第23話 魔法剣士の噂2
見るからに不健全な魔法使いジャングが使っていた魔法『不死者の呼び声』を手に入れたおかげで、無制限に敵が増えるのを阻止することができるようになった。
「くそ、この田舎者がぁああ!」
蒼い炎の円陣から、ジャングが逃げ出した。
俺は走ってあとを追いかける。足は俺のほうが速かった。
「逃げるな!」
そのまま背中を一発、斬りつけ、ジャングを血溜まりに沈める。
「クソ、クソぉぉ、ぉぉ……なん、なんだぁ、お前は……ぁ」
「魔法剣士アニルだっつんだろ、この悪党」
何度も言わせんナッツ。
「……死んだか」
ジャングが大人しくなった。
血溜まりがゆっくり大きくなる。
人を初めて殺した。
動揺してる自分がいる。
別に生かすつもりもなかったけど。
若干、罪悪感って湧くもんだな。
これ俺、法で裁かれたりするんだろうか。
大きな街には、たくさんの人間が暮らすために、いろいろな決まりごとがあって、それは法と呼ばれていると、あの人に教えてもらったことがある。
大丈夫だよね? こいつ俺のこと殺そうとしてきたもんね?
「エロタッチのアニル!」
上からスコップを握りしめた墓守りのバサスが走って降りてくる。
「す、す、すごかったな……! お前、あんな魔法を使うのか!」
「まあね」
ちょけすぎない。アニルユーモアがあんまりウケないのは、これまでの経験で学んだのでね。
「こいつ、邪悪な魔法使いだったに違いない! よくぞ倒してくれた!」
「パッと見、魔法的な儀式を行っていたようですし、もしかしたら流行病の原因もこいつかもしれないです」
「おお! そうなのか!」
「いや、可能性の話で──」
バサスはあちこち歩き回り、蒼い炎に手をかざして「あちい!」と悲鳴をあげる。
興奮して話を聞いていない気がする。
まあいいか。
この様子なら、バサスは俺の行いの正当性を保証してくれるだろう。俺が法とやらで裁かれる心配はたぶんない。
「しかし、こりゃあ埋め直すのが大変だな」
バサスは散乱したアンデッドたちを見て、深くため息をついた。
「手伝いますよ。悪いんで」
「助かるよ、エロタッチのアニル」
──町長の視点
私の名はガシュ・エルドランド。この美しいアルバドンの町長であり、このあたり一帯の土地を治める領主である。最近は、領内で野盗が数を増やしている。
騎士たちは出っ放し。アルバドン内での巡回人数、回数が減っている。このままではこの街の治安にも綻びが出てくるかもしれない。
「はあ」
椅子にもたれかかり、目頭を揉む。
近頃は巷で流行病なるものが流行っていると、治癒院のウィーブル・オーエンスも言っていた。まったく、どうしてこうも上手く行かないのだろうか。何かを立てれば、何かが立たなくなる。
まあ、そっちのほうは、エロタッチのアニルという回復魔法の使い手が現れて好転しているようだ。とても卑猥な魔法らしいが、今はこの力に頼るしかないとウィーブル院長は言っていた。私は魔法も医療もまるでわからぬ身。そっちは専門家に任せるほかない。
コンコン。
扉がノックされる。
「入りたまえ」
「はい、失礼します」
書記官が羊皮紙を何枚か重ねて持ってきた。
「こちら褒賞の確認です」
「うむ」
褒賞。アルバドンで活躍した町民に贈られる謝礼だ。主に、衛士や騎士が対応するべきだった仕事を、代わりに片付けた場合に出ることが多い。例えば、犯罪者の拘束・始末とか。ほかにもいろいろな場合で衛士舎から褒賞申請があがる。
最終的にこの私の目で確認し、アルバドン家の財庫から褒賞が出る。
今回の褒賞は、えー。
迷子の猫を見つけた、200シルバー。許可。
街道で野盗を拘束、1000シルバー。許可。
酔っ払いの制圧、400シルバー。修正600シルバー、許可。
適当だと思われる褒賞を与えていく。
こうした仕事が、アルバドンをより良い町にするのだ。
「ん? バード霊園で、闇の魔法使いを討伐?」
添えられている詳細を確認する。
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『討伐! 邪悪な魔法使い!』
霊園の地下で、邪悪な魔法使いジャングなる者が、怪しげな儀式を行っていました。アンデッドを作り出す魔法をもちいて、墓場で眠る者たちを起こし、街に危害を加えようとしていた模様。冒険者アニルがこれを阻止。ジャングなる者は戦闘により死亡。冒険者アニルは、流行病の原因が、地下で怪しげな儀式が行われていることにあると事前に突き止めており、これを阻止するために、勇敢に立ち向かいました。よって聡明で善良なる冒険者アニルへ、褒賞を賜れるようお願い申し上げます。
保証人:墓守りのバサス
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ずいぶんな事件が起きていたようだ。
闇の魔法使いとは、なんと物騒な話だ。
それに流行病の原因だとは。
墓守りのバサスはよく知る男だ。がさつで品が足りないが、それでも気楽で善き町民だ。わざわざ嘘をつくような男でもない。
それにこの冒険者アニルというのは、もしやエロタッチのアニルなのでは? うーむ、確証はないが、まあ、バサスが身元を保証しているのならば、別に褒賞を出してもいいだろう。冒険者ということは、ベラルダも身元を確認しているはずだしな。
褒賞3000シルバー、許可。
「このアニルという奴と、この事件について調べさせるんだ。闇の魔法使いの儀式などという危険極まりない行為、私の町で到底許されるものではないからな」
「かしこまりました。手配します」
「事実関係を確認次第、褒賞も手渡してこい」
書記官は指示を受けたあと、静かに部屋を出て行った。
私は窓の外を見やる。
美しい我が町が広がっている。
「冒険者アニル、か。治癒院での医療行為、さらには流行病の原因を突き止め、これを阻止とな。なんと立派な町民か」
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