2章 プロローグ
一日が終わり、妹が寝たあと日本からあちらに意識を戻して最初に目に映ったのは暗闇であり、最初に味わった感覚は身体全体を硬いもので押し潰されている圧迫感だった。聖堂院イブ、いきなりの大ピンチである。
(スリープ中に回復した出力は約半分。まあ、いけるでしょ)
瓦礫を魔力放出で吹き飛ばし、ゆっくりと身を起こす。目を開けると、街が燃えていた。
「あー、あー。よし、声帯も生きてるけどコレはどんな状況なのかしら」
昨晩は何も起こって無かった筈なのだが、1日でここまでの事態が起きるとは、魔法使いの目を持ってしても見抜けなかった…。まぁ、 すべてを見抜くなんて真似はグレースくらいしかできない芸当だけど。そう思いながら、瓦礫に押し潰されて壊れていた両脚を修復して立ち上がる。瓦礫の隙間に手が見えたが、既に骨だったので黙祷だけ捧げて宿屋跡地を出た。
「なにこれ…。絶対に一日後なんかじゃ無いわよね…」
私の感覚的には一晩しか経ってないはずなのだが、何かがおかしい。どう見ても街は廃墟とかしており、人っ子一人いる気がしない。昨日は普通に人で賑わっていたはずなのに。
「新聞かカレンダーは無いのかしら…」
何にせよ、大事なのは月日の確認だ。日本の創作物では、急にタイムスリップした時はとりあえず現地の情報収集などをするのが鉄板なので、その通りに動くことにした。
「えーと、日付はこの間寝た時の三ヶ月後。ここら一帯が崩壊したのが私が寝たその日ねぇ…」
なるほど、さっぱりわからない。見つけた一番新しい新聞が私がここに来た日で止まっていたので、どうも私が眠ったその日に街が燃えたらしいが、一晩寝たら3ヶ月経ってたメカニズムがわからない。と、煙に覆われて白く曇っていた空が急に赤く染まり始める。それは王宮の方から天に立ち昇っており、地平線の彼方まで真紅に包んでいっていた。
「さて、どうしましょうかね。もうしばらく調査するのか、いっそ王宮に突撃するのか。まあ、動けて六時間がリミットだけどね」
そう、今日は普通に水曜日なので明日も当然高校はある。なので、かなりキビキビ動かないとまたこっちに来た時には全部終わってるかもしれないし、それはとてもつまらない事だ。それは嫌だからどうにかしようと、伽藍の街に立ちながら、私は考えを巡らせるのであった。




