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3/12

望まれざる者

俺は戦場で、過ごした。

戦場には仲間か敵の骨が転がり、

しゃれこうべは蛇が巣として利用していた。


骨は最近のもの、古い物があるのだろう。

妙に白っぽく、カスカスとした感じのものがあった。

そういった骨は踏むと、

ボロボロと崩れる。


恐らく最近のものは堅く、

まだ生命が尽きていないぞと、

いわんばかりの姿をしていた。


木が朽ちるのは何度も見てきた。

しかし、

骨も朽ちるとは思ってもいなかった。


ところどころに、

金狼族の金の毛と銀狼族の銀の毛が、

塊となって落ちている。


そしてそれにすら、

なんらかの虫か何かが集っている。


毛を食う虫でもいるのだろうか。

それであれば、

村で飼いたいものだと、少し思った。


ある日、

俺は金の毛と銀の毛が混じった、

丸い丸い塊を見た。

それをコガネムシのような虫が、

ころころ、ころころと転がしている。


ふんころがし?

毛ころがし?


俺はその姿が異様なもののはずなのに、

ずいぶん気に入って、一刻ほど眺めていた。


(ぷーう、ぷーう)

突然ラッパのような音がする。


俺はとっさに剣を構える。

どこからともなく、

金狼族と銀狼族のオス達が現れた。


おかしい。

争い合っている感じではない。


彼らは俺を取り囲む。


「お前は兵士か?」

ずいぶんと老けた金狼族のオスが言った。


「あぁ」

短く答える。


「生き残りだな」


「あぁ」


「これからどうするつもりだ」


「最後まで生き残ったんだ。村に戻って英雄になる」

俺がそういうと、囲んでいる皆が笑い出した。


「何がおかしい」


「お若いの、気を悪くするな。

ここにいる連中は皆、お前と同じ事を言った。

だから笑ったんだ」


「あんたらも、生き残りか?」


「あぁそうだ」


「なぜ英雄にならなかった。戦争は終わらないのか?」


皆クスクスと笑っている。


「戻った連中もいたさ」


「ちょっと待て。そんな連中はいない」


「そうだろ」


「なぜだ。生き残ったのに、なぜ戦争は終わらない」


「わからないか?」


「あぁ」


「教えてやろう。戦争が日常の一部だからだよ」


「日常の一部」


「あぁ。

お前、仕事は何だ。

親の仕事は、その親の仕事は?」


「兵士だ。親も爺ちゃんも」


「そうだろ。戦争が終わったら、お前らは何をする」


「何って……、狩りをすれば」


「狩りだけで生活ができるか?兵士たちが皆狩りをするんだぞ」


「できない……、のか?」


「狩る連中が増えると、獲物が減る。獲物が減ると、食えなくなる。どうなる?」


「食えなくなる奴が出る」


「そういう奴は?」


「飢え死にだろうな」


「飢え死にするまで待つか?」


「他の奴の獲物を奪う」


「そうだろ」


「それが戦争が終わらない理由か?」


「そうだ」


「でも殺し合いだぞ」


「他に良い手があるのか?」


「分け合うとか……」


「奪いたい奴はいるだろう。そういう奴は?」


「殺す」


「結局殺し合いだろ」


「そうだな。だから戦争をして、減らすのか?」


「そうだろうな。俺らも詳しい事はわからない」


「あんたらは何をやっている?」


「俺らは武器を回収して、金持ち国に売る」


「金持ち国が買うのか?」


「あぁ」


「でも武器も金持ち国が売ったものだろう」


「そうだ。戦いの金はどこから出てるか知ってるか?」


「金持ち国が出してくれている」


「そうだ。くるくる回っているのさ」


「そうなのか?」


「そうだ」


「俺はどうしたら良い?」


「どうしたい?」


「できれば生き延びたい。家族に会いたい」


「家族に会いたいなら帰れ。ただ帰れば殺されるだろう。でも子犬になって戻れる」


「生身では会えないのか?」


「会えた奴がいたと思うのなら、挑戦してみろ。

寂しさは皆がわかっている。

お前の愚行にも反対しないさ」


「俺が死ななかったら、子犬になって戻らない。戻らなくても心配しないかな」


「戻らない場合、遺族年金が増額されるから、良い生活ができるし、悲しまないよ」


「そうか。あんたらは俺を受け入れてくれるのか?」


「あぁ、ただ一番下っ端だぞ。ちゃんと働けよ」


「もちろん。あの……、お願いします」


「あぁ。みんな新人だ。さっさと武器を回収して、宴をしよう」

老けた金狼族のオスは言った。


皆頷いた。


「いいか、剣は鞘を見つけて、必ず入れろ。怪我するぞ」

先ほどの老けた金狼族のオスは叫ぶ。

周りのオスは彼の事を長老と言っていた。

俺も長老と呼ぶことにした。


そこから俺達は、

淡々と剣を集めた。

剣を一か所に集め、

それをねぐらと呼ばれる場所に運ぶ。

何度も何度も運ぶ。


俺は気が付いた。

その剣は鞘さえも、

すべて同じ形だった。


「これ全部同じものだな」

俺は隣にいた銀狼族の男に言った。


「あぁ、金持ち国は同じ剣を金狼族と銀狼族に与えているからな」


「そんな事をして、金持ち国にどんな得があるんだ」


「知らねぇよ。

大事なのは、これを金持ち国に売れば、俺らに金が入るって事だよ」


「そうか。金は何に使う」


「そりゃ決まってる。忘れな草だ」


「忘れな草?なんだそれ」


「今日の宴でわかるよ。あぁ俺はデートだ。あんたは?」


「アーマンだ。よろしくデート」


「あぁ。実は俺、金狼族と話すの初めてなんだ」


「俺もだ。銀狼族と話すのは初めてだ」


「実はよ、一応金狼族と仲良くはしてるんだが、どうも戦争の時にやり合ったから、話しづらくてな。お前はなんで俺に話しかけた。わだかまりとかないのか?」


「俺の場合、戦闘開始直後に、頭を殴られて気絶してたからな。知らない間に戦争が終わってて、恨みも何もない」


「そ、そうか。それは幸運だったな」


「そうなのか?」


「そりゃそうだ。皆血まみれになって戦ったんだからな。仲間が死ぬのも沢山見た。目の前で仲間が殺されるんだぞ。そりゃ恨みも湧くよ」


「それにしては、喧嘩もなさそうだな」


「それが忘れな草の効果さ」


「そうなのか」


「そうさ」

デートは笑った。


「じゃあ今日はこのくらいにして、後は狩りを始めるぞ。各々好きなものを狩れ。但し仲間は狩るなよ」

長老は叫ぶ。


「うぉー」

オス達は叫び、方々に散る。

俺もネズミを狩ることにした。


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