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終焉少女と時の魔法使いのマジカルライフ  作者: ラキューム
第一部
11/38

不穏の風は吹きやまぬ。

「とりあえず、まずはオーガを何とかしないとな」

「確か、二体いるんですよね?」

 さっさとこんなところ抜け出そうと言ったのは良いが、一応当面の目標を確認して起きたいとノアさんが言って来たので、さっきの死体が散乱している場所まで歩きながら話している。

「ああ、まあサリアちゃんがいるんなら楽勝だろ。俺は援護くらいしかできないが、そこは任せた。その代わりマッピングとかは任せておいてくれ」

「わかりました。二体とも一撃で殺して見せますよ!」

「おお、そいつは頼もしい」

「はぁ、大丈夫なのはわかるけど、無理はしないようにね」

 軽口を叩きながら先程の部屋へと戻っていった。

「それにしても、酷い有様だな」

 前回見たときは、取り敢えず生存者を探すことに集中していてよく見ていなかったが、改めて見るとやっぱり酷かった。

「えーと、誰がこんな事を!」

「いや、そいつらは俺の上に乗ってたのをサリアちゃんがぶん投げた結果そうなってるんだと思うぞ」

「まあ、あれ軽く音は超えてたもんね。 そりゃそうなるわよ」

 前にギルドで腕を切り落とした時の事は置いておくとして、一切の魔術も無しに人を壁にめり込ませるような人間は普通は怖がるものだと思うのだが、ノアさんはそう思わないのだろうか?ちなみに、クレアさんには私の能力は一通り披露しているため、あんな反応である。

「ん? それぐらいなら魔術で身体能力を強化すればできるからなぁ。 別に怖がるようなことじゃない。 それに、戦場ではもっと酷い死体も見て来たしな」

 とのことだ。確かに戦場ならそんな光景も見慣れてるのかもしれないし、彼の言うことが事実ならメリッサさんに部下を血祭りにあげられてそうだ。

「そうですか。じゃあ、じゃんじゃんぶん投げて壁と一体化させていいって事ですね」

「加減はしなさい。いくら私でもそんなにスプラッタを見たいわけではないのよ?」

 そんなこんなで、先に進んでいく。来る道は六本あるが、進む道は一本しか無いので迷う心配がないのは嬉しい。

「サリアちゃん、聞こえたか?」

「はい、足音と声が。こっちに近づいてきてますね」

 そう言って通路から少し離れ、身構える。前方から二体のオーガが近づいてくるのが見えた。そして、こちらが相手を視認するのとほぼ同時に相手もこちらを視認したようだ。

「ほう、今度はヒトのメスか!しかも二匹もいるぜ!こりゃあいいなあ弟よ!」

「そうだね兄さ」

 でも、いちいち喋っているのを聞くのも面倒なので、飛び上がって弟のオーガの首を引きちぎって壁に向かって放り投げる。

「うわぁ…」

 クレアさんがドン引きしているが気にしない。とりあえずさっさと殺すことにする。

「貴様ァ!よくも我が弟を!そして亡骸すら辱めるか!この外道が!」

「ああ、そういうのはいいんでー」

「ゲブォ!」

 そのまま空中で回し蹴りを兄の方に食らわせる。達磨落としの要領で胴体を吹っ飛ばし、首から下は下半身といった状態になっているが、敵だし別にいいだろう。オーガの方も人間たちをバラバラにして食べたり、無惨に殺したりしていたのだからそれが自分達に回ってきただけだ。 

「終わりましたよ、二人共」

「おう、お疲れさま。それにしても本当に一撃必殺で仕留めるとは、凄いじゃねえか」

 白い歯を出してニッと笑顔で話しかけてくるノアさん。私も彼に答えて笑い返す。

「ふふっ、これくらい楽勝ですよ。伊達にグレースさんから5年間修行受けてるわけじゃないんですから!」

「ん? ちょっと待ちなさい」

「どうしたんですかクレアさん。今の話に何か問題でもあったんですか?」

「いや、ちょっと引っかかるところがあってね」

 クレアさんは一呼吸おいて、自分を一旦落ち着かせてから私に聞いてきた。

「十四歳でグレース様と出会ったって言ったのは覚えてる。それなのに、五年間修行してもなお十四歳っておかしくない?実年齢は十九歳じゃないの?」

 どうせ不老不死だからとその辺よく考えていなかったが、冷静に考えるとそうなるから、クレアさんの疑問ももっともである。

「確かにそうですけど、私も一応不老不死なんで、あんまり年齢とかは気にしていないのと、グレースさんが修行を終えた後に体は十四歳の状態に戻したから、心は十九歳、体は十四歳って感じですね」

