第71話:新たな絆
◆ 変化の兆し
下水道から戻って、数日後――
グリーンヘイブン。
留学生たちの生活が、少しずつ変わっていた。
ゴードンの工房。
授業中。
レイモンドとヴィクトリアは、以前よりも真剣に聞いている。
表面的ではなく。
本当に、学ぼうとしている。
ゴードンが、説明している。
「この魔道具は、温度を調整する」
「魔石の配置が、重要だ」
レイモンドが、質問した。
「ゴードン様、この部分ですが」
「もっと効率的な配置は、ありませんか?」
ゴードンは、微笑んだ。
「いい質問だ」
「実は、こういう方法もある」
レイモンドは、熱心にメモを取っている。
ヴィクトリアも、真剣。
以前のような、退屈そうな顔はない。
トーマスとエマも、驚いている。
(……レイモンドとヴィクトリアが、変わってきた……)
◆ 小さな変化
昼食の時間。
食堂。
以前は、レイモンドとヴィクトリアは別のテーブルに座っていた。
でも――
今日は、違った。
レイモンドが、トーマスに声をかけた。
「……トーマス……」
「……一緒に、座ってもいいか?……」
トーマスは、驚いた。
「……え?……」
「……はい、もちろん……」
レイモンドは、トーマスの隣に座った。
ヴィクトリアも、エマの近くに座った。
まだ、ぎこちない。
でも――
一緒に座っている。
エマが、嬉しそうに言った。
「今日の授業、面白かったですね」
ヴィクトリアは、少し恥ずかしそうに頷いた。
「……はい……」
「……ゴードン様の説明は、分かりやすいです……」
会話は、まだ少ない。
でも――
確実に、距離が縮まっている。
フェリックスとリディアは、それを見て微笑んでいる。
(……良かった……)
◆ 共同作業
午後――
農業の研修。
オスカーが、案内している。
温室。
魔道具農業の施設。
留学生たち全員が、集まっている。
オスカーが、説明した。
「ここでは、魔道具で温度と光を管理しています」
「年中、野菜が収穫できます」
留学生たちは、感心している。
「すごい……」
オスカー「では、実際に作業してもらいます」
「野菜の収穫と、魔道具の点検です」
留学生たちは、二人一組になった。
トーマスとレイモンド。
エマとヴィクトリア。
フェリックスとリディア。
レイモンドは、トーマスと一緒に野菜を収穫している。
トーマスが、言った。
「レイモンド、この野菜、大きいですね」
レイモンドは、頷いた。
「……ああ……」
「……魔道具のおかげだな……」
「……すごい技術だ……」
トーマスは、微笑んだ。
「はい、本当に」
二人は、協力して収穫している。
以前のような、主従関係はない。
対等。
エマとヴィクトリアも、一緒に魔道具を点検している。
エマが、説明した。
「ヴィクトリアさん、この魔道具は」
「こうやって、調整するんです」
ヴィクトリアは、真剣に聞いている。
「……なるほど……」
「……ありがとう、エマ……」
エマは、驚いた。
ヴィクトリアが、自分に感謝している。
以前では、考えられなかった。
エマは、嬉しそうに微笑んだ。
「どういたしまして」
◆ 兵士たちとの会話
夕方――
宿舎。
レイモンドとヴィクトリアは、お付きの兵士たちと話していた。
マルクとハンス。
レイモンドが、言った。
「……マルク、ハンス……」
「……少し、話がある……」
二人の兵士は、緊張している。
「……はい……」
レイモンドは、深く頭を下げた。
「……今まで、すまなかった……」
二人は、驚いた。
「……レイモンド様……!?」
レイモンドは、続けた。
「……俺は、お前たちを人として見ていなかった……」
「……使用人のように、扱っていた……」
「……でも、下水道で分かった……」
「……みんな、同じ人間だって……」
「……本当に、すまなかった……」
マルクとハンスは、涙を流した。
「……レイモンド様……」
「……ありがとうございます……」
ヴィクトリアも、頭を下げた。
「……私も、ごめんなさい……」
「……今まで、ひどいことをしました……」
二人の兵士は、感動している。
「……ヴィクトリア様……」
レイモンドが、言った。
「……これからは、対等に話そう……」
「……仲間として……」
マルクは、微笑んだ。
「……はい……」
「……でも、警護は続けさせてください……」
「……それが、俺たちの仕事ですから……」
レイモンドは、頷いた。
「……ああ……」
「……よろしく頼む……」
◆ おっさんへの報告
夜――
フェリックスとリディアが、おっさんを訪ねた。
執務室。
おっさんが、迎えた。
「……どうした?……」
フェリックスが、嬉しそうに言った。
「康太郎伯爵、報告があります」
「レイモンドとヴィクトリアが、変わってきました」
