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終焉少女と時の魔法使いのマジカルライフ  作者: ラキューム
第一部
15/38

一方そのころ

f 少々時を遡り、アリス視点。

「サリアちゃんはどうしたの?さっきから姿が見当たらないけど」

それどころか一切の魔力も感じ取れない。まるで別世界に転移した感じがする。まあ、クレアちゃんに言っても余計に心配させるだけか。

「サリアならさっき一人で行きました。まあ、あの子なら死ぬことは無いでしょうし大丈夫だと思いますけど」

「それでも心配だって表情に出てるけどね。相変わらず分かりやすい」

 指摘すると顔を真っ赤にするクレアちゃん。私も結構長い事教師をやってるし、歴代の王族に魔術や護身術の指導を行って来たけどその中でも十位以内に入るくらいに筋がいい。兄のレオン君も同様だ。

「そ、それより先に進みましょう先生!サリアなら大丈夫でしょうし!」

「はいはい。それじゃあ、下に行こうか。よっと」

 ダンジョンの支配権は奪い取っているから構造の変化くらいは簡単だ。人に言ったら割とドン引きされるができるのだからしょうがない。他の魔術師たちも魔法への到達とか新たな魔法を作るとかできないことを豪語するよりも初歩から極めるべきだと常々思う。大体、魔法に到達したければそれが眠ってるダンジョンにでも潜ればいいのだ。────クリア寸前で誰かさんが消しに来るのは置いといて。

「先生、もう階段できてますよ?早く行きましょうよ」

「ごめんごめん。日頃のストレスを脳内処理してたところなんだ」

「ああ、魔術ギルドから結構恨まれてますもんね。なんでも彼らの理念を全否定する事を公の場で行ったどころか、ギルド長を論破して戦闘でも打ち負かしたとかで」

「最初はイライラしてやった。ギルド長を論破して打ち負かすところはもう愉しんでた。気持ちいいよね、驕ってるやつをボコボコにして地に顔を付けてやるのって」

 最下層目指して進む中でそんな話をしていた。何だかんだで相槌を打ちながらちゃんと聞いてくれるクレアちゃんは根はいい子なのだ。サリアちゃんに付き纏って最近まで鬱陶しがられてたと本人は言っていたが、もう仲良くなれてるのを見る限りコミュ力が凄く高いのだろう。

「でも、後悔はしてないんでしょう?先生の立場は今更他人がどうこう言えるものじゃないし、下手したらお父様の次くらいには発言力あるじゃないですか。大臣達を差し置いて」

「大臣達には私を排斥したりケチつけない様に予(あらかじ)め魔術で催眠かけてるから特に何も言われない様にしてるんだけどね」

 実は愚王になる可能性が高い思想を持った王子に対して、まともな思想と考えになるように『更生』魔術と便宜上言っているだけの洗脳魔術をかけてまともにしたりしているが、これは秘密。まあ、陛下からのお達しではあるけど今の世代には到底言えた話じゃない。

「・・・絶対にまだ何か隠してますよね」

「よし、最下層に着いたみたいだ。さっさと進む!」

「露骨に話逸らしましたね、もう」

 世間話をしながら下層を進む私達だったが、

「ようクレアちゃん。元気してたか?」

 平和な時間と言う物はいつだって終わるものだ。重厚な鎧に身を包み、古めかしい剣を持っている男が現れ、話しかけてくる。恐らくその男がクレアちゃんの言っていたノアという男だろう。

「元気も何も死にかけたわよ誰かのせいで。アレ、知っててやったんでしょ?万一亡命に失敗しても私の首を持って帰れば普通に帰れるし、私は騙せないものね」

「なんてったって未来が見えると噂の王女様だからな。その首を持って帰れば国では称えられ、地位は安泰だ。それに、恨みは無いが元から王族ってもんが嫌いでね。流石に自国の王様ぶっ殺すわけにはいかないが、他国の姫さんなら問題ねえだろ?」

「何よ、亡命は止めたの? あれだけ文句言っておきながら、調子のいい男ね」

「ああ止めだ止め。手に入るかどうかわかんねぇ魔法なんかよりも、王族の首の方が価値あるだろ?それに俺より弱そうだから絶好の獲物じゃねぇか」

 魔法ね・・・。まあ、目の前の男は所詮目の前のものに目が眩むタイプの人間か。私が会ったことのある魔法使いの方々を思い出す。───うん、全員欲に忠実なタイプだった。今はどうでもいいから置いておいて、私の生徒を傷つけようとした不届き者を処分するとしよう。

