35.ランドビーの謝罪
「ニット様!!カルロス団を追っていた敵がこちらに近づいてきます!!」
カルロス団がヘルッピー団のスピードを凌駕して、突き放した。
その結果、敵がヘルッピー団を集中砲火することになる。
「思ったより速いっぽ……」
カルロス団を追っていたA隊と世界脱獄集団は500騎程度だが、その分、足の速い馬が集められており、ヘルッピー団は今にも追いつかれそうな勢いである。
「あいつらさっきのやつらより遅いぞ!!」
「あいつらだけでも仕留めるぞ!!」
A隊と世界脱獄集団はカルロス団より遅いヘルッピー団を仕留めにかかる。
さっきよりも士気が高まっているような感じさえする。
「まずいです!!ニット様!!」
「仕方ないっぽ。
ヘルッピー団よ聞けっぽ!!
今から、各自バラバラでB国まで逃げるっぽ。」
そう言って、ニットは急に左へ方向転換して、広い平原の闇に消えていく。
ヘルッピー団の隊員たちも各自バラバラに暗い平原に散っていく。
A隊と世界脱獄集団もバラバラになって、ヘルッピー団を追った。
「2人とも覚悟はできた?」
マリアはカルロス、ロールとランドビー、ポールトのやり取りをみて、ランドビーとポールトの抱えている目標がどれだけ過酷な道であるかを知った。
それでも……いや、だからこそランドビーとポールトをB国まで送り届けなければならないとマリアは思った。
「生きて帰るぞ……マリア。
俺はお母さんにB1に昇格したんだって伝えるんだ。」
「覚悟はできてます。
俺も家族に強くなったところを見せたい。」
マリアはその言葉を聞いて、2人に覚悟が戻ったと感じた。
2人は自分の身が重要であるとカルロス団から身をもって、学んだ。
ランドビーはルイのことを諦めきれてはいないが、こんなところで戦死するわけにはいかないと感じた。
ポールトは現実を受け止めて、自分の身を守ることが重要だと思った。
生きていれば、必ずルイと再会できると信じて。
「よし、最後まで気を抜かずに、必ずB国まで帰るよ」
マリアのその言葉に、2人は「おう」「はい」と声をあげた。
マリアはニットとは逆の右斜め前へと方向転換して、敵と距離を取った。
ヘルッピー団と完全に孤立して、マリアとランドビーとポールトと馬1匹でB国まで目指すことになる。
「2人とも敵が来てるか確認して」
「後ろからは来てないです」
ポールトが目を凝らして、後方を確認し、伝えた。
「右からは……来てる、右から敵が来るぞ。」
ランドビーが暗闇のなか、目を凝らして、敵を発見した。
マリアはすぐに左に進路を変えて、右から来る敵と距離を離す。
「数は?」
「10騎ぐらい」
「マリアさん後方からも10騎、敵が来てます!!」
マリアが左に進路を変え、減速したため、敵との距離が近づき、ポールトの視界に敵が飛び込んできた。
「やばい……ぶつかる!!」
白黒のボーダーを着た世界脱獄集団がランドビーたちに突っ込んでいく。
ポールトの目と鼻の先まで10騎の世界脱獄集団が近づいた。
「左からも来てるぞ!!」
左から5騎の世界脱獄集団が襲ってきて、ランドビーたちは前方を除き、左、右、後ろと敵に包囲される形となる。
「ランドビーは左、ポールトは後方、私は右。
逃げながら、敵をやっつけるよ。」
マリアが馬を走らせながら、的確に指示を出した。
「いくぞおら」
「やるしかねぇ」
ランドビーとポールトは怪我を負って、包帯を巻いているだけではあるが、根性で世界脱獄集団と対峙する。
ランドビーとポールトにはまだまだやることがある。
ルイを探し出すこと。戦争をなくすこと。大切な人の盾になること。今の自分を家族に自慢すること。みんなで笑って、朝ごはんを食べること。
どれも2人にとっては大事な事。
ランドビーは生きようと思った。
お父さんに託されたお母さんと妹のニーナを守るということも生きることから始まる。
まだ整理しきれていないけど、どれも生きているから可能なこと。
ランドビーは腰から剣を抜いて、左から来る敵に備えた。
白黒のボーダーを着た世界脱獄集団5騎がランドビーの目の前までやってきた。
その5騎の先頭の少年が剣をランドビーに向け、剣を振りかぶろうとした時……
ランドビーと白黒のボーダーを着た黒髪の少年は目が合った
時が止まったような感覚がした……
——いつも一緒にいた。
共に暮らすようになって、喧嘩も増えた。
お母さんにも「優しくしなさい」って言われてたのに、結局できなかった。
失って初めて、その言動に後悔が付き纏う。
当たり前の日常は一瞬で消えて、失った日常が当たり前になる。
——別に嫌っているわけではないのに……
いつも隣にいると腹が立つことも多くなる。
お腹が減って、腹が立つなんて言い訳だ。
お腹が減っていなくても、喧嘩はたくさんしたと思う。
それから、ポールトを誘って、一緒に食糧を狩るようになった。
ポールトと一緒だったら、喧嘩することは減ったような気もする。
だけど、喧嘩した時は1対2になることが多くて、いじめのような感じになっていた。
それでも、1度言い合いになったら引き返せない。
ポールトは大体俺の味方になった。
俺の方が気が強かったからだと思う。
ポールトは誘ってもらったという恩があるのだろうか。
あの時、なぜ素直に謝れなかったのか。
なぜ平気なフリをしたのか。
嫌な予感はしていた。
だけど、引くに引けなかった。
そんな自分勝手で幼稚な俺が伝えたかったこと。
そんな一言では済まない。
それでも、ずっと伝えたかったこと。
「——ルイごめん」
ランドビーは白黒のボーダー服を着た黒髪の少年ルイと剣を重ね、唖然とした表情で向かい合い、そう伝えた。
あの時からだいぶ伸びた黒髪のルイも目を大きく見開いている。
目の前にルイがいるなんて誰が想像できるだろうか。
ルイを助けられないと思っていた。
けれど、目の前にいる。
白と黒のボーダー服を着て。
でも、ルイがたとえどんな服を着て、どこに所属しようが、ルイが無事だったことだけでいい。
それだけで十分だ。
ランドビーはもう1度ルイと会えたことが嬉しかった。
ずっと苦しんできた人へ贈られたご褒美
太陽が顔を出そうとしている夜空に誰かが顔を出して、笑ってくれているように感じた
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