第75話:圧倒的な力
◆ 敵軍到着
数日後――
元レイゼン王国の土地。
おっさんたちは、陣を張っていた。
エドワード王国軍、2000人。
グリーンヘイブンの兵士たち、200人。
ガーディアン10体。
バハムート。
そして――
おっさんとセシリア。
留学生たちも、来ていた。
トーマス、エマ、フェリックス、リディア、レイモンド、ヴィクトリア。
6人とも、戦う覚悟。
おっさんは、地平線を見ていた。
そこに――
巨大な軍が、現れた。
ヴァルハイム王国軍。
12500人。
圧倒的な数。
旗が、翻っている。
鎧が、輝いている。
馬が、嘶いている。
エドワード三世は、緊張している。
「……12500人……」
「……我が軍の、6倍以上……」
おっさんは、冷静だった。
「……大丈夫です……」
「……任せてください……」
◆ おっさんの方針
おっさんは、全軍に向かって言った。
「……みんな、聞いてくれ……」
全員が、おっさんを見た。
おっさんは、続けた。
「……今から、戦いが始まる……」
「……でも、俺は極力殺したくない……」
全員が、驚いた。
「……え?……」
おっさんは、説明した。
「……敵の兵士たちも……」
「……ただ、王の命令で来ただけだ……」
「……奴隷制を支持しているわけじゃない……」
「……だから、殺す必要はない……」
「……戦意を、喪失させる……」
「……それだけで、いい……」
エドワード三世が、聞いた。
「……どうやって?……」
おっさんは、微笑んだ。
「……見ててください……」
「……バハムートに、頼む……」
◆ 両軍対峙
ヴァルハイム軍が、近づいてきた。
陣を、張る。
おっさんたちの、目の前。
約1キロの距離。
グスタフ将軍が、前に出た。
馬に、乗っている。
大声で、叫んだ。
「康太郎伯爵!!」
「出て来い!!」
おっさんは、前に出た。
バハムートに、乗っている。
セシリアも、一緒。
グスタフが、言った。
「康太郎伯爵!」
「我が国の財産を、盗んだな!!」
「奴隷を、解放した!!」
「許せない!!」
おっさんは、冷たく言った。
「……財産……?……」
「……人を、財産と呼ぶな……」
「……奴隷制は、間違っている……」
グスタフは、笑った。
「はっはっは!!」
「綺麗事を!!」
「どの国にも、奴隷はいる!!」
「当たり前だ!!」
おっさんは、首を振った。
「……俺の国には、いない……」
「……グリーンヘイブンには、奴隷はいない……」
「……みんな、自由だ……」
グスタフは、馬鹿にした。
「そんなことは、どうでもいい!!」
「今日、ここで決着をつける!!」
「お前を、倒す!!」
おっさんは、頷いた。
「……分かった……」
「……でも、俺は極力殺さない……」
「……お前たちに、選択肢をやる……」
グスタフ「……何?……」
おっさんは、大声で叫んだ。
「……ヴァルハイム軍、聞け…!!」
「……今すぐ、武器を捨てて降伏しろ…!!」
「……そうすれば、命は助ける…!!」
「……でも、戦うなら……!!」
「……容赦しない…!!」
ヴァルハイム軍の兵士たちは、ざわついた。
グスタフは、怒った。
「ふざけるな!!」
「我が軍は、12500人だ!!」
「お前たちは、たかだか2000人!!」
「勝てるわけがない!!」
おっさんは、微笑んだ。
「……数じゃない……」
「……見せてやる……」
「……本当の、力を……」
◆ セシリアの光の大結界
おっさんは、セシリアに言った。
「……セシリア……」
「……味方全員を、守ってくれ……」
セシリアは、頷いた。
「……はい……」
セシリアは、手を掲げた。
光の祝福。
全力。
「光の大結界!!」
光が、溢れ出た。
優しい光。
でも――
強い光。
光が、味方全員を覆った。
巨大なドーム。
エドワード王国軍、2000人。
グリーンヘイブンの兵士たち、200人。
ガーディアン10体。
留学生たち。
全員が、光のドームの中。
完全防御。
ヴァルハイム軍は、驚いた。
「……何だ、あれは……!?」
グスタフも、驚いている。
「……聖女の力……!?」
◆ バハムートの咆哮
おっさんは、バハムートに言った。
「……バハムート……」
「……頼む……」
「……まず、咆哮を……」
バハムートは、頷いた。
「……分かった……」
バハムートは、竜形態。
巨大。
空高く、飛び上がった。
ヴァルハイム軍の上空。
そして――
咆哮した。
「グオオオオオオオオ!!!」
轟音。
地響き。
空気が、震える。
大地が、震える。
ヴァルハイム軍の兵士たちは、怯えた。
「……う、うわあ……!」
「……竜だ……!」
「……本物の、竜だ……!」
馬が、暴れる。
兵士たちが、倒れる。
グスタフは、顔を青くした。
「……く、くそ……!」
バハムートの咆哮は、続いた。
「グオオオオオオオオ!!!」
何度も。
何度も。
ヴァルハイム軍は、完全に怯えた。
戦意が、下がる。
◆ 特大ブレス
おっさんは、バハムートに言った。
「……バハムート……」
「……次は、特大ブレスを……」
「……でも、敵に直接当てるな……」
「……あっちの山に、撃ってくれ……」
おっさんは、遠くの山を指差した。
ヴァルハイム軍から、離れた場所。
約2キロ先。
大きな山。
バハムートは、理解した。
「……分かった……」
「……威嚇だな……」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……でも、本気で撃ってくれ……」
「……全力で……」
