36.らしくない
ランドビーとルイは剣を重ねたが、お互いすぐに剣を引っ込めた。
マリアとポールトはルイがいるなんて知るわけもなく、迫ってくる敵の対応に追われている。
馬を走らせながら、交戦しているため、致命傷は負っていないが、危険な状態が続いている。
ルイ以外の左から来た世界脱獄集団4人はランドビーに切りかかろうとする。
ランドビーはその4人の攻撃を捌くために、もう1度剣を構える。
「やめろ!!俺の親友だ!!」
ルイはランドビーに切りかかろうとした大柄の男4人を声だけで静止させた。
そして、一言伝えた。
「謝るなんてランドビーらしくない」
ルイは馬を操りながら、ランドビーの目を見て、少し怒ったような声色でそう言った。
ランドビーはそんなこと言われるとは思っていなかったため、目を見開いた。
その後、ルイは脱獄集団の4人を連れて、突然スピードを落とした。
「俺らしくないって?」
ランドビーが聞き返した時には、ルイは後方に下がっており、ランドビーの声はルイには届いていない。
後方に下がったルイがもう1度スピードをあげる。
「——いくぞ」
ルイは大柄な男4人を連れて、ポールトを狙う世界脱獄集団5騎に突進した。
「うああぁぁぁ」
「何事だ!?」
5騎の脱獄集団はルイたちにぶつかられて、体制を崩し、地面に落っこちる。
先頭の馬が転んで、雪崩のように右から来てる脱獄集団以外、全員転んだ。
「ルイ何してんだ!?」
ランドビーが声を張り上げる。
「——え?ルイ?」
ポールトは後方の敵が全員転んだことに驚いていたが、ルイという名前に動揺した。
そして、ポールトはランドビーの顔を見る。
「ルイは生きてたし……今、目の前にいる。」
ランドビーは淡々と告げた。
ポールトは驚きのあまり声が出ず、今起こっていることに理解が出来ない様子である。
「……ルイ!!」
ランドビーは声を張り上げたが、その声とは裏腹に乗っている馬はルイと離れていく。
マリアは右の敵を剣で捌きながら、馬を操っており、後ろの状況を理解できていない。
馬から落ちて、倒れたルイの姿を見つめるランドビーとポールト
——これじゃ、またルイをひとりぼっちにさせる
ルイの姿がどんどん小さくなっていく。
世界脱獄集団に馬でルイを連れ去られたあの時のように
ランドビーとポールトの考えていることは同じだった。
——ルイをB国に連れ戻す
「マリア!!馬を止めろ!!」
「マリアさん!!馬を止めてください!!」
2人は声を揃えて、叫んだ。
まずは目の前の敵を片付ける。
「!?わかった!!」
マリアは今この状況で馬を止めたら、世界脱獄集団から集中砲火をくらうことは分かっている。
けれど、ランドビーとポールトが息を揃えて言った。
馬を止める理由はそれだけで十分だった。
ランドビーとポールトは足の痛さなど忘れて、天高く飛びあがり、マリアと交戦している世界脱獄集団に剣を振りかぶった。
脱獄集団たちは空高く飛び上がった少年に意表を突かれる。
——キーーン
剣と剣の交わる音がこの地に響いた。
——くっそ……なかなか強い
飛び上がっても、通用しないのか……
コットンの時も……通用しなかった
ランドビーとポールトの剣は相手に刺さらず、受け止められてしまった。
マリアが操っていた馬は完全に停止して、10騎の脱獄集団も停止した。
3対10
馬から降りて、止まった状態でこの数の差は埋まりようがない。
特にこの相手だと……
「ルイを世界脱獄集団から救い出す。だから、お前らはくたばれ」
ランドビーはそんな数の差など関係ないと脱獄集団を睨め付ける。
「ルイは俺たちと共にB国に帰って、笑って朝ごはんをたらふく食べるんだ。
部外者は邪魔するな。」
ポールトは鬼の形相で脱獄集団を見る。
