第64話:希望の光
第64話:希望の光
◆ 鼓舞の力
ドラゴンは、再び息を吸い始めた。
もう一度、ブレスを吐こうとしている。
おっさんは、焦っていた。
(……もう一度は、無理だ……)
(……どうする……)
(……希望の力……)
おっさんは、考えた。
希望の力。
人々に、希望を与える力。
仲間を、鼓舞する力。
(……そうだ……)
(……みんなを、鼓舞するんだ……)
おっさんは、叫んだ。
「みんな、聞いてくれ!!」
住民たちが、おっさんを見た。
おっさんは、続けた。
「俺たちは、負けない!!」
「この街を、守る!!」
「みんなの力を、貸してくれ!!」
おっさんの体が、光った。
希望の力。
光が、住民たちに届く。
住民たちは、感じた。
体に、力が満ちてくる。
勇気が、湧いてくる。
「康太郎様!!」
「はい!!」
「俺たちも、戦います!!」
若者たちが、剣を構えた。
ダニエル、アレクサンダー、ロバート。
令嬢たちも、魔道具を構えた。
クラリッサ、エミリア、ソフィア。
家臣たちも、武器を持った。
ダリウス、セバスチャン。
みんなが、力を得た。
おっさんの希望の力で。
鼓舞された。
みんなで、攻撃した。
剣、魔道具、あらゆる攻撃。
ドラゴンに、向かう。
「うおおおお!!」
攻撃が、ドラゴンに当たる。
「ドゴオオン!!」
でも――
ドラゴンの鱗は、硬い。
傷が、つかない。
力が増しても、それだけ。
効かない。
おっさんは、気づいた。
(……これじゃ、ダメだ……)
(……鼓舞しても、力が足りない……)
(……どうすれば……)
◆ 真の力
ドラゴンは、怒った。
「……うるさい……!」
巨大なブレスを、吐こうとする。
おっさんは、必死に考えた。
(……希望の力……)
(……本当の力は、何だ……?)
(……鼓舞するだけじゃない……)
(……もっと、何か……)
おっさんは、住民たちを見た。
みんな、おっさんを見ている。
信じている。
希望を、見出している。
おっさんに。
その時――
おっさんは、理解した。
(……そうか……)
(……俺が、希望の光になるんだ……)
(……みんなの希望を、受け止めるんだ……)
おっさんは、叫んだ。
「みんな、力を貸してくれ!!」
「俺に、全てを託してくれ!!」
おっさんの体が、強く光った。
希望の力。
解放。
住民たちは、感じた。
おっさんが、呼んでいる。
力を、求めている。
住民たちは、迷わなかった。
おっさんを、信じている。
今まで、ずっと助けてくれた。
だから――
全てを、託す。
住民たちの体から、光が出た。
魔力。
全ての魔力。
光が、おっさんに流れ込む。
若者たちの魔力。
令嬢たちの魔力。
家臣たちの魔力。
住民たち、全員の魔力。
全てが、おっさんに集まる。
住民たちは、次々と倒れた。
魔力を、全て渡したから。
立っていられない。
座り込む。
倒れる。
でも――
みんな、微笑んでいる。
おっさんを、信じている。
おっさんなら、勝てると。
立っているのは――
おっさんとセシリアだけ。
おっさんの体は、光で満ちていた。
全住民の魔力。
莫大な力。
おっさんは、感じた。
(……これが、真の力……)
(……希望の力……)
(……他人の魔力を、取り込む力……)
(……信頼がないと、できない……)
(……俺が、今まで積み重ねてきたもの……)
(……みんなの、信用……)
おっさんは、涙を流した。
(……ありがとう……)
(……みんな……)
◆ セシリアへの加護
おっさんは、セシリアを見た。
セシリアも、光っている。
でも――
まだ、立っている。
おっさんに、魔力を渡していない。
おっさんが、言った。
「セシリア、お前の力は取らない」
セシリアは、驚いた。
「……でも……」
おっさんは、微笑んだ。
「お前には、別の役目がある」
おっさんは、セシリアの手を握った。
おっさんの力が、セシリアに流れ込む。
光の加護。
希望の力と、光の祝福が、混ざり合う。
セシリアの体が、強く光った。
「……これは……」
おっさんが、言った。
「俺の全てを、お前に託す」
「もし、俺が倒れたら」
「お前が、みんなを守ってくれ」
セシリアは、涙を流した。
「……コウタロウさん……」
おっさんは、セシリアにキスをした。
優しいキス。
「……愛してる……」
