84・魔法訓練
少しゲームにはまってもうた!
水の都の(・)やすらぎ(パーチェ)での仕事の翌日、2―A三十名は訓練場に集められていた。
「なあ零華。お前昨日の昼から夕方まで、何処に行ってたんだ?」
孝明が零華に、昨日の外出の事を尋ねた。
「えっと…街に出たら道に迷っちゃって…」
「何だよソレ…」
零華の理由を聞いて、孝明は苦笑しながら呆れた。勿論本当はバイトしていたのだが、ある理由で零華はそれを話すつもりはなかった。
やがてユリアンが、数名の兵士を連れてやって来た。
「皆揃っているな!」
ユリアンがA組一行を見回しながら言った。
「ユリアンさん、今日は何をやるんですか?」
理奈が尋ねた。
「今日の訓練は、先日調べたお前達の属性魔法の訓練だ!」
ユリアンの言葉に、A組一行からは所々から沸き立つ声が上がった。
「ただ俺は魔法は苦手だから、今回は部下に任せる。この部下達はそれぞれ属性を所持しているから、それぞれ自分の属性と同じ兵士から指導を受ける様に!」
そうA組一行に告げるユリアン。連れて来た部下の兵士は三人であった。三人はそれぞれバラバラの方へと移動する。
「火属性の人はこっちに来てくれ!」
「風属性はこっちに!」
「土属性はこっちだ!」
兵士達がそれぞれ呼びかけると、A組の生徒達は自分の属性の兵士の元へと向かう。只一人除いて…。
「ユリアンさん。僕の属性魔法の指導は?」
それは零華だった。零華の属性は『水』だった為、先程の三人全員に当てはまらなかった。
「…この前も言ったが、水属性は先代の総隊長だけだったんだ。だから指導を担当出来る兵士は居ないんだ」
と、申し訳なさそうに零華に告げるユリアン。
「…じゃあ僕はどうすれば良いんですか?」
指導を行える兵士が居ないという事は、魔法が使えない事になる為、皆を元の世界に帰した零華にとって、魔法が使えないというのは圧倒的に不利な話であった。
「心配するな。幸いにもこれがあった」
そう言って差し出したのは、古びた本であった。
「何ですかこれは?」
「先代総隊長が残した、水属性魔法の手書きの本だ。先代総隊長が去る前に、エグ・マリン王国騎士団に残しておいてくれたんだが、他に使い手が居なくてな、資料庫で埃を被っていたのを見つけたんだ。零華、お前にやろう。此れはお前専用の魔法書だ」
ユリアンから受け取って、中身を確認すると、確かに手書きで様々な文章や絵が記載されていた。
「ありがとうございます。とりあえず本を見て調べてみますね!」
と、零華は笑顔で告げた。その可愛らしい笑顔に、ユリアンは一瞬ドキっとしたが、すぐに何でもない様な表情を浮かべたのであった。
※ ※
風魔法の指導を受けた理奈は、兵士から教えられたやり方で、魔法を練習していた。しかし…
「…駄目だ…出ないよ…」
理奈がガックリした様子を見せる。兵士の話では掌に風を集める様なイメージを行う事によって、初歩的な風魔法が出来るというのだが、理奈は十分程やっているが、全く出来なかった。
「……」
周りを見回すと、同じ風魔法の属性の生徒だけではなく、他の属性の生徒も魔法を発動出来ていない様であった。
「そういえば零華は…あっ!」
一人だけ水属性の為、指導する兵士が居ない零華はどうしたのかと思い探すと、訓練場の隅で本を見ている零華の姿があった。
「もうっ! 一人だけ呑気の本なんか見て!」
呆れて怒った様な声を上げる理奈。すると本を見ていた零華が、徐に右手を軽く上げた。すると掌に…水の塊の様な物が現れた。
「ええっ!!!!」
零華の掌に水が現れた事に、理奈は絶叫してしまった。
零華、誰よりも早く会得してもうた…。
感想・ブックマーク登録・レビュー・ポイント評価・質問等ありましたら、是非ともどうぞ♪




