86・広橋 里乃亜式 会得術
「零華! もう会得出来たの!?」
理奈が零華の元迄走って来て尋ねた。
「う、うん…この本に書いてあったとおりにしたらね…」
理奈の勢いに戸惑いながらも、零華は魔法書を見せながら説明する。すると続々と他の生徒も集まってきた。
「マジかよ零華。もう魔法使えるようになったのか!?」
「早すぎ…私なんてまだ全然だめなのに…」
様々な声が零華にかかる。
『…本のとおりにしただけなんだけどね…』
苦笑しながら零華は、心の中で呟く。すると理奈が…。
「ねえ零華。良かったらコツを教えてくれない?」
「えっ? コツ? 僕は構わないけど…兵士の人達は良いの…?」
と、皆零華の所に来てしまった為、指導を行っていた兵士は、ただ茫然と立ち尽くしている。悲しい…。
「…兵士の人達には悪いけど、零華なら上手く教えられそうな気がするから…」
「いやでもね…」
理奈の言葉に零華は言葉を濁らせながら、ユリアンの方を見た。
「……」
するとユリアンは、苦笑いしながら頷いた。
「…ユリアンさんから許可を貰ったよ。でも僕のは水属性だから、皆のとは違うから、会得出来るか分からないからね?」
零華がそう伝えると、A組一行は頷いた。
※ ※
零華が皆なら初歩的魔法の事を聞くと、属性が違う以外同じ様な魔法であったが、兵士の説明と本の説明が違かった為か、零華と違い理解しきれていなかった。
そこで零華は本に書いてあったイメージの仕方を教えると、零華程の速さではないが、理奈を始めとする何名かの生徒が会得に成功した。
その様子にユリアンや本来の指導役の兵士達も驚いていた。
「零華! 零華のおかけだよ!」
左手に風の球体を出現させた理奈が、感謝の言葉を述べる。
「僕は何も…ただ何となく母さんの真似をしただけだよ…母さんもイメージが大事って、よく言っていたし…」
自分に様々な事を教えてくれた母・里乃亜。零華は皆にコツを教える際、里乃亜が自分に教えてくれていた時の事を思い出しながら教えたのであった。
※ ※
やがて訓練が終わり、皆宿舎へと帰る事になった。帰る前に零華は、魔法書をユリアンに返す為にユリアンの所へと理奈と共に向かった。
「ユリアンさん。ありがとうございました」
そう言って零華は、魔法書をユリアンに差し出した。
「いや。それはもうお前の物だ。お前が好きにすれば良い。陛下からも許可は貰っている」
「分かりました。それにしてもこの本、凄く教えやすく書かれていますけど、先代総隊長さんって指導が上手かったんですね?」
母と匹敵するくらい上手く教えられる様に書いた先代総隊長に、零華はとても感心した。
「さあな…俺は会った事が無いから知らないけどな」
「何て名前の人なんですか?」
理奈が尋ねた。
「リノア・エルトリオン」
「…えっ?」
零華が戸惑った様な声を上げた。
「どうした?」
「あっ、いえ…僕の母親も里乃亜って名前なんで…母は異国の人だったんで、僕も母親に似た顔立ちをしているんです」
「…そうか…」
「まさか零華のお母さんと先代総隊長さんが同じ名前なんて、凄い偶然だね」
理奈も驚いた様に言った。
「…まあそういう事もあるだろ。ホラ早く行け、皆もう行ったぞ!」
ユリアンに言われて二人が振り返ると、既に他の皆は居なくなっていた。
「ヤバい!夕ご飯に遅れる! 理奈、行こう!」
「うん!」
零華と理奈は慌てて皆の後を追った。残されたユリアンが呟いた。
「…零華の母親は、先代総隊長と同じ名前の異国の人か…まさかな…」
ユリアンは以前零華と会った際に、零華の名字『広橋』が気になっていた。更には零華の母親は先代総隊長と同じ名前であった。
「此れは偶然か…一応親父に報告しておくか…」
ユリアンは総隊長である自分の父へと、報告に向かうのであった。
零華の母親は里乃亜…先代総隊長もリノア…。
実はこの作品、今度のコンテストに出そうと思うのですが、インスパイアの為に悩んでおるんですわぁ。皆さん良かったら何か意見をお願いします。
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