第76話:奴隷制廃止
◆ 議論の始まり
戦いの翌日――
おっさんは、会議を開いていた。
エドワード三世の陣営。
大きな天幕。
おっさん、セシリア、エドワード三世、フィリップ侯爵。
ダリウス、オスカー。
留学生たち6人。
そして――
捕虜のグスタフ将軍も、同席していた。
縛られてはいない。
おっさんが、前に立った。
「……みんな、聞いてくれ……」
「……奴隷制について、話したい……」
全員が、おっさんを見た。
おっさんは、続けた。
「……ヴァルハイム王国の奴隷制を、廃止する……」
全員が、ざわついた。
◆ グスタフの反論
グスタフが、前に出た。
「待て、康太郎伯爵」
「奴隷制を廃止?」
「では、犯罪者はどうする?」
おっさんは、グスタフを見た。
「……犯罪者?……」
グスタフは、続けた。
「殺人犯、強盗、詐欺師」
「彼らを、お前は野に放つのか?」
「奴隷にしなければ、また犯罪を犯す」
「だから、奴隷にして働かせる」
「これが、正義だ」
おっさんは、首を振った。
「……違う……」
「……刑務所を作る……」
グスタフは、眉をひそめた。
「……刑務所?……」
「……何だ、それは?……」
「……聞いたこともない……」
「……分かるように、説明しろ……」
おっさんは、説明し始めた。
「……刑務所とは、犯罪者を一定期間閉じ込める施設だ……」
「……罪に応じて、刑期を決める……」
「……殺人なら20年、強盗なら10年……」
「……その間、牢獄に入れて……」
「……労働で、更生させる……」
「……期限が来たら、解放する……」
グスタフは、笑った。
「はっはっは!!」
「馬鹿な!!」
「解放したら、また犯罪を犯すぞ!!」
「一生奴隷にするのが、正しい!!」
「それに、牢獄に入れても税金の無駄だ!!」
「奴隷として働かせた方が、利益になる!!」
おっさんは、首を振った。
「……違う……」
「……人は、変われる……」
「……更生できる……」
「……一生奴隷にするのは、間違っている……」
グスタフは、納得しない。
「綺麗事だ!!」
「お前は、理想主義者だ!!」
「現実を、見ていない!!」
◆ セシリアの難色
セシリアが、小さな声で言った。
「……コウタロウさん……」
おっさんは、セシリアを見た。
セシリアは、困った顔をしていた。
「……犯罪奴隷まで、解放するのは……」
「……危険すぎます……」
「……殺人犯を、野に放つなんて……」
「……また、人を殺すかもしれません……」
おっさんは、驚いた。
「……セシリア……?」
セシリアは、涙を流しそうになっていた。
「……ごめんなさい……」
「……でも、怖いんです……」
「……犯罪者が、街を歩くなんて……」
「……希望や光が、危険に晒されるかもしれない……」
おっさんは、セシリアの手を握った。
「……セシリア……」
エドワード三世も、口を開いた。
「……康太郎伯爵……」
「……私も、セシリア殿に同意だ……」
「……戦争奴隷は、解放すべきだ……」
「……レイゼン王国の人々など、何も悪くない……」
「……でも、犯罪奴隷は別ではないか?……」
「……彼らは、罪を犯した……」
「……だから、奴隷にされた……」
「……それが、この世界の正義だ……」
フィリップ侯爵も、頷いた。
「そうだ」
「犯罪奴隷を解放するのは、危険すぎる」
「国民が、不安になる」
留学生たちも、戸惑っている。
トーマスが、小さな声で言った。
「……確かに……」
「……犯罪者は、怖いです……」
エマも、頷いた。
「……私も、怖いです……」
「……殺人犯が、近くにいるなんて……」
フェリックスとリディアも、迷っている。
フェリックス「……伯爵様の理想は、分かります……」
「……でも、現実的には……」
リディア「……難しいのでは……」
レイモンドとヴィクトリアでさえ、言った。
レイモンド「……伯爵様……」
「……戦争奴隷は、解放すべきです……」
「……でも、犯罪奴隷は、さすがに……」
ヴィクトリア「……私も、怖いです……」
「……犯罪者が、自由に歩くなんて……」
おっさんは、周りを見た。
誰も、賛成していない。
セシリアでさえ。
信頼している仲間たちでさえ。
おっさんは、気づいた。
(……誰も、理解してくれない……)
(……この世界の常識は、根深い……)
(……奴隷制が、当たり前すぎる……)
(……犯罪奴隷は、仕方ないと思っている……)
(……急ぎすぎても、変わらない……)
(……時間が、必要だ……)
◆ 段階的アプローチ
おっさんは、深く息をついた。
しばらく、考えた。
そして――
頷いた。
「……分かった……」
全員が、おっさんを見た。
おっさんは、続けた。
「……急ぎすぎた……」
「……この世界の常識を、一気に変えるのは無理だ……」
「……何百年、何千年と続いてきた制度を……」
「……一瞬で変えることはできない……」
「……だから、段階的にやる……」
全員が、耳を傾けている。
おっさんは、説明した。
「……まずは、戦争奴隷から解放する……」
