起動。
「いくぞルナァ!『破滅の神雷』!」
「お主が神の名をかたる魔術を使うとは笑えるのう!そうれ『反魂』」
私が雷属性上位魔術を遠慮なくぶっ放し、ルナがそれを跳ね返す。魔力を纏わせた手でそれを掴み取り、槍の形に束ねて投げ返した。この間大体三秒くらい。まあ、一騒ぎ起こすにはこのくらいの暴れっぷりの方がちょうどいいんじゃあないかな。
「おうおう、投げ返してくるとは。なあ、もう少しお互い本気で行かぬか? つまらぬぞ」
「いや、別にガチでやるのが目的じゃないでしょっ!」
「お主が遊びこそ全力でやれと言っておったではないか!じゃから少しくらい付き合わぬか! 『奔流』!」
アイツ、魔法使って来た。生命体の魂を束ねてエネルギーに変えた極太レーザーを放ってくる。しょうがない、ある程度付き合ってあげるか。
「ああもう、次の一撃だけだぞ!」
とりあえず今の奔流は華麗に回避。今のは流石に本気で撃ってきていないから大丈夫。それはそれとして次の一撃を撃つ準備をしなければ。ルナもまた魔法を使った魔術を撃ってくるだろうし、こっちも同じ性質の物を撃つべきだろう。
「行くぞ!『回天』!」
「なるほど、そう来るかお主なら! 『散華』!」
その時、狭間が軋みをあげ世界としての安定性が一瞬失われた。廻り回る空間の渦と幾万の魂で形創られた白い花がぶつかり合う。アイツの放つ放出系の魔法は相殺すると魂の怨嗟の叫びが常に響いてうるさいのが難点だ。
「思ったけど、ここまで来ると技名叫ぶのはナンセンスじゃないかい? でやぁ!」
「まあ、若い衆なら兎も角儂らは良い年もいい歳。完全に老人じゃからの。おりゃあ!」
魔力塊を剣にして打ち合う。これだけでもソニックムーブが巻き起こりまくっているが、これくらいは神代ではザラなので特段気にするほどのことではない。
その後しばらく低速戦闘を繰り広げていたが、これでも奴らは引っぱり出せないようだ。仕方ないからいっそその基地を叩いてやろうか。
「もう終わりか? たかが数分じゃぞ・・・」
「また今度構うから許して。ほら、もうすぐ大ボスがお出ましだからね」
「しょうがないのう。追加で酒もおごるのじゃぞ」
そうしてお互いの鉾だけは一旦収めたところで彼女たちの登場だ。ダンダンダンダンといかにもロボットもののような音楽が聞こえそうな感じで私たちの下方からせりあがってくる煌々と燃え盛る焔の鉄巨人。ご丁寧に腕組みまでしているものだから正直感無量といったところだ。
「アレはバスタービームとか撃てるんじゃろうか? もしそうなら見てみたいのう・・・」
「ああ、全くだよ。うん、本当に全くだよ・・・。正直強奪して乗り込みたいくらいだ」
私たちだって昔はアリスと共に自分の魔力で動かせる魔導巨兵を作ろうとしたものだ。しかし、どれも私達の力に耐えきれずに乗って魔力を注いだ時点で爆発したり制御を離れて暴走したりしていたので、結局実現することはできなかった。そして、その諦めたはずの夢が今私の前に堂々と存在している。ああ、涙出てきた。早いところサリアを引きずりだして乗り込もう!
