14.彼とよく似た少年
ダリスと離れて森に戻ったあと、彼は約束通りに森の入り口に村を作り何度か私の元を訪れた。
その度に、本当の別れが近づいているのを噛み締めながら残りわずかな大切な時間をすごす。
やがて、生を終えたダリスには城内の敷地に大層立派な王家の墓が建てられたのだけど、遺骨は森の入り口の村に密かに埋葬され、その上には碑とは言えないような岩が置かれた。
少しでも私のそばに。ダリスがそう願ってくれた結果なのだと思うと少しだけ心が温かくなるの。
それから数百年も過ぎたころ、真っ白な髪に真っ赤な瞳の少年が森に迷い込んできた。
その子は自らを生贄だという。
以前、ダリスとの子供へ神の力の一部を渡した事に対して、始まりの神より罰を受けた私は、人間の信仰心によって力を得なければならない存在となってしまっていたから……。私の力は時が立つに連れて弱まり、アドレンス王国全てを豊かに……とはいかなくなっていたのも事実。
それで、生贄をよこすなんてお門違いも良いところね。迷惑でしか無い。
その子の心を読むに、末の妹がトルニテアにばら撒いた生命体の被害もあり、それを鎮めてほしいという人間の意図があっての事のよう。
でも、私に未知の脅威からの庇護を求めているわけでは無い。人間は私が大地の力を吸い上げる魔物を作り上げた存在だと思っているようね。
野に魔物を放つのをやめて欲しい。
その為の生贄。
心が痛い。私が今までしてきた事はなんだったんだろう。身を削り大地を癒してきたと言うのに、彼らは私を悪だというのね。
視線を伏せて深く息を吐き出した。
悲観的になっても無駄ね。人間たちの元から離れたのは自分の意思だもの。それでも納得できる内容では無いけれど。
「人間は今も変わらずおかしなことをするのね」
見上げた視線の先には白い少年。彼ははまるでダリスの生写しのようで、白い髪と赤い瞳に整った容姿。彼の方が中性的で美しくあるけれど、その全てがダリスを連想させる。
白を持った故に厳しい環境に育ち、色を持った弟が生まれたことで、国民の為の生贄と……体よく捨てられた少年。
心は絶望で満たされているわけでもなく、ただ冷静に状況を考察している。
可能なら追い返したいけれど、帰る場所も無さそうで……仕方ないと諦め抱き寄せた。
「ようこそ。ダリスの子」
彼も、私たちの子供に違いないのだから。




