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終焉少女と時の魔法使いのマジカルライフ  作者: ラキューム
第一部
33/38

動け、巨大ロボ

「我が来たぞ! さあ、あの魔法使いを出すがよい!」

「会長、落ち着いてください」

 クロノスフィアが消えた直後、我が家を訪ねてきたのが件の会長である。本来の名前は知らない。今日は幼女の姿だが、老人だったり成人男性だったりと中々容姿が安定しないお方だ。

「これがお前の言ってた会長ってやつか?」

「そうですが、どうかしましたか?」

 気を利かせたのか、来客用のお茶菓子を持ってきたアイーダが怪訝そうにそう聞いてきた。何か引っかかることでもあったのだろうか? 

「いや、幼女化したグレースに瓜二つだなって思ってな。だとしたら相当な厄ネタだぞコイツ。本人の前でいきなり失礼極まりねぇが、今すぐ縁切った方がいいぜ」

 確かに会長の今の見た目はグレースを幼くしたような見た目だが、そんなに言うほどなのだろうか?まあ、アイーダがそう言うのならそうなのだろうが、給与は良いし残業も無い職場なので縁を切るにはあまりにももったいないのだが。

「こいつがお前の妻の精霊か?」

「はい、そうでございます」

「今すぐつまみ出せ、不愉快だ。その名前を我の前で出すな、耳が腐る」

 そういえばこの人の前でその名前はNGだったか。しょうがない、アイーダには席を外して貰いましょう。本人は嫌がると思いますが。

「すみませんアイーダ。席を外してもらえませんか?」

「しゃあねぇなあ。騙されんじゃねぇぞ、忠告はしたからな」

 予想とは裏腹に、かなり素直に引いてくれたようだ。とはいえ、二階に移動しただけだろうし、話も魔術で盗み聞きしてるでしょうがね。

「おほん。では気を取り直して貴様に命令だ。その魔法使いを我に引き渡し、超巨大魔力推進型ゴーレムの開発指揮を執れ。ちょうど、この間の襲撃で秘密裏に陣頭指揮を執らせていた奴がばぁんって消されたからな。それで前回のヴァルプルギス襲撃で多くの命を散らした事はロハにしてくれよう」

 あれは酔っぱらった時の与太話かと思っていたが本気で進めていたのか。その時は(ほぼ泥酔状態だったが)動かすのに必要なエネルギーが莫大過ぎて不可能だと言っていたが・・・。ああ、そういう事か。人道的にどうかと思うが彼女なら動力源には適任だろう。

「我はソイツを動力に使うための中核ユニットとエネルギーを利用した武装を作り上げる。お前たちはそれに耐えうる動力回路と内部・外部の装甲。ああ、装甲と内部フレームにも武装を埋め込む予定だから完全に組み上げるのはよすように。わかったか?」

「わかりました。ですが、一つだけお願いがあります」

「なんだ? 申してみよ」

 

「パパ、どうかしましたか? 病気なら薬くらいだしますよ」

 

「この呼び方だけは直してください。完全に私が犯罪者にしか見えないので」

「正直我もやってからアウトだと思っておったしな」

 会長に例の指輪を渡してその呼び方だけは変えて貰った。少女は起きていてもしょうがないので改めて魔術で眠らせ、外に置いてある台車に載せた。会長の今の体だと流石に担いで運ぶのは一苦労だろう。

「いや、徒歩で帰る訳じゃないし割と余計な世話だぞ。まあ、使わせてもらうが」

「お気をつけてお帰りください」

「なーにを言っているのだ。今すぐに取り掛かるに決まっておろう。あ、お前の役職は室長だからな。開発室の。そういう訳だ、転送機構起動。行くぞ」

 アイーダ、絶対に怒るよなぁと思いつつ果てしない労働に身をやつす為に大人しく転送されるわたしであった。

「悪いが相乗りさせてもらうぜ。旦那を過労死させるわけにはいかないしな。それに、アンタとしてもオレは監視下に置いておきたいだろう?」

「何の事だ? 意図が分からないが」

「いやー、千年ばかり前に長老の書庫で読んだ本の内容を思い出してな。確か、グレースが神に創られた後にも同じ要領で神々に創られたが魔法を持つに至らなかった失敗作がいたって話なんだが、」

