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暑い太陽の日差しを避ける様に日陰を進む。街灯、軒先き、窓、街の至る所に細かな模様がくり抜かれた鉄製の丸いランプが吊り下げられている。住人達の祭前の静かな興奮が伝わってくる。日が落ちると、一斉にランプに目映い火が灯るそうだ。
街の奥には2本の尖塔が見える。その足元にはドーム状の屋根が連った大きな建物が待ち構えている。象徴的なこの建物はこの地の神を崇める神殿だ。
日照りに恵まれたタフグレンには、古くから自然を神として崇める独自の文化が根付いている。
神殿の2本の尖塔のちょうど間に太陽が昇る日に祭りは開かれる。太陽及び火の神に感謝を示し、実りの時期の到来を祝う。
大通りではパレードが行われ、人々は爆竹や花火で歓迎する。神殿前の広場には大きな松明が絶え間無く燃え続け、神殿では巫女が神々に舞いを捧げる。
松明の大きな木組みがされた広場を通り抜け、神殿へと進む。背の高い木の生えた、小さな前庭を進むと神殿の入口に辿り着く。入口は開け放たれており、誰しも自由に礼拝堂で祈りを捧げる事ができるが、女性は出来る限り肌を隠さなければならない。炎の神は獰猛で好色な為、贄にされてしまうと言われている。
ライナは先程買った布を丁寧にに纏い直した。ハイメはあまり気にする様子も無く、胸の前で軽く纒めている。
中に入ると乳白色の鉱石で作られた広い廊下が続く。つやつやした床は滑らかな肌の様だ。
その奥は礼拝堂となっていて、広々とした空間に真っ赤な絨毯が敷き詰められている。天井からは、無数のランプが手の届きそうな程低い位置まで吊り下げられており、大きな円を描いている。その中心には見た事のない程巨大で豪華なシャンデリアが位置している。
上を見上げるとドーム型の天井は高く、バーガンディーに彩られ、黄金の文字にも似た細密紋様が施されている。無数のランプの灯りに照らし出された細工は金色に輝き、何とも豪華で壮麗だ。王宮の内装やチャオヤンの装飾にも全く引けを取らない。豪華で繊細な独特な美しさがある。
息を呑み上を見上げるライナと、きれいと思わず呟き、口を開けて見惚れるハイメ。
「アウルヴァングとヴィトにも見せてあげたいな」
特にグノームは手先が器用で細かな細工を得意とするから、きっと驚き感嘆するだろう。良い刺激になるはずだ。帰った時、ちゃんと伝えられる様に覚えておきたい、とハイメは目を凝らし、脳裏に焼き付ける。
ライナもティレットに話してあげようと静かに見入った。
礼拝堂の至る所で人々が膝をついて祈りを捧げる。この強い信仰の祈りが力を与え、いつしか神にも等しい存在になる。荘厳で静謐な空気が満ちている。息をするだけで祈りが身体に入ってきてしまいそうだ。
「暫く見てていいよ。でもここは礼拝堂だから他の人の迷惑にならない様にね」
ナディルは2人に小声で言うと、奥の扉へ向かう。扉の前には白い布を纏った男性が祈る様に目を伏せて立っている。
「ジグムンド様におあいしたいのですが」
ナディルは小声で彼に話し掛け、王宮の身分証を提示する。
「お伺いしております。少々お待ち下さい」
彼はナディルに頭を下げて扉の奥へと消えて行った。
暫くして扉が開き、しなやかな白い布を纏った老人が姿を現した。大神官のジグムンドだ。
「お久しぶりです」
ナディルは彼に頭を下げる。
「お暑い中、よくいらっしゃいました」
ジグムンドも丁寧にお辞儀をすると、ナディルを扉の奥へと招こうとした。
「連れの者を呼んで参ります」
ナディルは粛々と祈りを捧げる人の横を静かに通り過ぎ、ライナとハイメを連れて戻る。
「さぁ、充分堪能したかな。奥にお入りください」
ジグムンドは目尻に皺を寄せて、優しくも威厳に満ちた声で言う。彼に促されて3人は扉の奥へと進む。
パタン、と優しく扉を閉める音を聞き終えると、老人はライナとハイメを振り返り、優しそうな皺々の笑顔を作った。
「神官のジグムンドと申します」
差し出された手はゴツゴツとしていて剣だこが幾つもあった。
「ライナです」
ライナはその手をそっと握り返してお辞儀をした。
「ハイメです」
ハイメも上目遣いでライナの真似をする。
ジグムンドはにこにこと微笑ましそうに2人を見た。
「奥に巫女がおります。案内しましょう」
ジグムンドは幾何学模様を描くバーミリオンのタイルに彩られた廊下を進んで行った。




