第68話:留学生たち
第68話:留学生たち
◆ 手紙
数週間後――
ノルディア王国から、手紙が届いた。
レオナルド大臣からの手紙。
おっさんは、読んだ。
「康太郎伯爵殿
交易協定、ありがとうございます。
さて、一つお願いがあります。
我が国の若者を、グリーンヘイブンに留学させていただけないでしょうか。
貴国の素晴らしい技術、システムを学ばせたいのです。
魔道具、循環型農業、街づくり。
全てが、我が国にとって価値があります。
ご検討、よろしくお願いいたします。
レオナルド」
おっさんは、少し考えた。
そして――
セシリアに相談した。
「……留学生を受け入れるべきか……」
セシリアは、微笑んだ。
「……いいと思います……」
「……若者たちに、学んでほしいです……」
おっさんは、頷いた。
「……そうだな……」
「……受け入れよう……」
おっさんは、返事を書いた。
「レオナルド殿
留学生の受け入れ、承諾します。
若者たちに、学んでもらいましょう。
準備が整い次第、連絡してください。
康太郎」
◆ 準備
数週間後――
留学生を受け入れる準備が始まった。
宿舎を、用意する。
街の一角。
立派な建物。
部屋が、たくさん。
食堂も、ある。
おっさんは、視察した。
「……これなら、大丈夫だな……」
オスカーも、頷いている。
「はい」
「何人来ても、大丈夫です」
おっさんは、ゴードンにも相談した。
「……留学生に、何を教えるべきか……」
ゴードンは、少し考えた。
「……魔道具の基礎だな……」
「……それに、循環システムの仕組み……」
「……実践的なものがいい……」
おっさんは、頷いた。
「……分かった……」
「……お前に、頼む……」
◆ 到着
数週間後――
留学生たちが、到着した。
馬車で。
6人。
男性3人、女性3人。
若い。
20代前半。
おっさんが、出迎えた。
セシリア、ゴードン、オスカーも一緒。
留学生たちは、馬車から降りた。
おっさんは、前に出た。
「……ようこそ、グリーンヘイブンへ……」
「……俺は、康太郎……」
「……この街の伯爵だ……」
留学生たちは、深く頭を下げた。
「初めまして、康太郎伯爵」
「お世話になります」
◆ 自己紹介
おっさんが、言った。
「……まず、自己紹介をしてくれ……」
留学生たちは、一人ずつ前に出た。
最初は、若い男性。
茶色の髪。
誠実そうな顔。
「トーマスです」
「平民の出身です」
「鍛冶屋の息子です」
「魔道具を、学びに来ました」
おっさんは、頷いた。
「……よろしく……」
次は、若い女性。
金色の髪。
優しそうな顔。
「エマです」
「平民の出身です」
「農家の娘です」
「循環型農業を、学びに来ました」
おっさんは、微笑んだ。
「……よろしく……」
次は、若い男性。
黒い髪。
知的な顔。
「フェリックスです」
「男爵家の三男です」
「貴族ですが、身分にこだわりません」
「知識を、学びたいです」
おっさんは、頷いた。
「……いい心がけだ……」
次は、若い女性。
赤い髪。
聡明そうな顔。
「リディアです」
「子爵令嬢です」
「でも、身分より知識が大事だと思っています」
「たくさん、学びたいです」
おっさんは、微笑んだ。
「……よろしく……」
次は、若い男性。
金髪。
自信に満ちた顔。
「レイモンドです」
「伯爵家の次男です」
「康太郎伯爵から直接、学べると聞いて」
「とても楽しみにしてきました!」
おっさんは、頷いた。
「……そうか……」
「……よろしく……」
最後は、若い女性。
銀髪。
上品な顔。
「ヴィクトリアです」
「侯爵令嬢です」
「伯爵様の素晴らしい技術を」
「ぜひ学ばせていただきたいです」
おっさんは、微笑んだ。
「……ああ……」
「……よろしく……」
◆ ルール説明
おっさんは、留学生たちに説明した。
「……ここでは、身分は関係ない……」
「……貴族も、平民も、同じだ……」
「……大事なのは、学ぶ意欲だ……」
「……それだけだ……」
トーマスとエマは、嬉しそう。
フェリックスとリディアは、頷いている。
でも――
レイモンドとヴィクトリアは、不満そう。
レイモンドが、口を開いた。
「……身分が関係ない?」
「……それは、おかしくないか?」
「……貴族と平民は、違う……」
おっさんは、真剣な顔で言った。
「……ここでは、違わない……」
「……みんな、平等だ……」
「……それが、このグリーンヘイブンのルールだ……」
「……従えないなら、帰ってもらう……」
レイモンドは、黙った。
でも――
不満そうな顔。
◆ 宿舎
おっさんは、留学生たちを宿舎に案内した。
立派な建物。
留学生たちは、驚いた。
「すごい……」
「綺麗です……」
おっさんが、説明した。