「囲め」
世界脱獄集団の1人がそう言って、ランドビーたちを円形に取り囲んだ。
マリア、ランドビー、ポールトは背中を合わせ、脱獄集団と向かい合う。
「ランドビーくんとポールトくん……あとでたっぷりと説教してあげるから、今は敵の攻撃を交わすことだけ考えなさい。
——これは私のお父さんからの命令です。」
マリアはこうでも言わないと指示を聞いてくれないと思った。
「ごめん……」
「……本当にごめんなさい」
「謝罪も後で受け付けます」
マリアはランドビーとポールトを信じて馬を停止させたのにも関わらず、10人に取り囲まれた状況に今日一番の冷や汗を流す。
——最初の一撃で2人
次の一撃で1人
2人には、その間攻撃をかわしてもらって……
マリアは頭のなかで、この死地を潜り抜ける方法を模索する。
——お父さん……言ってくれたんだよね……
「どんなことがあってもマリアの味方だ」って
なら、絶対大丈夫
マリアは覚悟を決め、脱獄集団より先にトップスピードで切りにかかる。
——1、2…………3
マリアは予定していた通り、1人目、2人目を一撃で、3人目を次の一撃で倒したかと思われたが、敵を深くまで切りつけることはできなかった。
「……この女やばいぞ。まずこいつだ。」
浅い傷を負った脱獄集団の兵がそう言って、マリアを狙う。
——殺しきれてない……
2人は……大丈夫そう
なら、もう1度……
マリアはもう1度同じ敵を狙って、剣を振るう。
呼吸を止め、速さに特化して、スピードを上げる。
——シュッ、シュッ、シュッ
マリアの振るった剣はまたも掠っただけで、仕留め切れていない
「はあはあ……」
マリアの呼吸がひどく乱れる
——キン、キン、キン
マリアは呼吸を乱しながら、3人の手負いの敵の剣を捌き、防戦一方となる。
さらに、3人の敵が加わる。
——まずい
……お父さん……私頑張ったよね……
ランドビーくんとポールトくんだけでも、逃げれるように……
「——マリアさん!!」
マリアが危険な状態であると察知したポールトは2人の敵を振り切り、マリアの盾となるべく、高く飛んだ。
「ポールトくん……」
マリアは夜空に舞い上がったポールトが輝いて見えた。
「くっそ……」
ランドビーはポールトと戦っていた敵をおびき寄せるように剣で攻撃する。
——4人の敵は流石に……
ランドビーは攻撃を交わすだけでも精一杯となる
——シュッ
ランドビーは顔に傷を負っても、諦めず、敵の攻撃を交わし続けた
——やられてたまるか
こんなところで死んでる場合じゃないんだ
お父さんもフルトム隊長もホープおばあちゃんも
天国で見守ってくれてるんだ
俺が天国に行ったら、怒られる
ランドビーは最後の気力を振り絞って、剣で攻撃しつつ、敵の攻撃を避ける
4人の脱獄集団はランドビーのすばしっこさに翻弄される。
——諦めるな、諦めるな……
「はあはあ……」
ランドビーは確実に動きが鈍くなっていた
それでも、避け続ける
脱獄集団はランドビーが鈍くなっていることを察知し、ギアをあげる。
「やれ」
——もうダメだ。避けきれない……
やられる……
限界だ
「捉えた」
そう言って、脱獄集団の1人がランドビーの首に標準を合わせて、剣を振りかぶった。
ランドビーの頭に死がよぎる
——お父さん、お母さん、ニーナ……
俺もうダメかも
お父さんごめん
お母さんとニーナを守るって約束したのに
そのために、貰った剣なのに……
本当にダメだ
ランドビーが諦めたその時……
「———諦めるなんて……らしくないぞランドビー」
ランドビーの目の前には、脱獄集団の振りかざした剣を食い止めたルイの姿があった。
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