「なるほど、まあ色々とあるんだな、サリアちゃんにも」

「そういうことです」

 ノアさんがそう言って話を締め、

「まあ、とりあえず先だ。少なくとも、さっきのオーガの寝床はこの先にあるってことで間違いないだろうから、まずはそっちに行こうぜ」

先に進み始めたので、後に続くことにした。

オーガの寝床は簡素な物、例えば藁を敷き詰めただけだとかそんな感じだろうなと思っていたが、全然違った。オーガたちの巨躯でも安心して眠れそうな巨大なベッドが二つ並んでいる。

「なんか、思ってたのと全然違うんですけど」

「そうか、俺もだ。普通に藁の上で寝てるものとばかり思っていたな」

「まあいいでしょ?それよりサリアは服を着替えなさい。探せばオーガたちが略奪した服ぐらいあるでしょ。 大体、若い男がいるのに貴女は無頓着過ぎよ?もっと慎みを持ちなさいってあれは・・・」

 あのオーガ達は下半身にしか鎧を付けていなかったし、あっても残りの上半身の分の鎧しかないような気がするなどと私が考えていたところ、クレアさんが何かを見つけたらしく、私を呼んできた。

「サリア!ちょっとこっちに来なさい!」

 その呼び声に応じてクレアさんが入っていた部屋に一緒に入っていった。ノアさんも何かを考えるような顔をしながらだが、後ろからついてきている。

 「どう見てもキッチンですよね」

「そうだな。俺にもそう見える」

  先にあったのは何とキッチンだった。正直、人間を踊り食いとかしてるとばかり思っていたが、ちゃんと人肉を料理して食べていたのだろうか?

「今日の献立は人肉ハンバーグとか、そんな感じで調理してたんでしょうか?」

「やめろ、ちょっと想像しちまったじゃねえか」

  あの兄弟は仲良さそうだったし、二体でキッチンに並んで料理とかしていたのかもしれない。まあ、どちらも私が殺したわけだけど。

「ああ、そうそう。でもなんでこれが着替えに繋がるんですか?どこにも服なんて見当たりませんけど」

 当然ながら、キッチンを見渡してもどこにも洋服なんて見当たらない。あってもせいぜいエプロンとかだと思うが、それは間違いなくオーガ用で人の着れるサイズじゃ無いと思う。

「いや、調理するときに服は脱がせるでしょ? 人骨の数を見る限り、アイツらは地上まで登って行って、あの森に来ている冒険者を攫って食ってたんだと思うし、何処かに服があってもおかしくないんじゃないかと思ってね。ざっと数十人分はあるんだし、女物もあってもおかしくないでしょ?」

 そう言って彼が指さしたのは、大きな木箱だった。蓋はされていないようで、上から簡単に覗き込めた。なるほど、確かに大量の衣服や防具が入っている。これならサイズが合う物も一つくらいありそうだ。

「じゃあノアさん、着替えたらどうですか?貴方も鎧とかボロボロですし、サイズさえ合えば結構あると思いますよ?どう見ても男物の方が多いですから」

「ああ、そうさせて貰おうか」

 ノアさんが別室に移動した後、いくらか服を調達してきたクレアさんは、ニヤニヤと笑いながら私の服・・・と言ってもさっき大分派手に動いていたのでほとんど襤褸切れみたいになっていたそれを

