表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セブンス エッダ  作者: りん
少女が小さな世界の殻を破る音
21/118

10

 結局ライナは広場のベンチに座り、穴あきチーズ(エメンダルン)燻製(ルクト)紅魚(ラクス)、それにたっぷりの若葉菜(メスクラン)玉ねぎ(ルーク)、オリーブの実まで入った棒パン(ケイン)サンドを頬張っていた。

 ナディルがあれもこれもと付け足すうちに、パンは分厚く膨れ上がり、ライナは食べるのに一苦労する。

 ――やっぱり、多いんだけど……

 心の中で呟くも、にこにこと満足気にこっちを見てくるナディルには何も言えない。

 少し硬めのパンはあっさりとしていて、中に挟んだ具材の味を引き立てる。ライナは特に穴あきチーズ(エメンダルン)の木の実に似た香ばしい匂いと味を気に入っている。

 ナディルもハムと穴あきチーズ(エメンダルン)、トマト、緑菜(ブラサラ)の挟まった棒パン(ケイン)を片手に、王都までの旅の計画を話す。


「ところで王都への行き方なんだけど、この街の移転の魔法陣(ビフレスト)だと遠回りになるから、ル=イースランの街まで行こうと思うんだけど……」


 大きな街には大体移転の魔法陣(ビフレスト)が設置されている。魔法陣は教会が管理しているので、同宗派の教会と教会を繋いでいる。つまり、神の御子派(ニスカペンデ)のこの教会からは創世神派(カトルスケ)の王都へは行けない。それどころか、王都のある大陸の教会は殆どが創世神派(カトルスケ)なので、神の御子派(ニスカペンデ)のこの教会と繋がる場所は、広い大陸の端の方の、王都から大分離れた所にしか無い。

 それならば、ここから北へと向かった、創世神派(カトルスケ)の教会から成り立つル=イースランの街まで行く方が随分楽なはずだ。


「ライナは馬に乗れる?」


 ライナはナディルの言葉に、頭を横に振る。馬なんて乗った事が無い。


「そっかぁ……流石に歩いてだと物凄く時間が掛っちゃうからなぁ。

 俺の後ろでもいい?」

「……え?」

「普通の馬じゃなくて、ちょっと大きい馬なんだけど、その分凄く早いからすぐ着くよ。

 でも振り落とされないように気を付けてね」


 有無を言わさず、にっこり笑うナディルにライナは戸惑う。

 少し嫌な予感がしたが、馬に乗れないライナは従うしかない。

 足元にはパン屑を目当てに灰青色の鳥が集まって来ていた。彼らは一生懸命頭を動かして、パン屑を啄ばむ。

 鳥達を眺めながら不安と一緒にパンを飲み込んだ。




 街を出て、森とは違う方向に歩くと、若緑色の草原が続いていた。風が流れるたび、さわさわと音を立てて、針の様に細長い草が足元で揺れる。ナディルは草の生えていない広い場所を見つけると、剣の鞘で地面に○と△を描いた。そして△の中に、魔法陣の描かれた一枚の札を置き、自分は○の中に立つ。


「危ないから少し離れていて」


 ライナにそう言うと、短く呪文を唱える。

 すると△の中に置かれた紙が光り、家畜の馬の2回りは大きい魔獣と思しき馬が現れた。

 魔獣は艶々とした濡羽色の毛が全身を覆っていて、逞しい体からは足が8本も生えていた。

 ライナが茫然として眺めていると、馬は鼻を鳴らしながら立派な(たてがみ)を揺らした。


「スヴァジルファリって言うんだ。良い子だよ。

 借り物だけどね……俺は召喚士じゃないから」

 ナディルが魔獣の鼻を撫でと、馬は真っ黒な目を細める。


「とっても賢くて、自分より魔力の高い者は絶対に襲わないから大丈夫だよ」


 確かに賢そうな馬だが、その大きさと容姿に圧倒される。そもそもこの馬の魔力はどれ程で、魔力の無いであろうライナは乗って大丈夫なのだろうか。不安で胸が一杯になるが、ライナに与えられた選択肢は、これに乗って、振り落とされない様に目的地まで行く事しか無い。ナディルを信じるしかない、と覚悟を決めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