31・空に浮かぶ物 1
再び零華視点ですわ。
「……」
木箱が置かれている路地から、小箱越しに水路沿いの道を見ている零華、その視線の先には数人の兵士が居る。
零華は気付かれない様に、その場から立ち去った。
暫く路地を歩いていると、幾つかの木箱が置かれた行き止まりの路地に差し掛かった。
「んんっ!」
零華は小さく咳払いをする。
「…一九六四年のオリンピックは?」
木箱の奥から声がする。
「東京オリンピック」
零華が答えると、木箱の奥から修兵が顔を出した。どうやら合言葉だった様だ。修兵が木箱を退けると、その奥には理奈と灯里も居た。
「どうだった?」
「駄目…あっちの道にも、兵士が居るよ」
先程零華が来た道を示しながら説明する。
「どうしよう。このままじゃ出口にも辿り着けないし、皆にも合流出来ないよ…もしかしたら、捕まっちゃうかもしれない…」
灯里が弱気な事を言う。
「大丈夫だって、幸いこの街は迷路みたいだから、そう簡単には見つからないよ」
理奈が元気づける様に言うが、零華には理奈にも不安の表情がある事が感じられた。
「修兵…皆には連絡出来た?」
零華が尋ねた。零華が偵察に出ている間、修兵に何人かに連絡を頼んでいたのであった。
「いいや…孝明と一と太一に連絡したけど…アイツ等出ないんだよ」
修兵がスマホを見ながら言った。
「…逃げていて、気づかないのかも知れない」
零華はそう言ったが、実際には最悪の事を考えていた…既に捕まったか…或いは殺されたか…という…。
「とりあえず、今皆が持っている荷物を確認しておこう。もしかしたら、何か役に立つ物があるかも」
零華の提案に賛同し、四人はそれぞれ持ってきたカバンを開ける。
「まずは僕から言うね」
最初は提案者の零華であった。
「僕が持っているのは、教科書やノート、それに朝慌てて持ってきた菓子パンの残りと、間違って持ってきた音楽プレーヤー、それにスマホと…あと…それだけ」
誤ってぬいぐるみの事まで言おうとしたが、慌てて止めた。
「おい。何か最後の終わり、不自然じゃなかったか?」
修兵が突っ込んで来たが、零華は無視をし、次に理奈を指名する。
「私は教科書とノートとお弁当箱くらいかな…まあ普通だけど」
次に灯里。
「私も理奈と一緒だよ。まあ大体はこんな感じだけど…っで、修兵は?」
灯里が尋ねる。
「俺は教科書は置き勉しているから、ゲームと音楽プレーヤーくらいか」
「何の為にカバンを持ってきているんだよ」
零華がツッコミを入れる。
「あっ! これもあった!」
そう言って取り出したのは…
「グラビぶへぇ!?」
グラビア雑誌を取り出した途端、灯里から軽いパンチを受ける。
「何て物を持ってるの!?」
「学校で拾ったんだよ!」
「まだ持ってたのか…」
零華が呆れる。
「…結局現状況じゃ、あまり役に立ちそうなのは、何も無いね」
零華の言葉に、三人は無言で頷く。
「とりあえず、他の皆と合流出来ればな…」
そう言って建物の間から見える、空を見上げた時であった…円盤の様な物が見えた。
「UFО!?」
零華が驚いて声を上げると、他の三人も空を見上げた。
「違うよあれは…ドローン?」
理奈が言った。確かによく見てみると、それはドローンであった。
「…直樹のか!?」
零華は異変前に、直樹がドローンを持っていたのを思い出した。
「じゃあアレは直樹のドローンか!?」
修兵が叫ぶように言った。
「…ドローンにはカメラがある…そうだ!」
零華は何かを思いつき、スマホを操作し始めた。
ドローンを登場させようと思ったのは、ある映画のノベライズで、高校生がドローンを使っていたのを見て、思いついたんですわ。
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