バハムートは、微笑んだ。
「……任せろ……」
バハムートは、大きく息を吸った。
胸が、膨らむ。
体が、光る。
炎の魔力が、集まる。
莫大な魔力。
ヴァルハイム軍は、その様子を見て震えた。
「……何を、するつもりだ……!?」
グスタフも、恐怖を感じている。
「……ま、まさか……!」
バハムートは、山に向かってブレスを吐いた。
特大ブレス。
全力。
「グオオオオオオオオ!!!」
炎が、放たれた。
巨大な炎。
太陽のような、光。
炎は、山に向かって飛んでいった。
そして――
山に、当たった。
「ドゴオオオオオオオン!!!」
轟音。
爆発。
山が、溶けた。
岩が、溶ける。
木が、一瞬で炭化する。
山の上部が、消えた。
蒸発した。
熱気が、広がる。
ものすごい熱気。
ヴァルハイム軍にも、届く。
約2キロ離れているのに。
「……あ、熱い……!!」
「……何だ、この熱気は……!!」
兵士たちが、汗を流す。
鎧が、熱くなる。
グスタフも、汗だくになった。
「……こ、これが……」
「……竜の、力……!?」
山は、まだ燃えている。
溶けている。
恐ろしい光景。
ヴァルハイム軍は、完全に恐怖した。
◆ おっさんの宣言
おっさんは、前に出た。
大声で、叫んだ。
「……見たか…!!」
「……これが、バハムートの力だ…!!」
「……次は、お前たちに撃つ…!!」
「……山のように、溶ける…!!」
「……それでも、戦うか…!?」
ヴァルハイム軍は、沈黙した。
兵士たちが、顔を見合わせる。
恐怖。
絶望。
一人の兵士が、武器を捨てた。
地面に、剣を落とす。
「……無理だ……」
「……勝てない……」
それを見て、他の兵士たちも次々と武器を捨てた。
剣、槍、弓。
全てを、捨てる。
「……俺も、降伏する……」
「……死にたくない……」
次々と。
次々と。
武器を捨てる音が、響く。
グスタフは、叫んだ。
「……待て…!!」
「……逃げるな…!!」
「……戦え…!!」
でも――
兵士たちは、聞かない。
もう、戦意はない。
恐怖だけ。
グスタフは、絶望した。
「……くそ……!」
◆ グスタフの降伏
おっさんは、グスタフに近づいた。
バハムートから、降りる。
歩いて。
グスタフの前まで。
グスタフは、馬から降りた。
剣を、構える。
「……来るな……!」
おっさんは、剣を抜いた。
ミスリルの剣。
「……降伏しろ……」
「……これ以上、無駄な血を流すな……」
グスタフは、剣を振るった。
「……黙れ…!!」
おっさんに、斬りかかる。
でも――
おっさんは、簡単に避けた。
希望の力で、強化されている。
速い。
強い。
おっさんは、グスタフの剣を弾いた。
「ガキイン!!」
グスタフの剣が、飛ぶ。
地面に、落ちる。
グスタフは、倒れた。
おっさんは、グスタフに剣を向けた。
「……降伏しろ……」
グスタフは、震えていた。
「……く、くそ……」
「……分かった……」
「……降伏する……」
おっさんは、剣を収めた。
「……賢明な判断だ……」
◆ 勝利
戦いは、終わった。
戦わずして。
ヴァルハイム軍、12500人。
全員が、降伏した。
武器を、捨てた。
死者、ゼロ。
負傷者も、ほとんどいない。
完全勝利。
エドワード三世は、驚愕していた。
「……信じられない……」
「……12500人を、無傷で……」
フィリップ侯爵も、感動している。
「……素晴らしい……」
「……これが、康太郎伯爵の力……」
留学生たちも、驚いている。
トーマス「……すごい……」
エマ「……戦わずして、勝った……」
フェリックス「……圧倒的だ……」
リディア「……これが、伯爵の力……」
レイモンドとヴィクトリアも、感動している。
レイモンド「……素晴らしい……」
ヴィクトリア「……本当に、すごい……」
おっさんは、ヴァルハイム軍の兵士たちに言った。
「……みんな、聞いてくれ……」
兵士たちが、おっさんを見た。
おっさんは、続けた。
「……お前たちは、悪くない……」
「……ただ、命令に従っただけだ……」
「……だから、許す……」
「……でも、一つだけ聞きたい……」
「……お前たちは、奴隷制をどう思っている?……」
兵士たちは、顔を見合わせた。
一人の兵士が、前に出た。
「……正直に言います……」
「……俺たちも、奴隷制は嫌いです……」
「……でも、逆らえません……」
「……王や貴族が、決めたことですから……」
おっさんは、頷いた。
「……そうか……」
「……なら、一緒に変えよう……」
「……この国を……」
兵士たちは、驚いた。
「……本当ですか……!?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……奴隷制を、廃止する……」
「……全ての奴隷を、解放する……」
「……そして、新しい国を作る……」
「……平等な国を……」
兵士たちは、歓声を上げた。
「おおおお!!」
「康太郎伯爵、万歳!!」
「万歳!!」
おっさんは、空を見上げた。
青い空。
美しい。
平和な空。
(……戦わずして、勝った……)
(……これが、一番いい……)
(……次は、王都だ……)
(……カール五世を、説得する……)
(……そして、奴隷制を廃止させる……)
グリーンヘイブン。
ヴァルハイム王国との戦い。
おっさんは、圧倒的な力を見せた。
バハムートの咆哮と特大ブレス。
戦意を、喪失させた。
12500人を、無傷で降伏させた。
次は、王都。
おっさんの、最後の戦いが始まる。
(次回:第76話「奴隷制廃止」に続く)