「ところで、そっちの幼女はどこの誰だ?拾ったのか?」

「見た目は幼女だけど、これでもれっきとした魔術師なんだよ?」

「そうかい、じゃあ死んでくれ」

「なるほど、殺してもいいみたいだね」

 解析開始、対象は男の装備品。効果判明、鎧の材質は不明。魔術的な干渉を無効化する模様。剣の材質も同じく不明。ここちらは不壊の概念が付与されている模様。以上、解析終了。 殺してもいいとか言ったけど中々に厄介な相手のようだ。

「せぇい!」

 高速で振り抜かれる剣を紙一重で回避し、無詠唱で火球を放つが、着弾寸前で魔力が霧散して消滅してしまう。私に合わせてクレアちゃんも魔術で攻撃していたが、同じ結果だ。

「なるほど、魔術が効かねえのか・・・。こりゃあいい、お前らは魔術師なんだろ?何やっても無駄だから大人しく首置いてきな」

 剣を首元に突きつけ、既に勝ち誇ったかのように言ってくる男の腹を殴った。自分に強化魔術をかけて相手を殴る分には問題なさそうだ。

「ガッ!」

「もう一発!」

 腹部にもう一発蹴りを入れ、壁にめり込ませる。そこで一言。

「知らないの?魔術師は格闘もできて初めて一人前なんだ」

「先生・・・今度、護身術だけじゃなくって格闘も教えてください」

「了解。約束するけど、私の仕事が無いときね」

 正直ここまでできる必要があるとは思わないが、本人が望むならいいかな。それならレオン君にも教えておかないと。できるだけ兄妹平等に扱わないと思わぬところで不和が生まれるから困る。

「うっ、魔術師が殴りかかって来るなんて聞いたことねぇぞ。どうなってやがる!」

「そりゃあ、長い事生きてるし、若いころは散々陛下にしごかれたからこのくらいはできる。まあ、久しぶりだし、幼女化してるから威力は落ちてるけどね」

「ふざけるなよクソガキ、いや、今のであんたの名前が分かった。アリス・ロングスロープ!」

「あー、そっか。君の国にある私の情報って精々名前くらいだもんね。まあ、その情報を持ち帰らせたりしないけどね」

「やってみろ!ババガハッ」

「喋る暇があったらその剣で私を切るなりしなよ。時間がもったいない」

 年寄りなのは自覚してるが、面と向かってババア呼ばわりされる謂れは無い。あったとしてもそれはそれで普通にイラっと来る。特に赤の他人に言われた時は。

「さて、鎧を壊すのは無理そうだからダメージを与え続けてサリアちゃんが来るのを待つか」

 吹き飛んでいくノアをそれ以上のスピードで追跡し、アームハンマーで床に叩きつけ、一瞬浮いたところに踵落とし。吐血しようがお構いなし。

「そろそろ俺にもゴ八ッ」

「もう喋らなくっていいよ。死ぬまで殴られてて貰う」

 今から行うのは陛下直伝の外道殺法、『死ぬまで殴って会話スキップ』だ。敵が自分より弱いか弱っており、なおかつ相手の話や命乞いを聞くのがダルイ時に使う技だ。本当に非道な方法だけどやってる方は楽しいから大丈夫だ。

「冗談か何かだと良いけど、そうは行かないみたいか」

 兜を引っぺがして頭を完全に潰したはずなのにも関わらず、まだ生命活動が止まっていない。そこで止まり、油断した私の一瞬の隙を突かれた、明らかに人には不可能な曲がり方をした腕、その手に持たれた剣は容赦なく私の背中を貫いた。辛うじて心臓は避けたが、致命傷に違いは無い。

「先生!」

「大丈夫、近づかないでいい。回復はしてるから」

 嘘だ。何らかの力で魔術封じが私の体内にも作用しているため、魔術行使ができない。身体強化すらできない上に怪我も祟り、スペックがただの幼女まで下がってしまっている。持っている護符に治癒の護符もあったが、効果は微々たる物。俗に言う大ピンチというやつだ。

「死んだと思ったが、こんな便利な機能までついてたのかよこいつは! 最強じゃねえか!」

「違うね。それは機能なんかじゃ無い、ただ体が作り変えられてるだけ。都合のいい話は存在しないんだよ」

「ああ?何のことだよ。俺はこの通りピンピンしてるぜ、殴られたダメージももう治ってる」

「それがおかしいんじゃないか。ただの人間が頭潰されて、ぐっ・・・。治る訳ないだろう?君はとっくに死んでいるんだよ。動いてるのは鎧の副次効果に過ぎない」

「ああそうかい。でも、アンタはそのまま死にそうだし、クレアちゃんを殺すとしますか」

 私に背を向けてクレアちゃんの方に向かう男。私は動くこともできずにそれを見ることしかできない・・・訳が無いだろう?

