13.やってはいけないこと
決断してからの行動は早かった。どんなに忙しくても必ず会いに来てくれるダリスを待つ。
夜も更け、静けさに包まれた部屋の中で王都シルビナサリを去ることを告げる。
「急にごめんなさい」
「どうして……。誰かに酷い事でもされたのかい。それとも僕に不満が…….」
ダリスの心は乱れていて不安、焦燥、悲嘆、後悔などで私の言葉を受け入れられないよう。
「違うの。私が耐えられなかっただけなの。ダリスと一緒にいたい気持ちは変わらないわ。でも……」
此処にいては私自身を嫌いになってしまう。以前は無かった醜い感情に支配されて人間達と同じようになってしまいそうで……。
このままであれば、いずれその感情を大切な人に向けてしまうのでは無いかと恐ろしく感じるの。
「僕も……」
「それはダメ。貴方を必要としてる人がいる」
「リザだって必要とされてるよ。僕も息子も」
ダリスの懇願に心苦しさを感じる。
「それでも私は帰るわ。あの子は女神の子供。そう国中に広めてね。それに見合った力を与えるから」
そうすれば……あの子が誰に酷い事を言われる事も無いでしょう。絶対的な力さえあれば……。
私が居なくても。居なくなった方が……きっと自然な事なのだ。当然の形。それがトルニテアのあるべき姿。
ダリスが生きている少しの間だけと決めていたにも関わらず……わずかな時に耐えられなかった私が彼に出来る事……。
何か……私の使いもしない能力を切り分けて渡してしまえば? 支配する能力。制限をかける能力。属性を持たない神々の力。どの神々だってこんな事はしないだろうけど。
他の兄弟の先駆けになるのは初めてのことではない。悪い事。だけど……私はそれがしたいのだから。
「リザ……」
「ダリス」
多分、これは愛情だった。
貴方は私の伴侶に違いない。
「森の入り口に村を作って守人を置いて。そうしてくれたらいつまでだって貴方の事もあの子の子孫の事まで見守るから」
約束よ。
抱きしめると鼻孔をくすぐる彼の香りが愛おしい。
「必ず」
「ありがとう」
「リザ」
切ない気持ち。胸が締め付けられるような感覚。
「愛している。ずっと。だから、時間を作れたら会いに行ってもいい……よね?」
「えぇ。もちろん」
大人気なくボロボロと大粒の涙を溢すダリスの頭をそっと撫でた。