リディアも、頷いた。
「はい」
「トーマスとエマと、一緒に食事をしています」
「協力して、作業もしています」
おっさんは、微笑んだ。
「……そうか……」
「……良かった……」
フェリックスが、続けた。
「それに、兵士たちにも謝っていました」
「本当に、心から」
おっさんは、頷いた。
「……時間がかかったが……」
「……ちゃんと、変わったんだな……」
リディアが、言った。
「康太郎伯爵のおかげです」
「下水道での経験が、二人を変えました」
おっさんは、首を振った。
「……いや、二人が自分で変わったんだ……」
「……俺は、きっかけを作っただけだ……」
◆ 留学生たちの夜
その夜――
宿舎の食堂。
留学生たち6人が、集まっていた。
お茶を飲みながら、話している。
トーマスが、言った。
「今日の研修、楽しかったですね」
エマも、微笑んでいる。
「はい、とても勉強になりました」
レイモンドが、言った。
「……トーマス、エマ……」
「……本当に、すまなかった……」
「……今まで、ひどいことをして……」
トーマスは、首を振った。
「もういいですよ」
「レイモンドは、変わりました」
「それで、十分です」
エマも、頷いた。
「そうです」
「これから、仲良くしましょう」
ヴィクトリアが、涙を流した。
「……ありがとう……」
「……本当に、ありがとう……」
フェリックスが、微笑んだ。
「これからは、みんなで頑張ろう」
リディアも、頷いた。
「はい、みんなで」
6人は、手を重ねた。
新たな絆。
身分など、関係ない。
みんな、仲間。
◆ セシリアとの会話
その夜――
おっさんとセシリアは、部屋にいた。
セシリアが、言った。
「……良かったですね……」
「……レイモンドとヴィクトリアが、変わって……」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……時間はかかったが……」
「……本当に、変わった……」
セシリアは、おっさんを抱きしめた。
「……コウタロウさんのおかげです……」
おっさんは、微笑んだ。
「……いや、みんなの努力だ……」
「……特に、レイモンドとヴィクトリアが……」
「……自分で、変わろうとした……」
「……それが、一番大事だ……」
おっさんは、窓の外を見た。
夜空。
星が、輝いている。
平和な夜。
(……留学生たちが、成長した……)
(……良かった……)
(……これからも、見守っていこう……)
◆ 不穏な影
翌日――
王都から、急使が来た。
伯爵の館。
執務室。
おっさんは、急使から手紙を受け取った。
国王エドワード三世からの手紙。
おっさんは、読んだ。
「康太郎伯爵殿
緊急の報告です。
ヴァルハイム王国から、使者が来ました。
高圧的な態度で、要求をしてきました。
貴国の魔道具と魔石の技術を、共有せよと。
私は、断りました。
しかし、彼らは脅迫してきました。
技術を渡さないなら、力で奪うと。
国境に、軍を集結させているとの情報もあります。
警戒してください。
特に、グリーンヘイブンは魔道具の中心地です。
狙われる可能性が高いです。
準備を、お願いします。
エドワード三世」
おっさんは、顔色を変えた。
「……ヴァルハイム王国……」
「……戦争か……?……」
おっさんは、すぐにゴードンとオスカーを呼んだ。
「……すぐに、来てくれ……」
「……緊急事態だ……」
数分後――
ゴードン、オスカー、ダリウスが集まった。
おっさんは、手紙を見せた。
「……読んでくれ……」
三人は、読んだ。
顔色が、変わる。
ゴードン「……戦争……!?」
オスカー「……ヴァルハイム王国は、隣国です……」
「……強大な軍事力を持っています……」
ダリウス「……防衛の準備を、始めないと……」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……すぐに、準備する……」
「……ガーディアンを配備しろ……」
「……バハムートにも、伝えろ……」
「……住民の避難計画も、確認しろ……」
三人は、頷いた。
「了解しました!」
三人は、急いで出て行った。
おっさんは、窓の外を見た。
平和な街。
グリーンヘイブン。
でも――
もうすぐ、戦争が来る。
おっさんは、拳を握りしめた。
(……この街を、守る……)
(……みんなを、守る……)
(……絶対に……)
グリーンヘイブン。
留学生たちは、新たな絆を築いた。
レイモンドとヴィクトリアが、変わった。
でも――
新たな脅威が、迫っていた。
ヴァルハイム王国。
技術を求めて、侵攻してくる。
おっさんの、新たな戦いが始まる。
(次回:第72話「脅威の到来」に続く)