『そこの腐れ姉と黄泉老人! 散々我の根城を荒らしておいて何を泣いているのだ!』
「だれが腐れ姉だ! 私はお前みたいな妹は知らないぞ!」
「そこのグレースに関しては何も言わぬが儂までどうこう言う必要はないじゃろ!」
『そのような事はどうでもよい。疾くこの場より消えてくれるがよいと思います!』
「「は?」」
言葉遣いがおかしいぞ?何故命令形と敬語が混ざっているんだ。サリアと人格がミックスされちゃったりしたのだろうか? だとしたら余計にバラして解析して自分用の物を作ってみたい。
『おい、余計に奴ら目を輝かせておらぬか?』
『そりゃあ、あの人異世界産のロボアニメとかいうのにハマってましたから』
「人の趣味を勝手にバラすなよ・・・」
「というか、捕らえられてた割には仲良さそうじゃのう」
うん。自分が掴まってデカい機械のコアパーツにされているのにあのノリで接することができるのはすごいと思う。私だったら速効で殺しにかかってる。
「お主の考えは野蛮じゃの。まあ、儂もそうするが」
「というわけでサリアとなんか知らん妹に告ぐ! そのロボ私によこせ!」
「ズルいぞお主! 儂も欲しいに決まっておるじゃろう!」
『全砲門開放! ぶっ放せサリア!』『ラジャー!』
「「あっ」」
ヤバい、二人で騒ぎ過ぎた。とりあえず時を止めて回避したけどあのカノン砲、サリアの魔法をそのまま撃ち出してくるとは。あの技術力はちょっとこの世に存在しちゃいけないレベルだけど、ロマンに溢れてるからまあいいか。あとでアリスに渡せばいい感じに量産してくれそうだなぁ。また近隣諸国とのパワーバランスが狂った事になりそうだけどそこはアル君とサイサリスちゃんにぶん投げればいっか。
sideルナ
「いきなり撃ってきおったぞアヤツら! しかも魔法じゃ! アレ儂らも乗ればできるのか!?」
「多分ね! とりあえずこれ以上は各方面に怒られそうだから場所を変えよう!」
狭間だった景色がグレースの国の首都へと切り替わる。見た感じ生命の反応は一切無い、恐らく避難に成功したのじゃろう。これならば遠慮なく壊せるがはて、何やら懐かしい魂魄を感じるの。これがあっておるなら・・・。いや、今は気にしておる場合じゃないのう。見知らぬ魂魄もまた、この地に舞い降りようとしておる。ほぼ間違いなく昔の儂らのやらかしとも、違うような。うむ、何も分からんのう。
「上からくるぞ! 避けるのじゃ!」
「合点承知!」
儂は霊体化、アヤツは瞬間移動で無数に分かれて降り注ぐ燐光を回避。当然地上の町は焼け野原になる。美しかった街並みはあっという間に焦土と化し、王宮すら粉塵に。離宮も例外なく燃え盛っておるのう。そしてあの巨人も中々どうして防御性能が高い。先程から魔術を結構本気で叩き込んでいるのじゃが、全く装甲に届いておらぬ。 どうもサリアめの魔法を展開し、装甲に届く前に焼き消しておるようじゃ。
「どうする? 魔法であの炎が出る前に戻すか?」
「それはズルくないかい? 一応徹甲タイプも試してみてからにしよう」
貫通力を高めた雷撃をグレースが放ち、儂は風を束ねた槍を放つ。多少は進んだがやはり決定打にはならぬようじゃ。ならばやはり魔法には魔法をといきたいのじゃが、ただ放つだけならばやはり無駄撃ちに終わるじゃろう。・・・ようやく来たか、なればここは押し付けて儂らは退散といくかの。
「グレース、わかっておるな? もうじき撤退するぞ」
「えー・・・。せめて引きずり出してからでもいいでしょ?」
sideサリア
『どうしますセレナさん。デカいの一発ぶちかましますか?』
「炎剣は使うな。外部装甲にお主の魔法を纏わせるだけでもキツイというのに、それを使えば両腕部の回線が焼き切れる。今まで通り熱線で牽制だ」
そうはいっても、守りばかりだと意味が無い。クレアさんが言ってた燃える王都とやらはこの事で間違いないのだが、夢で言ってた女とやらはどうしたのだろうか。まあいい、ひとまず炎剣を・・・。
