第84話:街の発展
◆ 朝の視察
ある日の朝――
おっさんは、街を視察していた。
オスカーと一緒。
馬に乗って。
グリーンヘイブンの中心街。
賑わっている。
人々が、行き交う。
商人が、店を開いている。
子供たちが、走り回っている。
おっさんは、その様子を見て微笑んだ。
「……賑やかになったな……」
オスカーは、頷いた。
「はい」
「人口が、大きく増えました」
「今では、約5000人です」
おっさんは、驚いた。
「……5000人……?……」
「……最初は、数百人だったのに……」
オスカーは、微笑んだ。
「はい」
「噂が広がったんです」
「グリーンヘイブンは、良い街だと」
「身分差別がない、と」
「魔道具がある、と」
「だから、多くの人が来ました」
おっさんは、頷いた。
「……そうか……」
「……良かった……」
◆ 新しい区画
おっさんたちは、街の外れに来た。
そこには――
新しい建物が、並んでいる。
まだ建設中。
大工たちが、働いている。
おっさんが、聞いた。
「……ここは?……」
オスカーが、説明した。
「新しい商業地区です」
「人口が増えたので、商店が足りなくなりました」
「だから、新しい区画を作っています」
「ここに、店舗、工房、宿屋を建てます」
おっさんは、感心した。
「……よく考えたな……」
オスカーは、頭を下げた。
「康太郎様の理念を、実現しているだけです」
「誰もが働ける場所を」
「誰もが暮らせる街を」
おっさんは、オスカーの肩を叩いた。
「……ありがとう、オスカー……」
「……お前がいてくれて、助かっている……」
オスカーは、涙を流していた。
「……もったいないお言葉です……」
◆ 住民たちの声
おっさんたちは、中心街に戻った。
住民たちが、おっさんに気づいた。
「康太郎様!」
「伯爵様!」
おっさんは、馬を降りた。
住民たちが、集まってくる。
一人の老人が、前に出た。
「康太郎様、ありがとうございます」
「私は、他の街から来ました」
「そこでは、貴族に虐げられていました」
「でも、ここは違います」
「誰もが平等です」
「働けば、ちゃんと報酬がもらえます」
「本当に、ありがとうございます」
老人は、深く頭を下げた。
おっさんは、老人の肩を抱いた。
「……いや……」
「……お前が、働いてくれたからだ……」
「……俺じゃない……」
「……お前たち、みんなのおかげだ……」
老人は、涙を流した。
「……康太郎様……」
他の住民たちも、涙を流している。
「康太郎様、万歳!」
「万歳!」
おっさんは、照れくさそうに手を振った。
「……みんな、ありがとう……」
◆ 農地の視察
午後――
おっさんは、農地を視察した。
広大な農地。
野菜、麦、果物。
たくさん育っている。
農民たちが、働いている。
その中に――
アリシアがいた。
土にまみれて。
汗をかいて。
でも――
笑顔。
「康太郎さん!」
おっさんは、近づいた。
「……アリシア……」
「……頑張っているな……」
アリシアは、微笑んだ。
「はい」
「毎日、楽しいです」
「働くことの喜びを、知りました」
「土に触れること」
「野菜が育つこと」
「全てが、新鮮です」
おっさんは、頷いた。
「……良かった……」
アリシアは、農民たちを見た。
「みなさんも、優しくしてくれます」
「王女だったことなど、関係ありません」
「ただの仲間として、接してくれます」
「本当に、ありがたいです」
おっさんは、微笑んだ。
「……それが、この街だ……」
「……身分じゃない……」
「……人として、接する……」
アリシアは、涙を流した。
「……はい……」
「……素晴らしい街です……」
◆ 子供たちの遊び場
おっさんは、新しい場所に来た。
広場。
新しく作られた、遊び場。
そこには――
たくさんの子供たちが、遊んでいる。
ホープ、希望、光もいる。
他の子供たちと一緒。
ホープが、ボールを投げている。
「えい!」
希望が、受け取ろうとする。
「まって!」
光は、這って追いかける。
「あー、うー!」
他の子供たちも、笑っている。
「ホープ、こっち!」
「のぞみ、がんばって!」
身分など、関係ない。
王女の子も、伯爵の子も、平民の子も。
みんな、ただの友達。
おっさんは、その様子を見て思った。
(……これが、理想だ……)