セシリアは、泣きながら答えた。
「……私も……」
「……愛しています……」
◆ 決戦
おっさんは、ドラゴンを見上げた。
ドラゴンは、最大のブレスを吐こうとしている。
口が、開いている。
炎が、見える。
莫大な炎。
街を、焼き尽くす炎。
おっさんは、剣を構えた。
ミスリルの剣。
全住民の魔力を、纏っている。
光る剣。
おっさんは、走り出した。
ドラゴンに、向かって。
セシリアが、叫んだ。
「コウタロウさん!!」
おっさんは、振り返らない。
ただ、前へ。
ドラゴンが、ブレスを吐いた。
巨大な炎。
おっさんに、向かってくる。
でも――
おっさんは、避けない。
逆に、炎の中に飛び込んだ。
セシリアが、悲鳴を上げた。
「コウタロウさん!!」
住民たちも、叫ぶ。
「康太郎様!!」
でも――
おっさんは、炎の中を進んでいた。
希望の力の光が、炎を防いでいる。
全住民の魔力。
莫大な力。
炎を、押し返す。
おっさんは、ドラゴンの口に近づいた。
ドラゴンは、驚いた。
「……何……!?」
おっさんは、ドラゴンの口の中に飛び込んだ。
炎の奥。
ドラゴンの喉。
その奥。
おっさんは、剣を構えた。
全力で、突き刺す。
「うおおおおお!!」
剣が、ドラゴンの喉の奥に刺さった。
内部から。
鱗の内側。
柔らかい部分。
剣が、貫いた。
「グギャアアアア!!」
ドラゴンが、悲鳴を上げた。
苦しむ。
暴れる。
おっさんは、さらに剣を押し込んだ。
全住民の魔力を、解放する。
爆発。
内部から、爆発。
「ドゴオオオオオン!!」
ドラゴンの体が、光った。
内側から。
そして――
ドラゴンが、倒れた。
地面に、叩きつけられる。
「ドゴオオン!!」
大地が、震える。
ドラゴンは、動かない。
倒された。
◆ 対話
ドラゴンは、倒れていた。
苦しんでいる。
おっさんは、ドラゴンの体内にいた。
剣を、突き刺している。
もう少しで、致命傷。
殺せる。
でも――
おっさんは、迷った。
(……殺す必要が、あるのか?……)
(……このドラゴンは、何のために来た?……)
(……魔素が欲しかっただけかもしれない……)
おっさんは、剣を抜いた。
ドラゴンの体内から出る。
口から、出てきた。
全身、血まみれ。
ボロボロ。
でも――
生きている。
立っている。
おっさんは、ドラゴンに近づいた。
ドラゴンは、苦しんでいる。
倒れている。
おっさんは、手を当てた。
ドラゴンに。
希望の力を、使う。
治癒ではない。
対話だ。
心と心の対話。
おっさんの意識が、ドラゴンに届く。
「……何のために、来た?……」
ドラゴンの声が、聞こえた。
「……魔素……」
「……魔素が、欲しかった……」
「……力を、取り戻すために……」
おっさんは、理解した。
「……そうか……」
「……お前も、生きるために必死だったんだな……」
ドラゴン「……人間を、襲うつもりはなかった……」
「……ただ、魔素が……」
おっさんは、考えた。
そして――
決断した。
「……なら、分け合おう……」
ドラゴン「……何……?」
おっさん「……魔素を、分け合う……」
「……お前が必要なだけ、分けてやる……」
「……でも、人を襲うな……」
「……共存しよう……」
ドラゴンは、驚いた。
「……共存……?」
「……人間と、竜が……?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……殺し合う必要は、ない……」
「……お前も、生きたいだけだろ……」
「……なら、一緒に生きよう……」
ドラゴンは、沈黙した。
しばらく。
そして――
答えた。
「……分かった……」
「……お前の、言う通りにする……」
「……魔素を、分けてくれるなら……」
「……人は、襲わない……」
おっさんは、微笑んだ。
「……ありがとう……」
◆ 契約
おっさんは、ドラゴンの傷を見た。
内部の傷。
深い。
おっさんは、セシリアを呼んだ。
「セシリア!」
セシリアが、駆けつけた。
「コウタロウさん!」
おっさんを、抱きしめる。
「……良かった……」
「……無事で……」
おっさんは、セシリアに言った。
「……ドラゴンを、治療してくれ……」
セシリアは、驚いた。
