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田舎の天才魔法剣士、冒険者になる。  作者: ファンタスティック小説家


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20/30

第20話 エロタッチのアニル

 なにこれ、また俺、怒られるわけですか?

 ベイルボートで散々怒られるのには慣れてるからいいんですけど。


 2日ぶりに治癒院の院長ウィーブルに会った。

 彼は治癒院の入り口に立つ俺を見つけるなり、飛ぶような速さで駆け寄ってきた。


「来たか、アニル! 待っていたぞ!」

「先日は申し訳ありませんでした。悪意はなかったんです。魔法の発動条件はマッサージでしたので仕方なく──」

「こっちに来たまへ」


 言われて、手を引かれる。

 2日前、俺がマッサージを施した女の子がベッドに横たわっていた。

 しかし、以前と違って意識がはっきりしている。


「彼が君に回復魔法を施した魔法使いだ」


 なにこれ公開処刑ですか。


「アニル様、ですね? 私を救ってくださったという」

「……はい」


 ん? 流れ変わったな?


「これはどういう……?」

「アニル、私たちは君に謝罪をしなければならない。2日前、君が回復魔法を施したこちらの子は、なんと驚異的な回復を見せたのだ。さあ」


 ウィーブル院長が言うと、女の子はゆっくりとベッドから降りた。両足で立っている。


 ちょっと胸が熱くなった。

 よかったね。立てるようになったんだ。


「恐らくは君の施した魔法『村長の揉みほぐし(ダニエル・エロタッチ)』が流行病に対して効果を発揮した結果だろう。その証拠に、彼女だけがこの2日で回復を見せた。これは偉業だぞ、アニル。君の魔法だけが、現状、この流行病に対抗することができる唯一の手段なのだ!」


 ウィーブル院長はバシッと指差してきた。

 まじか。あの村長すごいじゃん。


「ひいてはアニル、君に依頼をしたい。患者たちへの治療を継続的にお願いしたい。我らオーエンス治癒院の5人目の魔法使いになってほしいのだ」

「いいですよ。報酬は?」

「基本給として日に銀貨5枚。患者ひとりの治療につき、追加で銀貨2枚でどうかね?」


 なんだと!?

 ひとり30分だとして、日に10時間マッサージで、銀貨40枚!?

 1日でグリフォン4回分ですよ!? そこに基本給!?


「やります」

「交渉成立だな」


 こうして俺はしばらくオーエンス治癒院で働くことになった。


 ──治癒院勤めから1週間後


 思ったより、きつい。しんどい。

 指とは手首とか痛いし。自分にもマッサージしないと。


 でも、治癒院の女の子に『村長の揉みほぐし(ダニエル・エロタッチ)』の指導をするのは楽しいです。ウィーブル院長からのお達しで、指導料をもらえることになったので、そちらもありがたく頂戴している。ちなみに1回の指導で銀貨1枚ね。安いけど楽しい。


「アニルさん、こうですか?」

「ちょっと違いますねぇ」


 俺は女の子の背中をオイルマッサージする。指導です。


「んっ、あ、アニルさん……」

「どうしましたあ?」

「い、いえ、なんでも……ん」

「アルバドンの住民たちの命がかかっていますからねえ(ニチャア」


 指導です。


 ──治癒院勤めから2週間後


 俺はベッドで泥のように眠っていた。

 小鳥の鳴き声に目が醒める。


「んあ、もう朝か……仕事にいかないと……」

「アニル、顔色ひどいよ、すこしは休んだほうがいいんじゃない?」

「大丈夫だよ、デイジー。今日も4グリフォン頑張らないと……」

「そう……ううん。アニルは頑張りたいんだもんね。治癒院に必要とされるのなんて名誉なことだもん。アニル、ファイト。今日もたくさんの人を助けてきてね」


 治癒院で働き始めて、俺も流行病について詳しくなった。


 一つ目、えー、この病の患者は、毎日4~5人増えます。

 二つ目、元気になった患者は10日経つと戻ってきます。


 つまりどういうことか。

 このままだと俺は過労で死ぬということです。


 毎日17時間くらいマッサージをしている。老若男女を問わずにな。じじいの時に萎えた気持ちを、若い女の子を触って回復させながら、どうにか繋いでいるんだ。卑劣だなんて思うなよ! 現場は命がかかってるんだ! 俺の!


「アニル、体の方は大丈夫かね?」

「まあ、はい」

「どうか今日もよろしく頼む」

「はい……」


 夜まで働き詰めて、俺はようやく解放された。

 もう嫌だ。治癒院に行きたくない。


「あ、エロタッチのアニル様!」


 治癒院から『灰色の狼亭』への帰り道。

 俺が命を救った少女とばったり出会った。


「アニル様のエロタッチのおかげで、また歩けるようになりました! ありがとうございます!」

「うん、それはよかったね。お大事にね」


 最近は患者に話しかけられることも増えたな。

 しかも、このあたりでよく……。


 俺は周囲を見渡す。

 霊園のすぐ隣の道だ。


 本当にこのあたりでよく話しかけられる。

 ん? もしかして患者たち、みんなこのあたりに住んでるのか?


 そんなことある?


 疲労で重たくなった思考が、何かを閃きそうになっている。


 三つ目、魔法使いの免疫から魔法的な原因の可能性がある(仮説)


 もしかして、この辺になにか原因があるのでは?


「霊園、か」


 俺はこのあたりのことを、頭にとどめつつ──疲れたので『灰色の狼亭』へと帰ることにした。


 翌朝、治癒院への出勤前に、俺はベラルダに依頼を確認した。


「なんか霊園まわりの依頼ありません?」

「ん、ちょうどひとつ、入ってきてるよ」


───────────────

依頼書

条件:剣を扱える者


内容:霊園の地下墓地にて夜中に聞こえる異音の調査


報酬

前払い:銀貨2枚


仲介人

『灰色の狼亭』ベラルダ

依頼人

墓守りのバサス

───────────────


「これ貰いますね」


 この夜、俺ははやめに治癒院での医療行為(エロタッチ)を切り上げて、装備を整え、霊園へと足を向けた。

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