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始まりの朝ごはん  作者: 桃縫ヌヌ
第2章 A国決戦
34/36

34.軽蔑するでしょ

「B隊を殲滅しろーーーー!!」


1000騎を超えるA隊と世界脱獄集団が大声をあげて、ニットやランドビーたちを追いかけてくる。

しかし、ランドビーにとって、追いかけられていることなど些細なことで、それよりもルイを助けられない自分の無力さに改めて、絶望を感じていた。


「2人とも!!敵が来たら、迎撃しなさい!!簡単に命を落とすわよ。」


マリアはランドビーとポールトがどこか上の空であると感じて、気を引き締め直させる。


「はい」

「うん」


2人は空返事をした。


マリアはその返事をきいて、さらに馬を飛ばし、ヘルッピー団の先頭にいるニットの横まで辿り着く。


「このまま逃げ切るっぽ。

馬を信じるっぽ。」


ニットはB国まで突っ走ることを選択する。

大きな森の方角から来たB隊と思われる300騎はもの凄い速度でA隊と世界脱獄集団を振り切り、ヘルッピー団に近づいてくる。

ヘルッピー団も普段の特訓のおかげで、A隊と世界脱獄集団を少しずつ突き放していく。


「近づいてくる300騎はB隊っぽ?」


「おそらく……」


マリアは自信が無さそうに言った。

ニットは謎に近づいてくる300騎を不気味に感じた。

徐々に徐々に、300騎が迫ってきて、ニットはその300騎が誰なのか肉眼で捉えた。

オールバックの髪型をした筋肉ムキムキの男がニットの目に映った。


「カルロス団っぽ。

カルロス団よく生きてたっぽ。」


ヘルッピー団の馬よりも遥かに早いカルロス団はヘルッピー団に追いついた。


「ヘルビン隊長はどこに?」


敵に追われているにも関わらず、涼しい顔をして馬を走らせるカルロスがニットに尋ねる。

カルロスだけでなく、カルロス団全兵が余裕そうな面持ちをしている。


「分からないっぽ。

でも、ヘルビン様のことだから、今頃B国に帰ってるはずっぽ。」


「そうか。それは良かった。

ランドビーとポールトもよく生き残ったな。この後も頑張れ。」


「おう」

「はい」


ランドビーとポールトは興味がなさそうに返事をした。


「特訓の成果が出たようですね」


ランドビーとポールトの教育係を務めたコート・ロールが金髪ロングの髪を揺らして、嬉しそうに言った。


「はい、ありがとうございます。」


ポールトは淡々と言った。


「ロールおばさん……戦争をなくしたいのに俺の力では無理だ。」


ランドビーが俯いて、小声で言った。

戦争どころか、ルイも助けられないそんな悔しい感情が言葉に漏れ出ていた。

ランドビーはフルトム隊長に加えて、ロールからも戦争をなくす夢を託され、ロールは今「1番ランドビーのことを理解している」と言っても過言ではない。


「当たり前です。力が足りないなんて分かりきってることです。

それでも、あなたたちはその託された夢を叶えようと必死に足搔いている。

その姿をみて、私の諦めてしまった戦争をなくすという夢も叶えてくれるんじゃないかって思ったの。」


ロールはランドビーを見つめて、伝える。

ランドビーはロールに言われたことを思い出した。


『でも、勘違いしてほしくないのは戦争がいつかなくなると信じてるし、あなたたちならできそうと思っちゃった。私の諦めてしまった夢もついでに叶えてくれる?』


——必死に足掻いてたら、叶えられるものなのか……


「では、俺たちは先に逃げさせてもらう。」


カルロスは平坦な声で言った。


「そろそろ私たちは行かなくちゃ。」


ロールはランドビーとポールトが黙り込んているのをみて、悲しそうに言った。


「ちょっと待つっぽ。

他の1万近いB隊はどこにいるっぽ?」


「——確認はしていないが……おそらく戦死した。」


カルロスはまたも平坦な声で言った。


「——どういうことですか?」


ポールトが思わず、口を挟んだ。


「そのままの意味だ。A隊ナンバー1のクルシャ・キエ―マが戦場に飛び込んできて、対抗できなかった。」


カルロスの戦場にいたトール

ランドビーはすぐにトールのことが頭に浮かんだ


——トールは……


「嘘だろ……」


ランドビーが声を震わせて言った。


「本当のことだ。」


「お前たちだけ逃げてきたのか……」


「そうだ」


そう言って、カルロスは馬のスピードをあげて、ヘルッピー団を置いて行った。


「軽蔑するでしょ……ごめんなさい」


ロールは少し目に涙を浮かべて、悲しそうな目でランドビーとポールトをみて、カルロスに付いて行った。

ロールの悲しそうな目をみて、ランドビーは後悔した。

『お前たちだけ逃げてきたのか……』なんて言ってしまったことを。

カルロス団のスローガン——「自分が生き残ることだけを考えろ」ということを知っているのに、思わず言ってしまった。


ポールトはカルロスと共に戦っていたトールが戦死したのではないかと脳裏によぎった。

そして、一瞬カルロス団を憎いと思い、ロールが言った「軽蔑するでしょ」にポールトは首を頷きかけた。


しかし、ポールトは特訓していた時のロールの言葉を思い返した。


『目の前の仲間がどんどん死んでいったけど、止めることは無理だった。

戦争はなくならないと思ってしまった。

そこから私は自分が生き残ることだけ考えて、今まで戦ってきたの。

軽蔑するでしょ。』


その言葉を聞いた時、ランドビーとポールトは首を振った。

しかし、さっきロールが言った「軽蔑するでしょ」にポールトは首を頷きかけた。


そう、戦争という大きな力の前で、個人のできることなんて限られている。

だから、自分だけでも生き残るという考えは、おかしなことではない。


——それでも……それでも……なんとかしてほしかった……


ポールトはそう思った。


「切り替えるっぽ。

とにかく逃げないとやばいっぽ。」


ニットはカルロス団のことは気にせず、今は逃げることだけに集中するべきだと考える。


「ランドビー……トールさんがまだ戦死したと決まったわけではない。

トールさんならきっと……1人でもB国に逃げているはずだ。」


「そうだよ。俺とポールトとチンタマとトールで、必ず生きて帰るって約束したし。」


ランドビーとポールトはそう思い込むしかなかった。

エピソード34.軽蔑するでしょを最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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