「もういい、好きにしろ」

 そんなこんなでアイーダも同行することになった。二人は相当険悪な雰囲気だったが、まあ流石に作業に支障は出ないだろう。ああ、一つ気になったのだがアイーダは会長の素性について知っているのだろうか? そうなら後で聞かせて貰おう。ついでに、古代の大戦時代の諸々について聞くのもアリかもしれない。そこにゴーレム建造のヒントがあるかもしれないので。

「お前たちの部屋はここだ。我は我で作業に入る。くれぐれも互いに邪魔無きよう心がけようではないか。そうそう、ああは言ったがお前は明日から働け。今日は休むがいい」

「了解しました。ご期待に沿えるよう粉骨砕身して見せましょう」

 そうして、会長は少女を載せた台車を押して去って行った。私とアイーダは本部に用意された二人部屋に泊まり、そこからしばらくの間開発ドックに行き陣頭指揮を執らなければならない。まあ、アイーダはついて来ただけで実際に仕事をするのは私だろう。

「さて、ノワール。これでようやく二人きりってわけだ」

「そうですが、明日に備えて早いところ夕食にして一風呂浴びてさっさと寝たいですよ私は」

「・・・まあ、そうだな。あまりお預けってのは性に合わねえがしょうがねぇな。寝不足でぶっ倒れられてもアレだし、それでいいよ。その代わりといっちゃあなんだが、お前の仕事ぶりを横で見させてもらうぜ。そのくらい許してくれるだろ?」

 その返答に頷いた。彼女は知見も広く、私などより頭脳もずっと高性能なので欠陥などを指摘してくれるかもしれないので、むしろ頭を下げて協力を頼みこんでもいいくらいだ。

「そうかい、じゃあ明日から頑張れよ」

 そういう訳でその日は早く寝た。そう、翌日からの地獄に備えて。


「馬鹿野郎ッ! そんな装甲、グレースが軽く殴っただけで消し飛ぶぞ。もっと良いのはねぇのか?」

「一応純度百パーの最高硬度のオリハルコンを使用しているのですが、それでも足りませんか?」

「たりめーだ、そんなもん素手でも簡単に引き裂かれるぜ。せめて硬化の付呪を全力で施しておけ! それと、全属性防御もだ!」

 翌日、作業は難航し地獄の様相を見せていた。そして、私ではなくアイーダが陣頭指揮を執っていた。まあ、これはこうなると何となくわかっていたから問題ない。実際に上手く回っている。しかし、要求のレベルが高すぎることはいささか問題だろう。

「アイーダ、流石にどれもこれもは不可能です。そこまで力を入れるのは内部フレームだけにして、後は火力の増強に回しませんか?そもそも、目標が対魔法使いなだけで本気でアレに勝てるとは思っていません。あくまでこれは大規模殲滅兵器でして」

「ああ? やるならとことんやるに決まってんだろ。あの野郎にギャフンと言わせてやろうぜ」

 アイーダは予想以上に熱くなっているようだ。そして、それに引っ張られてスタッフ達も熱くなっていたし、アイーダはいつの間にか団長呼ばわりされていた。まあ、妻が楽しそうならそれでいい。

