39・そして誰もいなくなった
メンバーから一人離れた零華は、泣いている女の子の所へと行った。
「お嬢ちゃんどうしたの? 迷子?」
出来るだけ怖がらせない様に、しゃがみながら穏やかな口調で声をかけると、女の子は目に涙を浮かべて顔を上げた。
「ママと…ママと逸れちゃったの…」
女の子はか弱そうな声で、零華に告げた。
「そっか…じゃあ僕が一緒に探してあげる!」
そう零華が告げると、女の子がキョトンとした顔で、零華の顔を見つめる。
『…やっぱり怪しいよね…いきなりこんな事、右目に布を巻いている人が言うなんて…』
そう考えた時だった…。
「うん♪ ありがとう! お姉ちゃん(・・・)!」
「……ははぁ…」
零華は失笑するしかなかった。
やはり異世界でも、零華の顔立ちは女の子にしか見えない様だ…。
一方その頃…
「零華の奴、何処まで行ったんだよ!?」
運河沿いのベンチが在る場所で待っている修兵が、大声で文句を上げる。
「どっかでナンパでもされてるんちゃう? あの顔やったら、十m歩くのにナンパされまくって、数分はかかるで?」
凛がベンチに寄り掛かりながら、修兵に言った。
「それもあるよね」
大輔が同意する。太一と直樹も同意する様に頷いた。
そんな中、灯里と共に別のベンチに座る理奈は、心配する様に辺りを見回している。
「どうしたの理奈?」
灯里が気になって声をかける。
「あ、うん…零華、大丈夫かな?」
「零華も理奈程じゃないけど、結構強いんでしょ? 大丈夫だよ!」
そう灯里が元気付ける様に声をかけるが、不意に理奈が立ち上がる。
「理奈?」
「ごめん灯里。私ちょっと探してくる」
そう言うと理奈は、零華が歩いて行った方へと向かう。
「あっ、ちょっと! 修兵! 理奈に付いて行って!」
「!」
灯里に指示されて、修兵は慌てて理奈の後を追う。
「おい待てよ理奈! 俺も一緒に行くから!」
そう言って修兵が付いて行こうとした時…
ガシャガシャガシャ!!!
突然、金属を振る様な音が辺りに響き渡った。かと思った瞬間、武装した兵士達が理奈と修兵の前に立ち塞がった。
「この街の兵士!?」
先程の兵士と同じ武装をしていた為、この兵士の集団がこの街の兵士だと、理奈は直ぐに分かった。
「大人しくしろ!」
兵士が厳しい声を上げる。
「や、やべぇ! 悪い理奈! 俺は灯里を連れて逃げる!」
そう叫んだ修兵は、踵を反して振り返るが…
「あっ!?」
既に灯里、太一、大輔、凛、直樹は、同じ武装の兵士達に取り囲まれていた。そうこうしている内に、兵士は理奈を拘束し、別の兵士が剣を抜いて修兵に歩み寄ってくる。
「くっ…」
悔しそうな声を漏らす修兵。そして…
「逃げろ零華ァァァ!!!」
街中に響き渡るのではないかと思う程の声を、修兵は上げた。
※ ※
「ありがとうお姉ちゃん!」
母親に連れられた女の子から、お礼の声をかけられ手を振られ、零華は苦笑い気味に応じて別れた。
あの後少し街中を探索した処、直ぐに母親と会えた為、零華は女の子を母親に引き渡す事が出来た。
「さてと…早く合流しないとね」
そう呟いて零華は、駆けだそうとした。
「逃げろ零華ァァァ!!!」
と、突如街中に絶叫が響き渡った。そしてその声に零華は、聞き覚えがあった。
「ッッ、修兵!?」
修兵に何かあった。そしてそれは理奈にも何かあったと考えて、零華は合流場所に向かって必死に走った。
途中何人かが零華に驚いた表情を浮かべたが、零華は構わずに走った。そして…
「ハア…ハア…」
息を切らせながら零華が辿り着いた場所、其処はあの合流場所であった。そして…その場所には誰も居なかった。
そしてこれは後に分かった事だが、この時点で捕まっていない生徒は…零華一人であった。
残り一人…。
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