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セブンス エッダ  作者: りん
風に謳う心
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2

 パラスロットの街は相変わらず活気があり賑やかに人々が行き交う。几帳面に敷き詰められた白い石畳みが美しく、高い尖塔の教会が威風堂々と聳え立つ。


 教会の脇の建物から外に出たナディル達は気持ちの良い日差しを浴びる。


「気持ちの良い天気〜」


 エンコは大きく伸びをしながら1番に口を開いた。

 解放されたような活き活きとした表情から嬉しそうな笑みが溢れる。やはりトレパイルで多少なりとも気を病んでいたのだろう。


「すごい高い塔だね」


 ハイメは高く伸びる尖塔を仰ぎ見て感嘆する。

 カリュウも同じ様に、屹立する教会を黙ってじっと眺める。


 ライナは教会の横の庭をそっと見詰めた。相変わらず手入れが行き届き、鮮やかな花々が咲き揃っている。


 ーーカハクは元気にしているだろうか

 数ヶ月前に別れた彼の優しい笑顔を思い出す。


「取り敢えず教会に入って見ようか」


 ナディルが皆を促した。



 教会の聖堂に足を踏み入れると、ひんやりとした密やかな空気に包まれる。

 カリュウは緊張した面持ちで、内部をじっくりと観察する様に見た後、祭壇に向かいそっと短い祈りを捧げる。

 エンコは持っていた緋色の布で露出の多い衣装を覆い隠した。


 奥の祭壇へ歩みを進めると、カハクが一行の到着を予期していたかの様に現れた。


「お待ちしておりました」


 涼やかな落ち着いた声でそっと告げるとふんわりと微笑む。


「カハクっ……!」


 カリュウは駆け寄ってカハクの両手を強く握る。


「カリュウ……」


 カハクも思いの詰まった声で姉の名前を呼ぶ。

 色鮮やかなステンドグラスを通して入り込んだ優しい光が2人の再会を祝福するかの如く包み込む。

 カリュウは成長した弟をまじまじと見詰める。

 カハクはカリュウより背が高くなっていて、躰つきもしっかりとした青年に成長していた。

 宝珠に見せられた姿とは少し違っていたが、ふわふわした髪の毛や優しい笑顔は何も変わらない。嬉しさと安心感と懐かしさで胸が一杯になる。

 繋がれた両手からカハクの温もりと共に彼の優しさや想いも伝わってくる様だ。


 ーー会いたかった、カハク

 心の中でそう言うとカハクはにっこりと微笑んだ。

 やっぱり私達は心で繋がっている。

 カリュウは強く思った。


「……ここでは何ですので奥へ案内致します」


 暫くカリュウと見詰め合った後、カハクはそっと口を開いた。



 カハクに案内されたのは聖堂脇にある小さな建物の一室だった。以前ライナがカハクに怪我の手当てをしてもらった部屋だ。

 部屋の中は綺麗に整頓されていて小ざっぱりとしている。

 露草色のソファに腰かけるとカハクが話し出す。


「皆様ようこそお越し頂きました。時が満ちたのですね」


 相変わらず穏やかな口調で話すカハク。


「カリュウも……元気そうで良かった」


「貴方がカリュウの双子さんね。優しそうな笑顔がそっくり」

「うん、似てるね〜」


「申し遅れました、カハクと申します」


 カハクはエンコとハイメに向かって深々と頭を下げる。

 その言葉と仕草をつい先日見たばかりでエンコはふふっと微笑み、ハイメは感心した様子で頷いた。


「タフグレンの巫女のエンコです」

「僕はノルシーから来たハイメ」


 2人もそれぞれ挨拶をする。


「皆さん遠くからいらしているのですね。

 私、恥ずかしながらタフグレンにもノルシーにも赴いた事がなくて……砂漠のある賑やかな場所と白銀の雪深い場所だという事位しか知らないんです」


「そうだよ〜タフグレンは面白かったけど、とっても暑くて僕もう、うんざり」

「ハイメ!そんな事思っていたの?」

「だって僕の育った場所は寒かったから、上せるかと思ったよ。

 ぐったりだったよね、ライナ」


 急に話を振られたライナは戸惑いつつも勢いに押されて頷く。


「う、うん……」

「ライナまで……!

 タフグレンは暑いけど陽気でとてもいい街よ!カハクもカリュウも是非いらして」


「ノルシーにも来てみたらいいよ。

 雪はキラキラして綺麗だし、ドヴェルグとグノームの金属細工には驚くと思うよ」


「ドヴェルグとグノーム……確かに彼らに会えるのは貴重な体験ですね」


 カハクは興味深そうに相槌を打つ。


「ところでカハク、パラスロットの宝珠の使い手は現れた?」


 ナディルが話しに割って入る。


「それが未だでして……」


 カハクは申し訳なさそうに俯いた。


「そうか……カリュウは神託を受ける事ができるんだよね?」


 ナディルは残念そうな表情をして、カリュウに話を振る。


「……はい」

「誰がいつ現れるか、もしくは何処にいるか、わからないかな?」

「そうですね……」


 カリュウは難しい顔をして考え込む。

 カリュウの神託とは過去の蓄積からなる予測でしかない。


「案外カハクが使えるんじゃないの?」


 ハイメは事も無げに話す。


「いえ、私は……

 私は一介の聖職者でしかありませんから」

「でもやってみなくちゃ分からないじゃない」


 謙虚なカハクにエンコも身を乗り出して言う。

 宝珠を既に手にしている2人はまるで簡単な事の様に考えている。


「しかし、私では宝珠の封印された場所に行く事ができません。

 きっとそれが一つ目の条件なのでしょう」

「それって、どうゆう事?」


 ナディルは訝しげにカリュウに問う。


「パラスロットに祀られた宝珠は風の宝珠です。

 祭壇はここではなく空にあるのです」




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