(……子供たちに、身分差別はない……)
(……この世代が、大人になった時……)
(……この国は、変わる……)
◆ 報告会議
夕方――
館の会議室。
おっさん、オスカー、ダリウス、ゴードン、リーナが集まっていた。
オスカーが、報告した。
「人口:約5000人」
「税収:順調に増加」
「新商業地区:来月完成予定」
「農業生産:豊作」
「魔道具販売:好調」
おっさんは、頷いた。
「……順調だな……」
リーナが、言った。
「コータロー、すごいわよ」
「他の街から、視察団が来てるのよ」
「グリーンヘイブンを見学したいって」
おっさんは、驚いた。
「……視察団?……」
リーナは、頷いた。
「そう」
「身分差別のない街」
「魔道具で発展した街」
「みんな、興味津々なのよ」
ゴードンも、言った。
「ああ」
「魔道具の注文も、増えている」
「他の街から」
「他の国から」
「グリーンヘイブンの名前は、広がっている」
おっさんは、少し考えた。
「……名前が広がるのは、良いことだ……」
「……でも、注意も必要だな……」
ダリウスが、頷いた。
「はい」
「警備を、強化しています」
「でも、今のところ問題ありません」
おっさんは、頷いた。
「……分かった……」
「……引き続き、頼む……」
◆ 隣国の噂
会議の終わり――
オスカーが、少し躊躇しながら言った。
「……康太郎様……」
「……実は、気になる報告があります……」
おっさんは、オスカーを見た。
「……何だ?……」
オスカーは、真剣な顔になった。
「隣国で、疫病が発生したという噂です」
おっさんは、顔色を変えた。
「……疫病……?……」
オスカーは、頷いた。
「はい」
「確認はできていません」
「あくまで、噂です」
「でも、商人たちの間で広がっています」
リーナも、頷いた。
「私も、聞いたわ」
「東の国で、病気が流行っているって」
「詳しくは、分からないけど」
おっさんは、考えた。
「……疫病……」
「……もし本当なら……」
「……グリーンヘイブンにも、来るかもしれない……」
ゴードンが、聞いた。
「どうする?」
おっさんは、決断した。
「……情報を集める……」
「……リーナ、商人のネットワークで調べてくれ……」
「……オスカー、他国との連絡を密にしろ……」
「……ゴードン、万が一に備えて……」
「……治療用の魔道具を、準備してくれ……」
全員が、頷いた。
「了解しました!」
おっさんは、窓の外を見た。
夕日。
美しい。
でも――
心に、不安が芽生えていた。
(……疫病……)
(……もし、来たら……)
(……この街を、守らないと……)
(……家族を、守らないと……)
◆ 夜の会話
夜――
おっさんとセシリアの寝室。
おっさんは、セシリアに報告した。
「……隣国で、疫病が発生したらしい……」
セシリアは、顔色を変えた。
「……疫病……?……」
おっさんは、頷いた。
「……まだ、噂だ……」
「……でも、備えておく……」
「……万が一、グリーンヘイブンに来たら……」
「……お前の力が、必要になる……」
セシリアは、真剣な顔になった。
「……分かりました……」
「……光の祝福で、できる限りのことをします……」
おっさんは、セシリアを抱きしめた。
「……ありがとう……」
「……でも、無理はするな……」
「……お前の体も、大事だ……」
セシリアは、おっさんの胸に顔を埋めた。
「……はい……」
「……でも、みんなを守りたいです……」
「……この街を……」
「……希望と光を……」
おっさんは、セシリアを抱きしめた。
「……ああ……」
「……一緒に、守ろう……」
おっさんは、窓の外を見た。
星空。
美しい。
でも――
不安が、心に残っている。
(……疫病……)
(……来ないでほしい……)
(……でも、来るかもしれない……)
(……だから、備える……)
(……この街を、守る……)
(……家族を、守る……)
(……必ず……)
グリーンヘイブン。
街は、発展している。
人口5000人。
新しい商業地区。
豊かな農地。
幸せな住民たち。
でも――
不安の影が、忍び寄っている。
疫病。
隣国からの噂。
おっさんは、決意した。
備える。
街を守る。
家族を守る。
新たな試練が、始まろうとしていた。
(次回:第85話「子供たちの成長」に続く)