「……ドラゴンを……?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……仲間にする……」
セシリアは、少し迷った。
でも――
おっさんを信じている。
頷いた。
「……分かりました……」
セシリアは、光の祝福を使った。
治癒の光。
ドラゴンの傷が、癒えていく。
ゆっくりと。
ドラゴンは、感じた。
優しい光。
暖かい。
(……これが、人間の力……)
(……優しい……)
治療が、終わった。
ドラゴンは、起き上がった。
まだ、完全ではない。
でも――
動ける。
ドラゴンは、おっさんを見た。
「……なぜ、助けた?……」
おっさんは、微笑んだ。
「……殺す必要が、なかったから……」
「……それに……」
「……仲間が、増えた方がいいだろ……」
ドラゴンは、少し考えた。
そして――
頭を下げた。
「……分かった……」
「……お前に、従う……」
「……康太郎……」
おっさんは、驚いた。
「……名前、知ってるのか?……」
ドラゴン「……お前の心を、感じた……」
「……希望の力で……」
「……お前は、康太郎……」
「……そして……」
ドラゴンは、続けた。
「……俺は、バハムートだ……」
おっさんは、微笑んだ。
「……バハムート……」
「……よろしく、頼む……」
◆ 仲間
住民たちは、驚いていた。
ドラゴンが、起き上がった。
でも――
攻撃してこない。
おっさんの隣に、いる。
おっさんが、説明した。
「みんな、聞いてくれ」
「このドラゴン、バハムートは、仲間だ」
「魔素を求めて来ただけだ」
「これからは、共存する」
住民たちは、ざわついた。
「ドラゴンと……?」
「大丈夫なのか……?」
おっさんは、頷いた。
「……大丈夫だ……」
「……俺が、保証する……」
住民たちは、おっさんを信じている。
だから――
頷いた。
「分かりました」
「康太郎様を、信じます」
バハムートは、住民たちを見た。
そして――
頭を下げた。
「……すまなかった……」
「……街を、壊して……」
「……これからは、償う……」
住民たちは、驚いた。
ドラゴンが、謝っている。
そして――
許した。
「いいですよ」
「これからは、仲間です」
バハムートは、涙を流した。
竜の涙。
大きな涙。
(……人間は、優しい……)
(……康太郎は、特に……)
おっさんは、バハムートに言った。
「……魔素は、洞窟にある……」
「……必要なだけ、使ってくれ……」
バハムートは、頭を下げた。
「……ありがとう……」
住民たちが、歓声を上げた。
「康太郎様、万歳!!」
「ドラゴンを仲間にした!!」
「すごい!!」
拍手が、鳴り響く。
盛大な拍手。
若者たちも、喜んでいる。
「すごい!!」
「ドラゴンが仲間に!!」
令嬢たちも、涙を流している。
「素晴らしい……」
家臣たちも、深く頭を下げる。
セバスチャン「お見事です」
オスカー「感動しました」
ダリウス「さすがです」
おっさんは、微笑んだ。
でも――
すぐに、倒れそうになった。
疲労。
莫大な力を使った。
セシリアが、支える。
「コウタロウさん!」
おっさんは、微笑んだ。
「……大丈夫……」
「……ちょっと、疲れただけ……」
◆ ゴードンの目覚め
数時間後――
おっさんは、休んでいた。
伯爵の館。
部屋で。
セシリアが、そばにいる。
希望と光も、来た。
希望が、おっさんに抱きつく。
「ぱぱ、すごい!」
光も、笑っている。
「あー、うー」
おっさんは、微笑んだ。
「……ただいま……」
その時――
ゴードンが、目を覚ました。
ゴードンの邸宅。
リリアが、看病していた。
真理も、そばにいた。
蒼を、抱いている。
ゴードンが、目を開けた。
「……う……」
真理が、駆け寄った。
「ゴードンさん!!」
ゴードンは、真理を見た。
「……真理……」
「……俺は……」
リリアが、説明した。
「大丈夫です」
「命は、助かりました」
「でも、しばらく安静に」
ゴードンは、頷いた。
「……分かった……」
そして、聞いた。
「……ドラゴンは……?」
真理は、微笑んだ。
「倒されました」
「康太郎さんが」
ゴードンは、驚いた。
「……康太郎が……?」
真理は、頷いた。
「はい」
「希望の力で」
「みんなの魔力を集めて」
「ドラゴンの内部から、倒しました」
ゴードンは、涙を流した。
「……さすがだ……」