「……ここが、お前たちの宿舎だ……」
「……部屋は、それぞれ個室だ……」
「……食堂もある……」
「……困ったことがあれば、いつでも言ってくれ……」
トーマスが、言った。
「ありがとうございます、康太郎伯爵」
「こんなに良い場所を、用意していただいて」
エマも、涙を流している。
「感謝します」
フェリックスとリディアも、頭を下げた。
「ありがとうございます」
でも――
レイモンドとヴィクトリアは、不満そう。
ヴィクトリアが、言った。
「……まあ、悪くはないけど……」
「……もっと豪華かと思ったわ……」
おっさんは、無視した。
◆ 最初の授業
翌日――
最初の授業が始まった。
ゴードンの工房。
留学生たち6人が、集まっている。
ゴードンが、前に立った。
「初めまして、ゴードンだ」
「魔道具職人だ」
「これから、魔道具の基礎を教える」
レイモンドが、驚いた顔をした。
「……え?……」
「……ゴードン男爵が、教師なんですか?……」
ヴィクトリアも、不満そう。
「……私たちは、康太郎伯爵から直接学べると……」
ゴードンは、眉をひそめた。
「康太郎は、街の統治がある」
「魔道具は、俺が教える」
「不満か?」
レイモンドが、小声で言った。
「……身分が低い……」
「……男爵なんて……」
ゴードンは、聞こえた。
顔色が、変わる。
でも――
何も言わなかった。
トーマスが、慌てて言った。
「ゴードン様は、素晴らしい魔道具職人です!」
「学べて、光栄です!」
エマも、頷く。
「はい!」
「よろしくお願いします!」
フェリックスとリディアも、頭を下げた。
「よろしくお願いします」
ゴードンは、微笑んだ。
「……ありがとう……」
「……では、始めよう……」
留学生たちは、真剣に聞いている。
ゴードンは、魔道具を見せた。
照明用魔道具。
「これは、照明用の魔道具だ」
「魔石を使って、光を出す」
「仕組みは、こうだ」
ゴードンは、説明した。
魔石の配置。
魔力の流れ。
全てを、詳しく。
トーマスは、熱心にメモを取っている。
エマも、真剣に聞いている。
フェリックスとリディアも、集中している。
でも――
レイモンドとヴィクトリアは、退屈そう。
不満そうな顔。
レイモンドが、あくびをした。
ゴードンは、気づいた。
「レイモンド、退屈か?」
レイモンドは、ふんと鼻を鳴らした。
「……こんな基礎的なこと……」
「……もっと高度なことを学びたいんですが……」
ゴードンは、眉をひそめた。
「なら、この魔道具の仕組みを説明してみろ」
レイモンドは、困った顔をした。
「……え……」
「……それは……」
ゴードン「知らないのか?」
「基礎も分からないのに、高度なことは学べない」
「ちゃんと聞け」
レイモンドは、不満そうだが黙った。
◆ 昼食
昼食の時間。
食堂。
留学生たちが、食事をしている。
トーマスとエマは、一緒に座っている。
「今日の授業、面白かったね」
「うん、すごく勉強になった」
フェリックスとリディアも、近くに座っている。
「ゴードン先生、すごいですね」
「はい、本当に」
でも――
レイモンドとヴィクトリアは、別のテーブルに座っている。
二人だけで。
レイモンドが、不満を口にした。
「……平民と一緒に授業なんて……」
「……ありえない……」
ヴィクトリアも、頷いた。
「そうよ」
「私たち貴族が、平民と同じ扱いなんて」
「屈辱だわ」
二人は、トーマスとエマを睨んでいる。
トーマスとエマは、気づいていない。
楽しそうに、話している。
◆ 衝突の予兆
午後――
街を案内する時間。
オスカーが、案内している。
留学生たちが、ついていく。
市場。
賑わっている。
住民たちが、買い物している。
オスカーが、説明した。
「ここが、市場です」
「新鮮な野菜、魔獣の肉、魔道具」
「全てが、揃っています」
トーマスが、感心している。
「すごい活気ですね」
エマも、微笑んでいる。
「みんな、幸せそうです」
でも――
レイモンドが、住民を見て言った。
「……平民ばかりだな……」
「……汚い……」
住民の一人が、聞いてしまった。
怒った顔。
でも――
何も言わなかった。
オスカーは、気づいた。
レイモンドを、睨む。
「レイモンド、言葉に気をつけろ」
「ここの住民は、みんな大切な仲間だ」
レイモンドは、ふんと鼻を鳴らした。
「……はいはい……」
温泉複合施設。
オスカーが、案内した。
「これが、温泉施設です」
「康太郎様が、発見して開発しました」
留学生たちは、驚いた。
「温泉!」
「すごい!」
ヴィクトリアが、言った。
「……まあ、温泉は悪くないわね……」
「……でも、平民も入るんでしょ?……」
「……汚いわ……」
