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セブンス エッダ  作者: りん
風に謳う心
77/118

3

「天空の塔が現れるのは午前中だけです。

 きっとご覧になった方が早いと思いますので、明朝詳しく説明致しましょう」


 カハクの言葉に一同は思いを巡らすが、彼の言葉に従うしかなさそうだ。

 1日時間を持て余してしまった一同は其々思い思いに行動する。


「じゃあエンコは買い物をしたいわ。

 ハイメ、付き合って」

「えぇ〜何で僕なの?僕休みたいよ」

「ほら、行くわよ」


 ハイメは抗議も虚しく、エンコに強引き連れていった。

 騒がしく2人が去った後、ナディルは口を開く。


「俺は司教様に挨拶に行ってくるね」

「それでは私も」


 ナディルが席を立つと、カリュウもその後を追う。

 皆が出て行き2人きりになるとカハクはにっこりとライナに言った。


「ライナ、見せたいものがあります。

 付いて来て頂けますか?」


 ライナはカハクに裏庭へと導かれた。

 手入れの行き届いた裏庭には木陰を作る大きな木が植えてあり、その幹の高い位置に光を浴びて輝く灰色の羽の鳥が止まっている。


鳥さん(フグレル)、いらっしゃい」


 カハクが声を掛けると灰色の鳥は6枚の羽を広げて優雅に飛び立ち、カハクの腕に止まった。


「この子、あの時の……!」


 カハクと旅をしていた時に助けた鳥だった。

 怪我はすっかり良くなった様子で、元気そうに羽ばたいて見せた。羽艶も良く、きめ細かい羽が日の光で銀色に輝いた。


「良かった、元気になったんだ」


 ライナが嬉しそうに覗き込むと、鳥はライナに顔を寄せる。硝子の様な瞳がライナを見返す。瞳は光に色を変えながらキラキラと輝いた。

 鳥は2、3度羽搏くとカハクの腕を飛び立ち、ライナの肩に止まった。


「ライナの事覚えているのでしょうか」


 カハクは嬉しそうにライナを見る。

 ライナがそっと鳥の頭を撫でてやると、鳥は嬉しそうに目を細め、自らライナの頬に擦り寄った。

 小さな頭は暖かく、細かな羽毛が擽ったかった。


「旅は順調ですか?」


 カハクは揺蕩う声でライナに問い掛けた。


「うん」


 ライナは鳥を撫でながら答える。


「お兄様とは上手くやっていますか?」

「うん……多分」


 曖昧に答えカハクを見ると、カハクは真っ直ぐとライナを見詰めていた。

 真っ直ぐな琥珀色の瞳が真実を見詰めようとしている。


「そうですか、それは良かった」


 カハクはふっと安堵した優しい顔になる。


「私、勘はいい方なんです。ナディルならライナを任せてもきっと大丈夫だと思っていました」


「カハクは、分かっていたの?こうなる事」


 ライナは静かに問い掛けた。カハクの瞳をしっかり見て。


「こうなるとは、どうゆう事でしょうか?」

「ナディルが私の兄で、私達がまた現れる事」

「……そう、思いますか?」


 ライナの問いにカハクは笑みを浮かべたままはぐらかす様に答える。


「カハクは何となく分かっている気がして。

 私の持てない確信を持っていたから」


 あの時、ライナはナディルの事を本当に兄かと疑っていた。確かな証拠も無く、確信を持てずにいた。しかしカハクはナディルを信頼していたし、まるで先の出来事を知っているみたいだった。彼は確かな審美眼を持っている。


「私は未来の全ては分かりません。

 ……ただ、夢を見るのです。未来を覗き見る様な夢。夢は選べないし、変えられません。しかしそれが私の確信となり、人はそれを神託と呼ぶのでしょう」


 カハクは遠くを見る目でまるで他人事の様に淡々と語った。


「ライナは我慢して内側に溜め込みやすいから、たまにはナディルに我儘言ってあげて下さい。きっと喜びますよ」


 我儘を言う事で何故ナディルが喜ぶのかさっぱりわからなかったが、ライナはカハクを安心させたくて、小さく頷いた。

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