エピローグ2
「それで? 私はどうすれば良いと思う?」
目の前に座っているルナは大きく溜息をつき、
「好きにすればいいじゃろ。お主が干渉したらその時点で事象は確定するしのう」
と言った。ちなみにここはルナの屋敷。野暮用があったので、空間魔法をを使ってついさっき転移してきた。そこで私は、彼女と軽く話をしていた。
「まあね。今回のヴァルプルギスは間違いなくろくでもない方向に転がるし、サリアたちも酷い物を見るのは確定だ。最悪の事態にならない程度に干渉してあとは成り行きに任せるつもりだけど、本当にそれでいいのか迷っててね」
「なるほど、自分には止める力があるのにそれをしないことは間違っておるのか否か。昔から変わらぬのう。儂も人の事は言えぬが、そのくらいが丁度いいじゃろ。多少の試練が無いとあやつらの成長に繋がらぬしの」
確かにその通りだ。でも、過去に同じことをして結局最悪の方向に向かわせてしまった経験が結構あるので、最初から干渉しまくりたいという気持ちもあるのだ。
「干渉し過ぎたら世界のバランスを一気に崩す要因になる事を忘れるでないぞ。気持ちだけで動くなどしたら余計に酷い事になる事も多々ある。儂等がこうして隠棲する羽目になっておるのも元をたどればそこに帰結するからの」
「そういえば心とか読めたね。隠し事ができないってのも難儀な物だよ」
「まあ、ヒトの本心なぞ知ったところでしょうがないしのう。よくこんな儂と長く付き合っておるのう。感心するわ」
「このやり取り、何回目だっけ?」
「千回はやったと思うが、結局どうするのじゃ? はよう決めたほうが楽じゃと思うぞ?」
数万年単位の付き合いなので、こういう同じやり取りを何回も繰り返していたりすることがザラにある。
「そうだね。なら、本当にヤバい時だけ介入する感じで行くことにするよ」
「そうするがよかろう。儂もそうするつもりじゃ。何か起きても責任を取るのが面倒というのも多段に含んでおるがの」
「言えてるけど、ヴァルプルギスの後に起きる事への対策も考えないとね。私達が出れば一瞬で終わる事だろうけど、やっぱりそういう訳にもいかないし」
「まあ、あの災禍は魔術を使うものにとっては相性最悪じゃしのう。どんな魔術を撃っても倍の威力で返してくる大災害。消す方法は一撃ですべて消し去るような超高火力の一撃をぶちかますのみという今の魔術では到底不可能な芸当を成せねば祓えぬからのう」
サリアならイケると思うが、本人が動くか動かないかかなり微妙だし、彼女には無理に目立って欲しくないという思いもある。
そして、魔法使いなどの人外の存在ではなく、今を生きる人間が解決すべき事象なので私達が干渉しすぎる事は無く、簡単に解決したらそれはそれで厄介な事柄が待ち受けている。いや、正直に言うと面倒なのだ。それで崇められたり迫害されたりする事が。
「それもあるけど、やっぱり私達が解決した後が面倒なんだよね」
「まあ、信仰対象にされるのはもうこりごりじゃしの。目の前で集団自殺されるのは軽くトラウマじゃ」
「あれは酷かったね。うん、本当に酷かった」
それしか感想が浮かばないレベルで酷い事件だったが、このことについて話すのはまたの機会という事にしよう。本当に長い話になるし、今ここで話す内容じゃない。
「まあよい。とりあえず酒でも酌み交わすか。今宵は月が綺麗じゃしのう」
「そうだね。相変わらず面倒は多いけど、月の美しさだけは何年たっても変わらないからね」
「「乾杯」」
月を眺めながら2人で杯を傾ける。こうしている間にもヴァルプルギスへの日数も減り続けており、サリア達もそれに向けて特訓したりしているのだろう。彼女達にも試練が待ち受けていることも知らずに励んでいるに違いない。それを伝えることも助けることも、世界が滅びるクラスじゃない限りありえ無いが今は彼女達の幸福を願おう。そして、待ち受ける悲惨な運命に折れずに立ち向かって貰いたい。そう思いながら、幾星霜を経ても何も変わらない親友と酔いふけるのであった。




