウタロウさん……」
「……みんな、助かりました……」
おっさんは、セシリアを抱きしめた。
「……ああ……」
「……ゴードンが、やってくれた……」
ゴードンは、魔道具を見つめていた。
疲れている。
でも――
満足そうな顔。
「……康太郎……」
「……ありがとう……」
「……お前のアイデアのおかげだ……」
おっさんは、首を振った。
「……いや……」
「……お前と、セシリアと、リリアの力だ……」
「……俺は、何もしていない……」
ゴードンは、微笑んだ。
「……そんなことない……」
「……お前がいたから、諦めなかった……」
◆ 報告
夕方――
館の広間。
おっさん、ゴードン、セシリア、リリア。
オスカー、ダリウス、リーナも集まった。
おっさんが、報告した。
「……治療魔道具が、完成した……」
「……感染者全員に、使った……」
「……全員、回復した……」
全員が、歓声を上げた。
「本当ですか!?」
「良かった!!」
リーナが、ゴードンの肩を叩いた。
「やったわね、ゴードン!」
ゴードンは、照れくさそうに笑った。
「まあ、な」
オスカーが、言った。
「これで、疫病を克服できますね」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……でも、油断はできない……」
「……治療魔道具を、量産する……」
「……新しい感染者が出ても、すぐに治療できるように……」
ゴードンは、頷いた。
「ああ」
「すぐに、量産体制を整える」
ダリウスが、言った。
「住民たちに、知らせましょう」
「みんな、安心します」
おっさんは、頷いた。
「……頼む……」
◆ 希望の光
夜――
おっさんは、窓から外を見ていた。
星空。
美しい。
セシリアが、そばに来た。
「コウタロウさん」
おっさんは、セシリアを見た。
セシリアは、微笑んでいる。
「良かったですね」
「みんな、助かりました」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……本当に、良かった……」
セシリアが、おっさんに寄りかかった。
「ゴードンさん、すごいですね」
おっさんは、微笑んだ。
「……ああ……」
「……あいつは、最高の魔道具師だ……」
「……そして、最高の仲間だ……」
セシリアは、おっさんを抱きしめた。
「私たちには、素晴らしい仲間がいます」
「だから、どんな困難も乗り越えられます」
おっさんは、セシリアを抱きしめた。
「……そうだな……」
おっさんは、空を見上げた。
星が、輝いている。
希望の光のように。
(……疫病を、克服した……)
(……まだ油断はできない……)
(……でも、希望が見えた……)
(……この街を、守れる……)
(……家族を、守れる……)
グリーンヘイブン。
治療魔道具が、完成した。
ゴードン、セシリア、リリアの協力。
おっさんのアイデア。
みんなの力で。
感染者全員が、回復した。
疫病との戦いに、光が見えた。
希望が、戻ってきた。
でも――
まだ、終わりではない。
新しい感染者が、出るかもしれない。
油断は、できない。
戦いは、続く。
(次回:第89話「克服」に続く)