「だからそれは使うなと言っているだろう! まだこれ『スルトです』はろくに調整もできていないのだ。それなのに最大火力を引き出そうとするなど愚の骨頂だ!」
『ちぇっ』
自己崩壊しても困るし、やめておこう。その代わりにビットを背部から数門射出。オールレンジ攻撃を仕掛けるが、全機一瞬で破壊。ビットの砕け方を見るに恐らくグレースさんが時を止めて殴り壊したのだろう。相変わらずおかしい人だ。セレナさんは心なしか嬉しそうな声で恨み言を言っているが、そんなに楽しそうに言われても説得力が微塵もない。
「まさかビットがあのような一瞬で墜ちるとは! ならばコレはどうだ。サリア!」
『腹部主砲、エネルギー充填率100%。何時でも行けます!』
「撃てェ!」
閃光一閃。装甲を溶融させながら光の奔流はグレースさんとルナさんの二人を巻き込んで地平の彼方へと消えていった。とはいえ、魔力反応自体は未だ健在のため仕留めれたという事は無いようだ。
・・・待て、何かがおかしい。上空に魔力反応? しかも今までに一回も感じた事のない。
『・・・っ!?』「障壁展開!」
急に上空から降り注いできた無数の光柱。とっさに全身に魔法を纏い攻撃を防御するが一瞬遅く、
腕部と胴体に損傷を受けるってレベルの損傷じゃあない!コアパーツ露出してるじゃん!
『コックピットは無事ですか?』
「ああ、外がハッキリ見える程度には装甲がやられているが操作系は十分生きている。だが、頭部に攻撃が来たら我は危ういだろうな」
そういえばコックピットは首の下あたりにあったっけ。それなら胸部も中々やられてそうだ。コアもそこから露出しているのだろう。さて、第二射が来る様子は無いが一旦引くべきだろうか?降り方とかわかんないし。
『すいません、コレどうやって降りればいいんです?』
「・・・設計ミスだな。そもそもお前が意識を取り戻すとか想定外だ。諦めて機体と運命を共にするがいい。我は一旦脱出する。さらばだ!」
『ちょっと!?』
コックピットブロックが変形し、飛行ユニットになりそのままセレナの野郎はどこかに飛び去って行った。と思いきやグレースさんが機首をぶん殴って撃墜していた。真正面から殴っていたので、完全に潰れてしまっているがセレナさんは回収しているようだ。子猫のように襟を片手で吊り下げていたので首が締まらないか心配だ。
「よしコレで鹵獲成功だ!」
「うむ、じゃがあの光柱の発射元を駆逐せん限りはうかうか解析もできぬようじゃ」
能天気なノリの二人だが、あのレーザーの威力は中々に凄まじいものだった。第二射は防げるように既に魔法をバリア代わりに展開しているが、主要な回路がかなりボロボロになっており長くは持ちそうにない。セレナさんから私に操縦権は移っているが、火器管制システムなどは今しがたぶっ壊されたコックピットブロックに搭載されているため、高高度狙撃を自力で行わなければならない。レーダーは生きているため感知システムも全開にしているが、一向に反応なし。熱源レーダーも反応しない。
「аーーーー」
『光の・・・巨人?』
低いバリトンボイスで何やら歌のようなものを歌いながら天から舞い降りてくる巨人型の光輝くシルエット。魔力の波形は今まで見た事のない物を示しており明らかに相手が尋常の存在では無い事を表している。グレースさんとルナさんは時を巻き戻して修復した飛行ユニットを弄っており、あちらには何の興味も示していない様子。目の前の巨影に目や鼻などの人間的なパーツは存在せず、無貌。背には天使の物ともまた違う翼が二対。自我が存在するかどうかすら怪しい存在だ。でもまあ、敵ならば倒すしかない・・・のだが、機体はさっきの一撃で結構ダメージを負っているためどこまで戦えるか。それに、私の魔力で全機能を動かしているためできる限り最短で終わらせるしかないらしい。
「サリア、聞こえるかい?」
