31.少年たちの勇気に感謝を
——っくっう……ポールトは……
ランドビーは両足に1本ずつ矢が突き刺さり、地面に横たわっていたが、決死の思いで、ふらつきながら、立ち上がった。
横目でポールトを確認すると、ポールトに3本の矢が突き刺さっていることを確認した。
「……ポーㇽト」
「……ㇻンドビー」
2人は掠れた声で見つめ合う。
ポールトはまだ立てそうにない。
冷たい地面に血が少しずつ垂れていく。
「短髪坊主くん座りなよ~~いつでもトドメさせるんだからさ~~君たちってさ~~何者なの~~そんな小さな体でこんなところまでやってきて~~」
コットンは腕を組みながら、勝ち誇った顔でポールトを見下している。
ランドビーはコットンを睨む。
「いいの~~トドメ指しちゃっても~~」
コットンは3本の矢を服の中から取り出し、弓を引っ張る。
ランドビーは倒れるように地面に座り込み、降参した様子でコットンを見つめる。
「良い子~~良い子~~キャッキャッキャッキャッ」
コットンはランドビーを馬鹿にした笑い方をする。
「でさ~~最後に聞きたいことがあってさ~~
さっきどっちのチビか分かんないけど、
「フルトム隊長の仇は俺らがうつ」って言ってなかった~~?
私の気持ちを踏みにじって楽しいの~~?
どういうつもりなの~~?」
コットンは平然と話し、2人に問いただす。
ランドビーとポールトは痛みもあって、コットンの言っていることが理解できなかった。
「……どういう、ことだ?」
ランドビーは力の抜けた座り方をしていて、コットンの目を見て、尋ねた。
——シュッ
コットンはランドビーに向かって3本の矢を放った。
3本のうち1本の矢がランドビーの頭を掠りかけた。
「——私のお兄ちゃんを天国に送ったやつがなんで仇を討ってもらえる立場の人間なんだって言ってるんだよ」
コットンは高圧的な声を出した。
表情もさっきとは比べ物にならないほど、怒りに満ちている。
「……お前はお前たちはフルトム隊長を天国に送った……それはどうなんだよ」
「……ゃめろランドビー」
——あんまりコットンを刺激するな……いつトドメを刺されてもおかしくないんだぞ、とにかく時間を稼げ
「殺されて当然の人間だよ〜〜暗闇のフルトムなんて〜〜チビだから知らなくて当然だよね〜〜」
「なんだよ暗闇って……」
「暗殺者として、世界中を恐怖に陥れたんだよ〜〜」
「だからね〜〜暗闇のフルトムは仇を討たれる側なんだよ〜〜まあ知らなくても当然だよね〜〜チビだし〜〜」
「……」
——暗殺者?これが嘘だとも思えない。
でも、戦争ってそんなもんだろ
「分かってもらえたらいいんだよ〜〜フルトムがカスでお兄ちゃんが可哀想だって〜〜こんなチビにトドメを刺すのは少し心が痛いけどね〜〜」
ヘルビンが矢を取り出して、弓を引っ張る
弓がギチギチと音を鳴らしている
——ポールトだけでも助ける
——ランドビーだけは絶対守る
ランドビーは足に突き刺さった矢を力強く引っ張り、足から引っこ抜いた。
ポールトは「ゼーゼー」言いながら、力を振り絞って、前傾姿勢になりながら、立ち上がった。
「じゃあね~~」
コットンが矢を放とうとした瞬間——
「——コットンお前を殺してやる」
少しだけ離れた距離から、ドスの利いた大きい声が聞こえてくる。
コットンは声の聞こえた方に目を向ける。
コットンの方へ全速力で向かってくるB隊の制服を着た人影
B2隊の高身長で褐色肌、そして銀髪の20代前半の女
「——待ちやがれコットン」
コットンは想像以上に高身長女が近づいて来ていたため、標的をランドビー、ポールトから高身長の女に切り替える。
高身長女が剣を片手に、凄い勢いで突っ込んでくる。
「サヨナラ~~」
コットンは向かってくる高身長女に矢を放つ。
その矢をいとも簡単そうに、全て剣で捌く高身長女
「ふーん~~」
「あ、動いてるのバレバレだよ~~」
ランドビーが隙をついて、動き出そうとした時、コットンがそう言った。
「よいしょ~~」
もう1度高身長女に向かって、コットンが3本の矢を放つ。