 コンコン、とドアをノックする音がした。恐らく進捗を伝えに来たのだろう。

「どうぞ。それでメリッサくん、作業の進捗はどうですか?」

「はい、腕部・脚部の駆動系及び骨格は九割程完成。同じく、頭部・胴体は七割程です。兵装と外部装甲はコアユニットの完成を待ち、その出力次第で開発を進める予定です」

 彼女は秘書のメリッサ。私の補佐をしてくれており、各部署の進捗をどういう訳か全て記録し逐次報告してくれるため、とても役に立ってくれている。

「・・・ノワール、ちょっとコイツの面借りるぜー」

「えーと、仕事中なのでちょーとまってくださいませんか団長? 報告事項はまだまだ山のようにございますのでー」

「棒読みじゃねえか。いいよな、ノワール」

「よくわかりませんが、問題ありませんよ。ああ、記録はそこに置いて置いてくださいね。後で目を通しますから」

「おう。じゃあ、行ってくらぁ。ああ、オレに用があるってヤツが来たら休憩中って言っといてくれ」

 そう言ってアイーダはメリッサくんを連れてどこかに行ってしまった。・・・私も一旦休憩するとしよう。三日ほどろくに眠れていないので、ここらでシャワーを浴びてしばし寝よう。


・・・・・


「で、何でテメェがここに居やがる。グレースの差し金か?ああん?」

「何の事だか一切わかりませんし、今ここにいるわたくしは彼のグレース・クロノスフィアの長子にして長年ヴェルディの発展を支えてきた賢者としても高名なメリッサ・クロノスフィアとは一切関係ない敏腕秘書メリッサさんなので、関係なんてなーんにもありはしませんよー」

「そういうの良いからさっさと説明しやがれ。オレの目は誤魔化せねぇぞ、何せ魂も魔力も見通す精霊の眼だからよ」

 まあ、アイーダさんに見つかる事は前提でしたし問題はないでしょうね。問題があるとするならこの後ですし。

「・・・まあ、小さい子から泣きつかれたら動かずにはいられないのが私の性分とだけ。とまあ、それはそれとしてバレてしまったので・・・」

 手をくいっとして軽く挑発してみる。これに乗ってくれたら後腐れなく時間停止からの確定コンボ決めれるし、罪悪感も湧かないから最高ですよね。

「オレに説明してくれりゃあそれで黙っててやるからとっとと吐け。オレの旦那にも黙っててやるからよ。ま、その代わりソイツに手ぇ出すんじゃあねぇぞ」

「ふふっ、それはドッチの意味ですか? 殺す方? それとも・・・」

 あっ、アイーダの顔が赤くなりましたね。多分ぶちギレてます。まあ、面白いのでもう少し続けますが。

「そうですねぇ。時間を止めている間にイロイロやって見るのもいいですし、彼と私以外の時間を止めてアイーダの前でってのもシチュエーション的にはそこそこ行けるかも? アイーダはどれがいいですか?」

「だから、その手には乗らねぇよ。ああ、内心確かにご立腹だが今回は許してやる。ていうか、そんなに遊びたきゃ付き合ってやるから一々趣味悪ぃ事やるんじゃねぇ」

 今日のアイーダはとことん耐えますね。こうなったら梃でも動きそうにありませんし、素直にゲロっちゃいますか。お母様も織り込み済みでしょうし。

「ちょっとここのリーダーを痛い目に合わせて、今作ってるやつ以外の兵器を爆破しに来ました。どうです、驚きましたか?」

「いや、壊すなら今作ってるやつも壊せよ。きり悪くねぇか?」

「いやー、なんか作ってるうちに愛着湧いちゃいまして。アレは別に壊さなくてもいいかなーって」

「お前ホントそういう適当なとこグレースそっくりだよな」

 さて、私はそろそろお暇しましょう。色々と仕込みを済ませて来ないといけないので。

「取り敢えず、いったんお開きにしまし・・・。なんで私の腕を掴んでるんですか?」

「その前に今日のノルマ達成してねぇだろうが。先にやる事やってからな」

「そんなぁ。時間を止めてやりますから行かせてくださいよう」

「知るかんなもん」

 あー、怒っては無いけど根には持ってますねコレ。言い過ぎたのは反省ですけど、骨がミシミシいうレベルの力で腕を掴まないで頂きたい。私が時を止めても逃げれない様にしているのはわかりますけど、流石にやり過ぎは痛たたたた・・・。





 



 


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