「……康太郎……」
◆ 平和の訪れ
数日後――
グリーンヘイブンは、復興していた。
バハムートの攻撃で、建物が壊れた。
でも――
死者は、いない。
おっさんの指示が、良かった。
避難が、間に合った。
住民たちは、協力して復興する。
労働用ゴーレムも、手伝う。
バハムートも、手伝っている。
大きな体で、瓦礫を運ぶ。
住民たちは、最初は怖がっていた。
でも――
すぐに慣れた。
バハムートは、優しい。
力持ち。
役に立つ。
「バハムート、ありがとう!」
「助かるよ!」
バハムートは、嬉しそう。
「……いや……」
「……俺が、壊したんだ……」
「……当然だ……」
おっさんは、街を見回った。
復興が、進んでいる。
住民たちは、元気。
笑顔。
バハムートと、一緒に働いている。
おっさんは、微笑んだ。
(……良かった……)
(……殺さなくて……)
(……仲間が、増えた……)
セシリアが、そばに来た。
希望と光も、一緒。
希望が、バハムートを見て言った。
「おおきい!」
光も、興味深そう。
「あー、うー」
バハムートは、希望と光を見た。
優しい目。
「……可愛い子たちだ……」
「……康太郎の、子供か……」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……希望と、光だ……」
バハムートは、頭を下げた。
「……守らせてくれ……」
「……この子たちを……」
「……この街を……」
おっさんは、バハムートの頭を撫でた。
「……ありがとう……」
「……頼む……」
◆ 人化
バハムートが、言った。
「……康太郎……」
「……実は、俺には別の姿がある……」
おっさん「……別の姿?……」
バハムート「……ああ……」
「……人の姿に、なれる……」
「……古代竜の力だ……」
おっさんは、驚いた。
「……人の姿に……?……」
バハムート「……この大きさでは、街に住めない……」
「……だから……」
バハムートの体が、光った。
眩い光。
住民たちが、見ている。
光が、収まる。
そこには――
一人の男性が立っていた。
50代前半。
銀髪。
赤い瞳。
筋肉質。
体に、傷跡がいくつもある。
古代竜の威厳。
でも――
どこか、優しい雰囲気。
住民たちが、驚く。
「おお!!」
「人になった!!」
「すごい!!」
おっさんも、驚いている。
「……すごいな……」
バハムートは、自分の手を見た。
「……久しぶりだ……」
「……この姿は……」
「……何百年ぶりか……」
おっさんは、バハムートに近づいた。
手を、差し出す。
「……改めて、よろしく……」
「……バハムート……」
バハムートは、おっさんの手を握った。
力強く。
「……ああ……」
「……よろしく、康太郎……」
二人は、握手した。
おっさんと、バハムート。
同年代の男性二人。
相棒。
住民たちが、拍手する。
「すごい!!」
「バハムート様、かっこいい!!」
セシリアも、微笑んでいる。
「……素敵ですね……」
希望が、バハムートに近づいた。
「おじさん?」
バハムートは、しゃがんで希望を見た。
優しい目。
「……ああ……」
「……俺は、バハムートだ……」
「……よろしくな、希望……」
希望は、微笑んだ。
「よろしく!」
光も、バハムートを見ている。
「あー、うー」
バハムートは、光の頭を撫でた。
「……いい子たちだ……」
おっさんは、バハムートに言った。
「……これなら、街に住める……」
「……家を、用意するぞ……」
バハムートは、頭を下げた。
「……ありがとう……」
「……世話になる……」
おっさんは、空を見上げた。
青い空。
美しい。
平和な空。
バハムートが、隣にいる。
強力な仲間。
(……希望の力……)
(……敵さえも、仲間にする……)
(……これが、本当の力なんだな……)
(……殺すんじゃなくて……)
(……共存する……)
(……これからも、そうしていこう……)
グリーンヘイブン。
ドラゴンとの戦い。
おっさんは、希望の力の真の姿を知った。
他人の魔力を取り込む力。
そして――
敵さえも仲間にする力。
バハムートが、仲間になった。
強力な味方。
街は、守られた。
平和が、戻ってきた。
おっさんの物語は、続く。
(次回:第65話「新たな日々」に続く)