「……レイゼン王国など、滅ぼされた国の人々……」
「……彼らは、何も悪くない……」
「……ただ、国を滅ぼされただけだ……」
「……だから、解放する……」
「……これには、賛成してくれるか?……」
全員が、頷いた。
エドワード三世「それなら、賛成だ」
セシリア「……はい……」
フィリップ侯爵「賛成する」
留学生たちも、頷いた。
おっさんは、続けた。
「……次に、債務奴隷だ……」
「……借金を返せなくて、奴隷になった人々……」
「……債務整理制度を作って、解放する……」
「……働いて、少しずつ返済すればいい……」
エドワード三世が、聞いた。
「それも、理解できる」
「賛成だ」
おっさんは、頷いた。
「……ありがとう……」
「……そして、犯罪奴隷は……」
全員が、緊張した。
おっさんは、続けた。
「……まず、刑務所を試験的に作る……」
「……グリーンヘイブンで、実験する……」
「……犯罪者を、刑務所に入れて……」
「……労働で、更生させる……」
「……脱走できないように、厳重に管理する……」
「……そして、刑期が終わったら、解放する……」
「……もし、また犯罪を犯したら……」
「……また、刑務所に入れる……」
「……成功したら、他の国にも広める……」
「……失敗したら……」
おっさんは、少し黙った。
そして――
続けた。
「……俺が、責任を取る……」
「……時間はかかる……」
「……10年、20年かかるかもしれない……」
「……でも、必ず全廃する……」
「……奴隷制を、完全になくす……」
「……それが、俺の目標だ……」
セシリアは、おっさんの手を握った。
涙を流している。
「……はい……」
「……それなら、賛成です……」
「……時間をかけて、変えていきましょう……」
「……私も、協力します……」
エドワード三世も、頷いた。
「賛成だ」
「段階的なら、受け入れられる」
「グリーンヘイブンで実験して、成功を見せてくれ」
「そうすれば、我が国にも広める」
フィリップ侯爵も、同意した。
「私も、賛成だ」
「康太郎伯爵を、信じる」
留学生たちも、頷いた。
トーマス「段階的なら、いいと思います」
エマ「はい、賛成です」
フェリックス「伯爵様なら、できると思います」
リディア「私たちも、協力します」
レイモンド「僕も、賛成です」
ヴィクトリア「私も、協力します」
おっさんは、微笑んだ。
「……ありがとう、みんな……」
◆ グスタフの理解
グスタフは、複雑な顔をしていた。
しばらく、黙っていた。
そして――
口を開いた。
「……お前は、本気なんだな……」
「……奴隷制を、なくすつもりなんだな……」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……必ず、なくす……」
「……人が人を、所有する……」
「……そんなこと、間違っている……」
グスタフは、少し考えた。
そして――
小さく頷いた。
「……分かった……」
「……お前の、やり方を見てやる……」
「……もし、成功したら……」
「……俺も、認める……」
「……俺も、実は思っていたんだ……」
「……奴隷制は、どこか間違っていると……」
「……でも、他に方法がなかった……」
「……お前が、新しい道を示してくれるなら……」
「……協力してやる……」
おっさんは、微笑んだ。
「……ありがとう、グスタフ……」
◆ 決意
おっさんは、窓の外を見た。
空。
青い空。
美しい。
平和な空。
おっさんは、拳を握りしめた。
(……奴隷制廃止……)
(……時間はかかる……)
(……10年、20年……)
(……いや、もっとかかるかもしれない……)
(……でも、必ずやり遂げる……)
(……この世界から、奴隷をなくす……)
(……全ての人が、自由に生きられる世界を作る……)
(……それが、俺の使命だ……)
セシリアが、そばに来た。
おっさんの手を、握る。
「……コウタロウさん……」
「……私、信じています……」
「……コウタロウさんなら、できます……」
おっさんは、セシリアを抱きしめた。
「……ありがとう、セシリア……」
「……お前がいてくれるから、頑張れる……」
エドワード三世が、言った。
「康太郎伯爵」
「次は、王都だ」
「カール五世を、説得しよう」
「奴隷制を、廃止させる」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……行きましょう……」
グリーンヘイブン。
ヴァルハイム王国との戦い。
奴隷制廃止の議論。
セシリアでさえ、犯罪奴隷の解放には難色を示した。
この世界の常識の壁。
根深い。
おっさんは、段階的アプローチを選んだ。
まずは、戦争奴隷から。
次に、債務奴隷。
そして、犯罪奴隷は刑務所制度で。
時間はかかる。
でも――
必ず、全廃する。
次は、王都。
カール五世との対峙。
おっさんの、最後の戦いが始まる。
(次回:第77話「王都攻略」に続く)