『どうしたんですかグレースさん。手伝ってくださるんですか?」
「いや、そうではない。アヤツは傀儡、本体は別の場所におる。儂らはそちらに向かう、お主は早うそやつを蹴散らし、魔族領に向かうが良い!」
『ルナさん! ちょっと!?』
二人は消え、私とその辺の瓦礫に縄で縛られて放置されているセレナさんと目の前の巨人だけが残された。放たれている光線は障壁で防げているが、攻撃手段である腹部や腕部の砲門は私の魔力に耐えきれずに融解しかけており、後二発撃てればいい方だ。
『こうなればヤケだ! 拳を喰らえなんか変な奴!』
「GYAAAAAAAAAAAAA!」
あっ、普通に効いている。相手にも質量はあり、ちゃんと殴れば吹き飛び貫手で腹を貫けばダメージを受けている。しかし、動かすたびに機体の回路が次々と断線している。やはり負荷が大きすぎる様だ。ついに左腕が動かなくなった。その隙を見逃さずに敵は光を束ねた剣でそこを切り飛ばす。
「はっ! 我は確かに脱出したはず・・・。なのにどうして縛られて、うおっ!?」
『すいません! 左腕落ちました!』
「そうか! とりあえず我に攻撃が当たらぬようにな!」
セレナさんは縄が中々解けないで藻掻いているが、できるだけ気を付けよう。幸い右腕はまだ生きているし剣もまだ使える。砲門に回すことのできるエネルギーを断ち、剣と障壁に全エネルギーを回し始める。
「aーーーーーー。ーーーーーーーり」
『何て言っているのかわかりません!』
最後に私たちの言語に近い言葉を話したが、それはもはやどうだっていい。右腕で剣を引き抜き、刀身にありったけの魔力をチャージ。遂に限界が来たのか機体のあちこちから煙が上がり、バチバチと雷を上げ始めている。コアから操作できる機能も減り続けており、相手の話を聞いていたらスルトの方が間違いなく先に崩壊するだろう。
『行けっ!レーヴァテイン!』
残る右腕で剣を抜き放ち、相手に向かって投げつける。当然相手は何も声を発する事も無く爆散。剣も溶けてなくなり、腕も動かなくなった。剣を投げた理由は、近寄って斬りかかるだけの余力が無かったというのもあるが、ロボット・剣・即死ときたらああするしかないと思っていたからしょうがない。いや、私の魔法が当たれば即死魔法みたいな感じの代物で本当に良かった。さて、どうやってここから出ようか。とりあえず地面に尻をついたけど、これ以上は動けたとしても武装が一つしかない。それもとっておき中のとっておき。誰もが憧れる究極のロマン兵装。
その名は自爆。だがしかし、コアを暴走させるだけの魔力は予備タンクにも私にも残されていない。かといって外に出れないし仮に出れたとしても上下の下着しか身に着けていないため、それもありえない。ふあぁぁぁ。動いたら眠く・・・・・・。魔族領に行くのは一眠りしてからでいいか・・・。
sideセレナ
ようやく我を戒めていた縄が解けたか・・・。周囲の惨状は酷い酷い、しかしてあの腐れ姉が作り上げたものが瓦礫の山に変わり果てているのを見るのは気持ちの良い物・・・ではないな。だがしかし、巨兵のあの壊れようは残念だ。もう少し持ってくれるものと思っていたが・・・。ああ、それにしてもアイツは人が脱出するなり叩き落としてくれたがそれについてはその内礼参りにでも行くか。
「ユニットは修復されている? いや、お得意の巻き戻しだな」
これで何とか飛行だけはできるか。燃料も十分、最悪我の魔力で動かせるが、地に伏している巨兵はどうしたものか。できれば回収したいものだが、コアユニットを再接続するには変形が必要でありサリアが落ちている間はその変形すらしようがない。修理しようにも一切の道具や設備は無く、狭間の拠点も魔法使いどもにほぼ破壊されているという有様。いや、ドックは確か残っていたが狭間への侵入にはドッキングして機能の回復が必要だろう。仕方あるまい、しばし眠るとするか。




