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街の奥の深淵の森を更に進むと街の入り口で見たのと同じよう様な木組の門が現れる。ただ街の外で見たものとは違い、鮮やかな朱色をしている。そこから先は白い玉砂利が敷き詰められていて、神聖な空間である事を示している。朱と白のコントラストが美しく神の拠り所へと誘う。
萌葱色の深緑の両脇には美しい群青や藤紫の大きな花が幾つも群れを為す様に咲き乱れている。花に囲まれた道を進むと美しい緑青の屋根が見えてくる。
苔の蒸した石の階段の脇にラッパ状の真っ白な花が凛と咲いている。頭をもたげるその姿は客人を出迎え、お辞儀をしている様だ。
「ライナ!」
足を止めて見惚れているライナを石段の上からナディルが呼ぶ。ライナは慌てて石段を足早に登った。
ナディル達は白い着物に桔梗色の袴姿の女性に奥へ通される。
広々とした拝殿は吹き抜けになっていて広い空間には何本もの太い木の柱で支えられている。木目の床は艶やかに磨かれていて、四角く区切られた天井には美しい花の絵が描かれている。
程無くして白い着物の裾を露草色に染めた衣装の司教が現れた。両手には先程石段の脇で咲いていた白い花が抱えられている。
「ようこそいらっしゃいました」
深々と下げた頭を静かに上げる彼女の涼やかな顔がライナの瞳に映る。
「……カハク」
ライナは思わず声を上げてしまった。
彼女の顔はカハクの顔にそっくりだった。白いキメの細かい肌も美しい金色の髪も透き通る様な琥珀の瞳も。ただ彼より背は低く、髪はストレートで、女性であった。
ライナの言葉に彼女は反応する。
「今、カハクと仰いましたか?」
ライナは驚きつつも頷くと、彼女は目を大きく開きライナに詰め寄る様に問い掛ける。
「カハクをご存知なんですか?」
目を丸くするライナに気付き、我に返った彼女は再度深々と頭を下げた。
「申し遅れました。私、司教の褐瑠と申します」
彼女の額にはカハクと同じ金属の輪が光る。
声は勿論カハクより高いが、その穏やかで丁寧な喋り方はそっくりだ。
「貴女がご存知なのがパラスロットのカハクであれば、彼は私の双子の弟です」
カリュウはカハクと同じ様な仕草で顔を少しだけ傾けゆっくりと微笑む。
「……」
「そうなんですね。とても似ていたので驚きました」
言葉を無くすライナの代わりにナディルが応える。
「カハクは息災でしたか?
お恥ずかしながら長い事会っておりませんので……」
カリュウはそっと憂いを帯びた目を伏せた。
「ええ、お元気そうな様子でしたよ。
パラスロットを訪れた際には色々とお世話になってしまいたした」
「そうですか、よかった」
カリュウは安心した様に微笑んだ。
彼女が持っている花を持ち直すと、甘い香りが漂ってきた。
「すごくいい匂い」
エンコが甘い匂いを堪能する様に言った。
「この花は強い芳香と月明かりで光る真っ白な姿が死者の魂を導くとされています。
夏至近くの満月の夜に使者の魂が帰るとされるこの街では欠かせない花なんです」
大切そうに花を抱えて微笑むカリュウは、絵画で見た神の御使いの様だった。




