3
通された部屋には礼拝堂の煌びやかな豪華さは無く、エクリュのマーブル調の石で統一されていた。柱は天井でアーチを描き聳え立ち、単色だが、やはり精密な幾何学の模様が施されている。
部屋の一角に炎の焚かれた祭壇が作られている。その祭壇に向かい祈りを捧げる様に跪く女性の姿があった。
女性は陶磁器のような光沢の小さな貝殻とカラフルな硝子の散りばめらめた衣装を身に纏っている。脚の隠れる黒いハーレムパンツを履いているが、上半身は大胆に晒け出され、赤い房飾りが幾つも垂れている小さな布が胸を隠している。その上からたおやかな透けるヴェールを被っているが、布越しに見える姿は何とも煽情的だ。
彼女は入ってきた人の気配に気付くと静かに瞳を開けてこちらを向いた。燃える様なガーネットの瞳が見開かれ、真っ直ぐな視線が3人に注がれた。
彼女はすっと立ち上がる。腰に巻かれたスカーフから釣りがっているコインがシャラシャラと音を立てる。
「こんにちは」
褐色の肌に情熱的な緋色の髪。にっこりと微笑むその様は美しく妖艶だ。
「炎瑚って言うの。よろしくね」
ライナはその姿を見入ってしまう。
ハイメが感心した様に言う。
「綺麗だね」
「ありがとう」
エンコは嬉しそうに笑った。
「巫女のエンコです」
ジグムンドが改めて彼女の名を口にすると、エンコは右手でヴェールを掴むと足をクロスさせ、優雅にお辞儀をした。
「この地はかつては国として栄えており、古えからの風習で自然の神を崇めております。創世神とは別にその神々に仕えるのが巫女です。
エンコは神への供物でもあり、神と一体となれる存在なのです」
人々の祈りにより神格化した自然の現象が、この信仰の本像となっている。そして炎の燃え上がる祭壇に祀られているのが宝珠だ。しかしその姿は深紅の炎に包まれて見る事は出来ない。
「折角いらっしゃったんだから今日はゆっくりしてもらったら?お祭りを楽しんでもらいましょ。
いいでしょ、シグムンド」
エンコは甘えた声でシグムンドにお願いする。
「そうじゃな。今日はゆっくりしてもらおうか。儀式は祭りが終わってからでもいいですか?」
ジグムンドは少し困った顔でナディルを見る。
「勿論です。こんな時期にお邪魔してしまってすみません。タフグレンの華やかな祭りを是非見てみたかったので……」
ナディルは申し訳なさそうに言う。
「いやいや、是非楽しんで下さい」
ジグムンドは祭りを誇ってか、にこにこと嬉しそうな笑顔で言った。
「祭りは今夜の前夜祭を含めて3日間行われるの。今夜は花火が打ち上げられるから、川の方へ行ったら良いいわ。とっても綺麗よ」
エンコは美しい顔でうっとりと話す。
「明日と明後日はパレードが行われるの。露店も沢山出ていてきっと楽しいわ。私も舞いを披露するから是非見にいらしてね」
エンコの舞いはきっと素晴らしく美しくものだろう。
楽しみ、とハイメは歌う様に言う。 ライナは瞳を輝かせて大きく頷く。2人共祭りには縁遠かったのだろう。
そんな2人をナディルは微笑ましく眺める。




