21・最後の日常 2
最後の日常は、複数回に分けますわ。
此処で追記の話、19・『悪夢と謎のメールと謎のノート』において、修兵が参加した時に、出席番号を加えましたわ。
HRが終わって一時間目が始まったが、零華は眠気に襲われていた。
『ふわぁ…やっぱり睡眠時間が短かったから…眠い…』
そう考えると同時に、今日の一時間目の授業の内容は、予測した予習で大丈夫だった為、居眠りしようという考えに辿り着き、顔を伏せていた。しかし…
「広橋君! 起きなさい!」
担当の女性教師は、居眠りを許さずに、零華を叩き起こそうとした。
「広橋君!!!」
「……」
大声で言う教師に、零華は顔を少しだけ上げて見つめた。妖艶とも言える美少女な顔立ちに、女性教師は息を飲むが、何とか耐える。そんな教師に零華は、悪戯心の様な物が芽生えた。
「…ニコッ…」
小さく微笑む零華。
「!!!」
眠たそうな表情で浮かべた、美少女にしか見えない美少年の微笑みの笑顔は、女性教師に抜群の威力を見せた。
「ま、まあ良いで…しょう…次からは…ちゃんと授業を…受けなさい…」
それだけ言うと顔を赤くした女性教師は、教壇の方へと歩いて行く。クラス中からは失笑の声が漏れる。
「あざといな、お前…」
前の席の修兵からは、呆れる口調でそう言われ、離れた席の理奈は、溜め息を吐いていた。
「女性教師には、此れが一番効くからね…男性教師には効かないけどね…」
それだけ言うと零華は、再び夢の世界へと旅立った。
※ ※
「お前、あざとすぎだろ」
一時間目の授業が終わった後、零華の所に修兵、一、孝明、太一がやって来た。
「どうせなら、この顔を利用しようと考えてね…眠たかったのは事実だから…」
そう零華は返す。
「…お前は成績優秀なだけじゃなく、こういう事にも頭の回転が良いな…」
呆れる一。すると太一がスマホを取り出した。
「そういえば零華、あれ見た?」
「あれって?」
零華はてっきり、夜中の謎のイタメールの事だと思ったが違った。
「ルクレツィアの動画だよ! 最新作がアップされていたんだ」
「ああ、そっちか…」
他人事の様に軽く反応する零華。
「何だよ反応薄いな!」
修兵が嚙みついた。
「別に薄い訳じゃないさ。ただ夜中のメールの事だと思ったんだよ」
「イタメールよりルクレツィアだろ。マジで歌上手過ぎだろ」
孝明が反論する。
「まあ確かに、カヴァーソングを歌う歌唱力は凄いね。結構再生回数稼いでるし」
「実はさ…このルクレツィアって零華じゃないかって話があったんだ。零華去年の文化祭で、同じ名前のメイドをやったでしょ?」
「確かにやったけど…僕は女装はしたくないんだから、そう考えたら別人だろ?」
さも他人事の様に冷静に言う零華。動画のルクレツィアも零華であるが、それを知られる訳もいかなく、他人事の様に振る舞っていた。
『…僕が女装嫌いって事で、自主的に女装をしている訳がないという固定観念があるから、ルクレツィア=僕にならないんだよな…』
そう考えている零華。
何時の間にか、零華以外がルクレツィアの話題になっていた為、零華はスマホを見てみる。すると先程見ていなかったメールを思い出し、確認してみた。
参加者 男子3番・大崎 一、12番・藤本 太一、13番・向井 孝明、女子14番・南原 灯里 残り25名
参加者 男子2番・井上 圭吾、6番・下村 疾風、女子12番・中島 千恵美 15番・浜崎 凛 残り21名
更に八名もの参加者を示すメールの内容だった。
「えっ!? 皆も返信したの!?」
驚いて皆に話しかける零華。
「ああそうだな…俺達の中で返信していないのは、零華だけだぞ?」
孝明がそう返す。
「いや、普通返さないでしょ…変なのだったら、どうするんだ?」
「別に何も起きなかったけど…? どうせクラスの誰かが、冗談で送ったメールじゃない?」
太一が自分のスマホを見せながら言う。
「全く…僕は絶対送らないからね」
そう話している内に、二時間目の授業のチャイムが鳴った。
ボン! ボン!
体育館の床に、バスケットボールが弾む。
コート内部では、男子と女子が分かれて、更にそれぞれ二チーム(七対六)ずつに分かれて試合を行っている。
「孝明、パス!」
圭吾からのパスを受け取る孝明、そのままドリブルをしてゴールに向かうが、その先でブロックされている。するとノーマークの大作の姿が見えた。
「大作、パス!」
孝明は大作のパスをする。そのフォームは完璧であったが、孝明と大作の間に、小さな影が割り込んだ。
「!?」
その影はボールを受け取って、反対のゴールへと向かっていき、そしてそのままシュートする。
ガコンッ!!!
ボールは見事にシュートを決めた。
「よっし!!!」
その小さな影…零華はガッツポーズをする。
「くっそ! また零華に得点取られた」
孝明が悔しそうに言う。
「別に良いじゃないか。孝明はバスケ部なんだから、トーシロの僕にお膳立てしてよ」
「ってか俺達のチームの方が、人数が少ないぞ!」
パスを奪われた大作が割り込んだ。
「だってこのクラスは、男子は十五人しか居ないから、片方は七人、もう片方は六人になるんだから」
「その結果、お前達の方が多いぞ!」
孝明の言う通り、零華は七人のチームに所属しており、孝明と大作は六人のチームの所属である。
「孝明は背が高いし、大作は大柄じゃないか。体格ならそっちの方が有利だ」
「まあ確かに…そっちにはチビが二人も居るしな」
孝明が言うのは、背の低い太一と、更に一番低い零華である。
「でも小さいお陰で、小回りの利く動きが出来るよ!」
得意げな表情で零華は言う。
「…それは零華だからだと思うよ…」
小さめな声で太一が呟いた。
意外にも動きが速い、零華でしたわ。
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