58・宿泊施設に学生が泊って、其処に枕があれば、やる事は一つ!
浴場を出る白い寝間着に身を包んだ男子一行。女子はまだ入っているのか、出てくる様子も無く、仕方なく男子だけ先に部屋に戻る事にした。といっても、女子は別の部屋の為に待つ理由は無いのだが…。
廊下を歩いていると、トイレらしき入り口に差し掛かった。
「あ、僕トイレに行ってから、戻るね」
零華がトイレを見て言った。
「ああ。俺達先に戻ってるぞ」
修兵の言葉を聞くと、零華はそそくさとトイレに向かった。
零華を除いた十四人の男子は、部屋へと戻った。
「さてと皆…」
部屋に戻ると修兵が、十三人の男子達を見回しながら話し始めた。
「これから俺達は、何をしようと思う?」
修兵の言葉に、男子達は考えるが、その言葉の意味は分からない。
「分かんねぇのかよ…此れだよ!」
そう言って修兵が手に取ったのは、ベッドにある枕であった。
「!!!」
それを見て即座に察した男子達…。
※ ※
その頃零華は、トイレを終えて部屋へと向かっていた。
「やれやれ…こっちでもナンパされてしまった」
零華は溜息交じりに呟いた。トイレから出た零華は、トイレに入ろうとした兵士二人に呼び止められ、ナンパされたのであった。
零華の美貌から美少女と勘違いしている兵士に、零華は『僕は男ですよ』とい告げると、兵士は固まってしまった為、そのまま放置してきてしまった。
零華にとっては性別を間違われる事も、同性からナンパされる事も何時もの事だが、まさか異世界に来ても、地球の日本と同じ扱いをされるとは思わなかった。
「そもそも僕は男風呂に入っていたのに…あ、でもあの兵士の人達、まだ軍服姿だったから、僕がお風呂に入っていた時に、僕の事を見てないのかも…」
そんな事を呟きながら、零華は宿泊している部屋の前へと戻ってきた。扉を開けようとノブに手を掛けた時…
「! 何か中が騒がしいな…」
扉の向こうから悲鳴か歓声の様な声が聞こえてきた。何やら嫌な予感をしながら、扉をゆっくりと開ける零華。すると…
ヒュン!
「んにゃ!?」
突然白い塊が飛んできて、零華は咄嗟にしゃがんで避けた。何事かと思い部屋の中を見ると…枕が空を飛んでいた。
「おっ! 零華戻って来たか!」
両手に枕を持って、ベッドの上に立っている修兵が言った。
「修兵…何やってるの…?」
「見りゃ分かるだろ? 枕投げだよ」
「いや、それは分かるよ! 何で枕投げ?」
そうツッコミながら零華は、部屋の中を見回した。自分を除いた男子十四人全員が参戦している。
「そりゃ宿泊施設に来た学生は、枕投げをするのは宿命だろ?」
「そんな宿命、聞いた事ないよ!? 第一僕達は修学…にゃ!?」
話している零華に、再び枕が飛んでくる。
「くそっ! すばしっこいな零華は!」
と、尊が枕を持って叫んだ。
「何するんだよ尊!?」
「言い訳無用だ!」
零華が文句を言うが、尊は取り付く島もない。
「僕は参加する気は無…痛た!?」
後ろから飛んできた枕が、零華の後頭部に命中した。
「良し! 零華に命中した!」
そう叫んだのは来季。どうやら来季が投げた様だ。
「…そう…そんなに相手にして欲しいなら、全員相手にしてやる!」
そう叫ぶと零華は、落ちている枕を持って、無差別に投げ始めた。零華以外の男子は零華を危険視し、全員で手を組んで零華を撃破しようと試みたが、小柄で素早い零華には当たらず、零華は素早い身のこなしで次々と枕を男子達に命中させていく。
零華は右目が見えない為、右側から狙うがそれでも当たらない。そもそも昼間の戦いを見ていれば、零華が右側に警戒をしているのは理解している筈だが…。
そして中には零華を狙ったが避けられた挙句、味方に命中して仲間割れを起こしたりもした。
そして戦いがヒートアップした時だった。
「うるさいぞお前ら! 静かにしろ!」
騒ぎを聞きつけたのか、軍団長であるユリアンが怒鳴り込んできた為、枕投げ合戦は終戦を迎えたのであった。
枕投げ終了! 中学生くらいなら、まだやるよね…?
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