ビリビリと破り始めた。

「クレアさん!?いくら服がボロボロだからといって破らないでくださいよ!」

「ふふふ、いいじゃないのいいじゃないの~」

「よくないですよ! それにそんなフリルの多い奴をこんな所で着る訳ないじゃないですか!」

「・・・・・・それもそうね。 じゃあ、はいこれ」

「これって確かタイソウ服ってやつですよね?しかもブルマタイプって、異世界から流れて来たっていう伝説の衣服らしいですけど、どうしてこんなところに?」

 ブルマ、それは異世界から召喚された勇者がこの世界に持ち込んだ衣服である。 伝説によると、かつて世界を支配せんとした魔王との決戦時に勇者が身につけていた物を、この世界の技術で複製したものだが、異世界の技術力の高さゆえに、ほんの数着しか現存していない古代の遺物である。本来ならばタイソウ服と合わせて始めて真の威力を発揮すると伝えられており、グレースさんでも実物を持っていないという代物である。

「なんか、詰められてた衣服の山の中に紛れていたわよ?流石にそこまでレアな物とは思って無かったけど、着る?多分似合うわよ?」

「いいですけど、クレアさんは一体何に着替えるつもりで?流石にフリルが多かったり、動きにくい物は駄目ですからね?」

「私はこれよ!」

 そう言って彼女が取り出したのは、今着ている服と殆ど変わらない服。 つまるところ、オーソドックスな冒険者スタイルといったところだ。 

「私にもそういう普通のやつは無かったんですか? 別にブルマが嫌ってわけじゃないんですけど、もうちょっとほら」

「嫌じゃないのならいいじゃない」

 そう言われるとあまり言い返せないので、大人しく着ることにした。確かに動きやすいが、太ももが大きく露出しているし、中々卑猥な服装だと思うのは私だけだろうか?

「でもこれ、逆に防御力下がってませんか?動きやすいだけで絶対に戦闘用じゃありませんよ」

「似合ってるしいいんじゃない?ほら、貴女どうせ再生するから防御力なんて二の次みたいなものでしょ?」

「二の次じゃありませんよ! 普通に痛みは感じますから!?」

「そうなの? けっこうケロッとしてるから大丈夫なものとばかり思ってたんだけど・・・」

「感覚は鈍くなってますけど、それでも痛い物は痛いですよ。例えば筋肉痛とかは、慣れたからといって体が痛まないわけじゃないでしょう?」

「確かにそうね。それなら、普通の服を持ってくるわ。一応魔術で本物かどうかを確かめてみたけど、そのブルマ、何も魔術的な加護がついていないもの。間違いなくパチモンね」

 そしてクレアさんは、今彼女が着ているものとはデザインに差異はあるが同系統の衣服を持ってきた。さっさと着替え、部屋の外に出る。 

「あれ?ノアさんは?」

「おう、お前等があんまりにも遅いものだから探索していたんだが、気になる道を見つけてな。 ちょっとついてきてくれないか?」 

 ノアさんは私たちが仲良く戯れている間に一人で探索していたらしく、その途中で上階と下階に続く階段を見つけたらしい。そのことを伝える為に戻ってきたようだ。

「クレアさん?そんなに顔をしかめてどうしたんですか?」

「えっと、なんでもないわ。気にしないで、それに聞かないで。貴女には後で話すから」

 薄っすらと目が紅く光っているのを見る限り、未来を視たのだろう。彼女の視線と表情を見る限りだと、ノアさんに関係のある事という事は分かるが、それ以上は分からない。クレアさんに聞けば一発で分かるのだろうが、本人曰く

「後で話すわ。とにかく今は駄目」

 明確に拒否されたので、後で聞くしかない様だ。

 「何を話してるんだ?それよりこれを見てくれよ」

 ノアさんについていくと、階段のある部屋があった。一つはずっと上に続いている階段で、二つ目は下に続く階段だ。どちらにせよ階段であるのには変わりない。

「そうだな、俺は下に行くから二人は上に行ってくれないか? そのほうが効率良いだろ?」

「いいわよ、じゃあ、これで。行くわよ、サリア」

「分かりましたから、引っ張らないでください」

 クレアさんに手を引かれて階段を上に登っていく。

後ろを振り返ると、下に降りていくノアさんの顔は見えなかったが、小さく笑い声が聞こえた気がした。




 

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