エマが、反論した。
「そんなことないです」
「みんな、綺麗に使っています」
ヴィクトリアは、エマを睨んだ。
「……平民が、私に口答えするの?……」
エマは、怯えた。
フェリックスが、割って入った。
「ヴィクトリア、やめろ」
「ここでは、身分は関係ないんだ」
「康太郎伯爵が、そう言っただろ」
ヴィクトリアは、不満そうだが黙った。
◆ おっさんの対応
夜――
おっさんは、オスカーから報告を受けた。
「康太郎様、レイモンドとヴィクトリアが問題を起こしています」
「ゴードン様の授業で、身分が低いと不満を漏らしていました」
おっさんは、ため息をついた。
「……そうか……」
「……今すぐ、二人を呼んでくれ……」
オスカー「了解しました」
おっさんは、セシリアに言った。
「……ちょっと、話をしてくる……」
セシリアは、心配そう。
「……大丈夫ですか?……」
おっさんは、頷いた。
「……大丈夫だ……」
数分後――
執務室。
レイモンドとヴィクトリアが、呼ばれた。
おっさんが、前に座っている。
セシリアも、そばにいる。
二人は、少し緊張している。
おっさんが、口を開いた。
「……レイモンド、ヴィクトリア……」
「……お前たち、ゴードンに不満があるそうだな……」
レイモンドが、答えた。
「……はい……」
「……正直に言います……」
「……私たちは、康太郎伯爵から直接学べると思っていました……」
「……でも、教師はゴードン男爵……」
「……身分が低すぎます……」
ヴィクトリアも、頷いた。
「そうです」
「伯爵様から直接学びたいんです」
「男爵なんて……」
おっさんは、二人をじっと見た。
そして――
静かに、でも力強く言った。
「……俺もゴードンも、元平民だぞ?……」
二人は、驚愕した。
「……え……!?」
「……元平民……!?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……俺は、異世界から召喚された……」
「……この世界では、身分も何もなかった……」
「……ゴードンも、平民の出身だ……」
「……でも、実力で男爵になった……」
「……俺も、実力で伯爵になった……」
レイモンドは、顔を青くした。
「……そんな……」
「……元平民が、伯爵に……?」
「……ありえない……」
ヴィクトリアも、侮蔑の表情を浮かべた。
「……やはり、成り上がりだったのですね……」
「……だから、身分を軽視するのですね……」
その瞬間――
おっさんの顔色が、変わった。
怒り。
激しい怒り。
おっさんは、立ち上がった。
机を、叩いた。
「バンッ!!」
大きな音。
二人は、びくっとした。
おっさんが、吼えた。
「……いい加減にしろ……!!」
セシリアが、驚いた。
おっさんが、こんなに怒るのを見るのは初めて。
「……コウタロウさん……」
「……落ち着いて……」
でも――
おっさんは、止まらない。
セシリアの言葉を、聞かない。
おっさんは、二人を睨みつけた。
「……お前たち、貴族だと言ったな……!?」
「……違う……!!」
「……お前たちは、貴族じゃない……!!」
レイモンドが、反論した。
「……何を言って……」
「……私は伯爵家の……」
おっさんは、遮った。
「……お前は、伯爵家の次男だ……!!」
「……爵位は、持っていない……!!」
「……ヴィクトリアも、侯爵令嬢だが……」
「……爵位は、持っていない……!!」
「……お前たちは、貴族の子供であって……」
「……自分自身は、爵位を持たない……!!」
「……なのに、貴族風を吹かすな……!!」
二人は、顔を真っ赤にした。
セシリアが、また止めようとした。
「……コウタロウさん……」
「……もう、そのくらいで……」
おっさんは、首を振った。
「……いや、セシリア……」
「……これは、言わないといけない……」
セシリアは、初めて見た。
おっさんが、自分の言葉を聞かない。
おっさんは、続けた。
「……貴族とは、何だ……!?」
「……教えてやる……!!」
おっさんは、二人を見据えた。
「……確かに、貴族には利益がある……!!」
「……立派な館に住める……!!」
「……良い服を着られる……!!」
「……美味しいものを食べられる……!!」
「……でも、それはなぜだ……!?」
「……ただの特権か……!?」
「……違う……!!」
おっさんは、拳を握りしめた。
「……それは、対価だ……!!」
「……貴族は、対価を払っている……!!」
「……領民を守る……!!」
「……税を管理する……!!」
「……街を発展させる……!!」
「……魔物から守る……!!」
「……文化を守る……!!」
「……法を守る……!!」
「……それらを、全て行うために……!!」