しかし、高身長女は地面にしゃがみ込んで矢を避ける
たまらず、コットンは距離を取って、もう1度矢を放つ
……がそれも避けられる。
「なんかムカつくね~~」
コットンは距離をもう少し取った。
すると、高身長女は方向転換をして、ランドビーとポールトの前にコットンの矢から庇うように停止した。
ランドビーとポールトは高身長女が遠目では分からなかったが、近くで見ると誰か分かった。
「マリアさん……?」
ポールトはとても小さな声で言った。
「フルトム隊長の娘か……?」
ランドビーは掠れた声でそう言った。
「——ブレークファーストくんとポールトくんに伝え忘れてたことがあるの。
いっぱい伝えたいけど、今は時間がないから1つだけ
——お父さんの遺言を伝えに来てくれてありがとう」
「……そんな……ごめんなさい」
「……ありがとうと言われることなんてしてません」
ランドビーとポールトはフルトム隊長を置いて、逃げてしまったことに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「いいえ、遺言を伝えるというのはとても勇気のいることで、私がそれをできる自信はないわ。
私の方こそ、あの時はありがとうと言えなくてごめんなさい。
あとは、心の弱いフルトム・マリアに任せておきなさい」
「……俺も戦う」
「……俺も戦います」
——もう同じことを繰り返したくない
——大切な人の盾になるやつが座ってていいわけがない
2人はコットンに向かって、ファイティングポーズをとる。
「その体じゃもう駄目よ。座ってゆっくり休んで。
お父さんのために戦ってくれてありがとう
あとは私に任せなさい
B2隊だけど、私強いから」
「ワンダー・コットンよ。恨みというのは怖いのよ
私——フルトム・マリアがお前を切り刻む」
そう言って、マリアがコットンに向かって、突進する。
「……待って!!」
ポールトは慌てて声を出したが、マリアはもう行ってしまった。
「あいつの娘さん~~わざわざ来てくれてありがとね~~
今からお父さんの元に連れて行ってあげるよ~~」
コットンは距離を取りながら、3本の矢を放つ。
しかし、マリアには当たらない。
「そんなに逃げてばっかじゃ当たらないよ」
マリアが追いかけ、コットンが距離を取りながら、矢を放つ。
「へ~~」
「お兄さんは元気かしら?」
「……………ええ、とっても元気に暮らしてるわ~~ところで、あなたのお父さんは元気かなぁ~~?」
「とっても元気よ」
「それは良かったわね~~ファザコン娘さん」
「ありがとう。ブラコン妹さん」
「あなたとは気が合いそうだわ~~早く死んでくれないかしら~~」
「奇遇ね。私もちょうど同じこと思ってたわ」
コットンとマリアの距離感は変わらず、マリアだけが一方的に矢を放たれ続ける状況である。
「俺たちにできることを……ニットさんとヘルッピー団の残りの兵をここに……連れてこよう」
ポールトは体の自由が効かないなか、頭を働かせる。
「俺が連れてくるから……ポールトはそこで待ってろ」
「いや、ランドビーはヘルビン様に援軍を頼んできてほしい」
ヘルビン対ガリオラの戦場は少し遠くに見えるが、どういう状況か分からない。
「分かった」
ランドビーがそう言った瞬間……ヘルビンの戦場の方から大きな声が聞こえてくる
——そろそろ"あいつら"が来たかな~~ここまで耐えるの大変だったんだから~~
「よ~~し、あっちに向かっちゃお~~」
コットンはそう言って、松明で灯されているヘルビン対ガリオラの戦場に向かう。
「急に光の方向へ向かうなんてどうしたの?虫にでもなったつもり?」
マリアは煽り口調でコットンを挑発する。
「だって、"あいつら"がもう来るんだもん~~」
「"あいつら"?」
「え~~"あいつら"だよ~~"あいつら"
——"世界脱獄集団"だよ~~」
……??
月と星空はまだ綺麗に輝いていた。
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