「その前に私に止めを刺してくれない?この体はこ(・)の(・)体(・)は(・)もう駄目だから」

「そうかい、じゃあゆっくり眠れ」

 一閃、私の首は見事に胴体と泣き別れしてコロコロと床を転がっていった。意識は一瞬途絶え、

「嘘・・・嫌よ。そんなの嫌、先生が、先生が」

「私がどうかしたの? この通りピンピンしてるけど」

 ─────次の瞬間にはクレアちゃんの前に立っていた。 

「どうなってやがる、お前の方が人間離れしてるじゃねえか」

 男は完全に困惑し、冷や汗を流している。クレアちゃんの方は完全に呆けてしまっているので、頬をぺちっと叩いて正気に戻す。

「はっ、先生! 先生は、何で・・・。首を刎ねられたはずじゃないんですか?」

「私がその程度で死ぬとでも? 予備の肉体くらい用意してるに決まってるだろう?」

「ちょっと何言ってるか分かんないです先生。一体何をどうやったんですか」

 クレアちゃんは本気で困惑している! 私としてはそこまでおかしなことを言った覚えは無いのだけど、一応説明しておくべきか。

「よくわからねえが、くたばり」

「うん、両断したらしばらくは動け無さそうだ。やっ!」

 剣を生成し、敵を真っ二つに両断。ついでに半身を奥の方に蹴っ飛ばし、もう半身は剣で地面に縫い付けておいた。これでしばらくはくっつくことも無さそうだという訳で説明タイム。

「簡単に言うと、魂魔法を疑似的に再現して自分の魂を肉体に縛られぬように独立させる。そして、ホムンクルス技術を応用して私の肉体を複製し、いつでも私の魂を入れれるようにしているんだ。ちなみに、ホムンクルスの作成はこの国では禁術指定されてるから気を付けてね」

「うん、意味は分かりましたけど。先生は先生でとんでもないですよ、はい」

 やっぱりドン引きされた。倫理的におかしい事も分かってはいるが、それはあくまで現代の価値観と割り切ることにしている。昔に同じようなことをしている人物は知る限りいなかったが、別に問題では無いはずだろう。きっと。

「でも、先生は剣も使えるんですね。やっぱりグレース様から習われたんですか?」

「ははは、魔術師たるもの武器の一つや二つ極めて」

「それはもういいです! ほら、こうして話している間にあの男復活してますよ!」

「ああ、それならもう私の出番は無さそうだって、避けろクレアちゃん!」

 クレアちゃん目掛けて剣が投げられる。間一髪のところでクレアちゃんに当たることは防げたが、その剣は私の胸に突き刺さっている。男が剣を投げる動作は無かったので、恐らく追尾機能でもついているのだろう。それだけなら大したことは無いのだが、魔力を全身に回すことができなくなっている。先程首を刈られた時はそのような事にはならなかったから、剣で貫いた時に発動する能力と考えるべきだろう。普段ならこの程度の傷は一瞬で回復するのだが、全く回復の兆候すら見えない。その間にも血はどくどくと流れ続け、立っていることすら不可能になった。

「先生! 今治療します!」

 駆け寄って来たクレアちゃんが私に回復魔術をかけてくれているが、治癒力も落ちているようで傷の治りもやけに遅い。男はまだ胴体と下半身が泣き別れしたままの状態だが、剣の追尾機能を使うだけの思考はできるらしい。クレアちゃんは私の体に突き刺さった剣を抜いてくれたが、その剣が奴の元に戻って行っている事には気づいていない。

「クレアちゃん、私の治癒は良いから自分を守って。ほら、後ろ!」

「え? うわっ!」

 よし、クレアちゃんは間一髪のところで回避できたようだ。まあ、私には当然当たる訳だが。とはいっても少し掠ったくらいなので大したことは無い。

「ああもうッ! これでも喰らいなさい!」

 相手に向かって炎の魔術を行使するクレアちゃんだが、相手に当たる前に魔術が霧散してしまう。  私にも打つ手は無くは無いが、これは禁じ手中の禁じ手。それを使おうと思ったが上階に凄絶な魔力反応が突然現れる。どうやら、ようやく戻って来たらしい。何処に飛ばされてたのか見当もつかないが、確実に何かは得たのだろう。魔力は活性化しており、猛スピードでこちらに向かって来ているのが分かる。

「よくもやってくれたな魔術師。大人しく殺されてくれ」

 いつの間にか体がくっついた男が私に止めを刺そうと迫って来たがもう遅い。剣は既にその手にあったが振り下ろされるよりも到着の方が速いだろう。クレアちゃんもそれを察したようで、攻撃の手を緩め、上からの衝撃から私と自分を守れるように障壁を展開している。

「悪いが君の相手はもう私じゃない。彼女だ」

「ああ? なんだよそり」

 天井を砕き、彼女は上から現れた。男の頭を落下ついでにひっつかみ、地面に叩きつけた彼女は、振り向きざまに一言。

「すいません。お待たせしました」

 と、照れくさそうにそう言った。



 


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