「……館が必要なんだ……!!」
「……良い服が必要なんだ……!!」
「……領民の前に立つために……!!」
「……信頼されるために……!!」
「……それが、貴族の責任だ……!!」
二人は、黙っている。
おっさんは、さらに続けた。
「……俺は、毎日考えている……!!」
「……どうすれば、住民が幸せになるか……!!」
「……どうすれば、街が発展するか……!!」
「……どうすれば、みんなを守れるか……!!」
「……寝ても、覚めても、考えている……!!」
「……それが、伯爵としての責任だから……!!」
「……その責任を果たすから……!!」
「……館に住めるんだ……!!」
「……良い服を着られるんだ……!!」
おっさんは、机を再び叩いた。
「バンッ!!」
「……でも、お前たちはどうだ……!?」
「……せっかく、知識を学ぶ機会があるのに……!!」
「……国を良くする機会があるのに……!!」
「……それを理解できないばかりか……!!」
「……不満しか言わない……!!」
「……身分が低いだと……!?」
「……教師に文句を言うだと……!?」
「……お前たちに、何ができる……!?」
「……何も責任を果たしていないくせに……!!」
「……貴族を名乗るな……!!」
おっさんは、息を切らしている。
激しい怒り。
セシリアは、見ていた。
おっさんの姿を。
初めて見る、激しい怒り。
でも――
それは、正しい怒り。
覚悟を持った、怒り。
セシリアは、感じた。
(……コウタロウさんは……)
(……こんなにも、覚悟を持って……)
(……伯爵という地位を受けていたのですね……)
(……責任を、果たすために……)
(……毎日、悩んで……)
(……考えて……)
セシリアの目に、涙が浮かんだ。
(……素晴らしい……)
(……こんな人を……)
(……私は、愛しているのですね……)
セシリアは、ますますおっさんに惚れていた。
おっさんは、二人に言った。
「……お前たちに、二つの選択肢をやる……」
「……一つ目……」
「……ここで、真剣に学べ……」
「……身分など忘れて……」
「……知識を吸収しろ……」
「……そして、国に帰って役立てろ……」
「……それが、貴族の子供としての責任だ……」
「……二つ目……」
「……今すぐ、帰れ……」
「……お前たちのような……」
「……責任を理解しない者は……」
「……ここには、要らない……」
おっさんは、二人を睨んだ。
「……どうする……?……」
「……答えろ……」
二人は、震えていた。
おっさんの迫力に。
レイモンドが、小さな声で言った。
「……す、すみませんでした……」
「……学びます……」
「……真剣に、学びます……」
ヴィクトリアも、涙を流しながら言った。
「……ごめんなさい……」
「……私も、学びます……」
「……身分のことは、忘れます……」
おっさんは、少し落ち着いた。
「……分かった……」
「……なら、もう一度チャンスをやる……」
「……でも、次はない……」
「……また同じことをしたら……」
「……即、帰ってもらう……」
「……いいな……」
二人は、深く頭を下げた。
「……はい……」
「……ありがとうございます……」
おっさんは、手を振った。
「……もう、行け……」
二人は、急いで部屋を出た。
部屋には、おっさんとセシリアだけになった。
おっさんは、椅子に座った。
疲れた顔。
「……すまない、セシリア……」
「……止めようとしてくれたのに……」
セシリアは、おっさんに近づいた。
そして――
おっさんを、抱きしめた。
「……いいえ……」
「……コウタロウさんは、正しいです……」
「……素晴らしかったです……」
おっさんは、驚いた。
「……え?……」
セシリアは、涙を流していた。
「……コウタロウさんが……」
「……こんなにも、覚悟を持って……」
「……伯爵として、責任を果たしていたこと……」
「……今日、初めて知りました……」
「……ますます、愛しくなりました……」
おっさんは、セシリアを抱きしめ返した。
「……ありがとう……」
「……セシリア……」
二人は、抱き合った。
静かな時間。
おっさんは、窓の外を見た。
夜空。
星が、輝いている。
(……レイモンドとヴィクトリアが……)
(……本当に、改心してくれればいいが……)
(……でも、言うべきことは言った……)
(……あとは、彼らの選択だ……)
グリーンヘイブン。
留学生たちが、到着した。
志高い平民、トーマスとエマ。
志高い貴族、フェリックスとリディア。
反発する貴族、レイモンドとヴィクトリア。
6人の若者。
これから、様々な問題が起きる。
おっさんの新たな挑戦が、始まる。
(次回:第69話「身分の壁」に続く)




