27.雷が落ちた
ヘルビンのチームを明らかに狙うようにA隊5000騎が近づいてくる。
「やばい敵がこっちにくる」
チンタマが怯えた声で言った。
「ヘルビン様についていくしかない
絶対置いて行かれんなよ」
ポールトは必死に馬を乗りこなす。
——こっちに向かってくる敵は何かが違う気がする
雰囲気、気迫、緊張感、いろいろあると思うけど……やばいというのは確かだ
「絶対つまずくなよ」
ランドビーが後ろを振り返りながら、言った。
ランドビーたちの後ろには、B1隊5000騎と倒れていたB隊が続いているため、少しでもつまずいたら、味方にひき殺されてしまう。
「メンタ、こっちに向かってくる敵が誰か分かるっぴ?」
ヘルビンが落ち着いた声で尋ねる。
「恐らく、A隊ナンバー3のトルカ・シエが先頭を率いています」
メンタも落ち着いた声で答えた。
A隊5000騎は残り50メートルのところまで迫ってきた。
——逃げ切るのは無理っぴ。
正面衝突するか、方向転換するか、急停止して交わすか
「B1隊5000騎と付いてきたB隊は向かってくる敵に正面衝突しろっぴ。」
ヘルビンは正面衝突を選択した
ヘルビンの指示を受けたB隊隊員は声を張り上げ、返事して、向かってくるA隊に対して、真っ向から衝突した。
——ドーーン
馬と馬が衝突して、鈍い音が鳴る。
その後すぐに、剣と剣が交わる音が聞こえる。
ヘルッピー団はそのまま直進する。
「ヘルビン……様、俺らだけ逃げるつもりか?」
ランドビーは先頭にいるヘルビンに怒りを含んだ声で尋ねる。
「……そんなわけがないっぴ。
それじゃ完全敗北っぴ。
ヘルッピー団よ、力を貸してくれっぴ。
今から左折して、正面衝突した隊を助けにいくっぴ。」
ヘルッピー団から今まで聞いたことのない歓声が上がる
「凄い……」
ポールトはもの凄い熱気の歓声を聞いて、鳥肌がたった。
「うおーーーーーー」
チンタマは周りの熱気につられて、無意識に声を荒げる。
ヘルッピー団は旋回して、A隊5000騎の横から突っ込んでいく。
「ぶつかるっぽーーーー」
ヘルビンの右腕ニットを先頭にヘルッピー団2000騎が勢いよく、A隊にぶつかった。
A隊はヘルッピー団がいきなり旋回してきたため、反応できなかった。
「シエ様、指示を!!」
A隊ナンバー6のホン・ガリオラはA隊ナンバー3のトルカ・シエに指示を求めた。
トルカ・シエの隊はかなりの数がやられてしまった。
「コットンとガリオラは距離を取って、立て直せ!!」
A隊ナンバー3のシエは水色の髪で真っ白な肌色をしている青年で、武力と知力をどちらも兼ね備えたバランス型である。
シエは剣でB隊をさばきながら、指示を出した。
「了解~~」
コットンは高音ボイスで返事をし、騎馬500騎をつれて、戦場から距離を取った。
ガリオラも返事をして、騎馬1000騎をつれて、戦場から距離を取る。
ニットやヘルビン、ランドビーたちは騎馬の勢いが途中で止まってしまい、戦場に取り残された。
「馬から降りて、攻撃を喰らわないようにするぞ!!」
ポールトはランドビーとチンタマに伝える。
「それだ!!」
ランドビーはポールトの意図を察する。
他の兵士たちは馬に乗って戦っているが、ポールトたちは身長の低さを活かして、攻撃を喰らわないように、馬から降りて、戦うことにした。
「ポールト、チンタマ絶対離れるな!!」
ランドビーが目の前の敵と戦いながら、叫んだ。
戦場はカオスとなり、ランドビーたちは背中を敵に見せないように、3人で背中を預けあった。
「チンタマ!!」
ポールトは叫んだ。
チンタマが敵に腹を刺されて、倒れこんだ。
「俺のことはいいから……」
チンタマは水たまりができた地に這いつくばりながら、声を絞り出した。
ランドビーとチンタマは背中を預け、チンタマを守りながら、敵と対峙する。
目の前にいる人間が敵か味方か分からないぐらい、カオスとなっており、とにかく自分の身を守ることで精一杯な状況となった。
——強い
ポールトは敵が想像以上に強いと思った。
——けど、ロールさんの瞬間移動に比べたら、マシだ
カルロス団のロールよりは弱いと感じ、ポールトは徐々に敵の強さに適応していく。
ランドビーも同じく、敵の強さに適応していった。
「ポールト左から敵来てるぞ!!」
ランドビーは左からくる敵に気づき、声を荒げる。
ポールトはランドビーの声で気づき、間一髪のところで、剣を剣で防いだ。
——俺は大切な人の盾になるんだろ……
ランドビーに守ってもらってんじゃねぇよ
「おりゃーーーーーー」
ポールトは自分の目標を思い出し、ギアをあげて、敵を倒していく。
「このまま戦っても、キリがねえぞ」
ランドビーは俊敏な動きで攻撃をよけながら戦うが、無限にいるかのように思える敵は本当にキリがない。
負傷しているはずの敵が立ち上がり、ランドビーとポールトの前に立ちはだかる。
——ピーーーーーー
高音の笛が戦場に鳴り響く
その音を聞いたヘルッピー団が次々とその音に向かって、馬で駆けていく
「俺らも向かうぞ!!チンタマ立てるか?」
ランドビーは直感で笛の音の方へ向かうべきだと思った。
「……ああ、立てるぜ。ほんとにごめん」
チンタマがかろうじて立ち上がり、馬に跨る
「気にするな!!行くぞ!!」
ポールトは馬を走らせる。
その後ろをチンタマとランドビーが付いていく。
笛の音の方角も敵だらけだが、なんとか剣で捌きながら、カオス状態の戦場の外へ出ることができた。
「……はあ……はあ死ぬかと思った」
チンタマがお腹を押さえながら、声を枯らして、言った。
戦場を出た先には、ヘルビンとニットが800騎ほど連れて、待っていた。
「よく来たっぴ。ランドビー、ポールト、チンタマ」
あと、少し待つっぴ。」
ヘルビンはランドビーたちに労いの声を掛けた。
「この子供よくやるっぽ。」
ニットは驚いた目をランドビーたちに向けた。
その後、少しずつヘルッピー団が戦場から脱出して、計976騎集まった。
「よし、そろそろ行くっぽ。
ここに来てないヘルッピー団の隊員たちも戦場に留まる選択をしたから、心配ないっぴ。」
ヘルッピー団は笛が鳴ったら、笛の場所に集まるという決まりがある。
しかし、それは命令ではないため、臨機応変に対応しても問題ないのである。
「今からあの少し遠くにいるワンダー・コットンとホン・ガリオラを潰しにいくっぴ。
あの二人は戦争経験が特に少ないっぴ。
必ず叩き潰すっぴ。」
——ワンダー・コットン……?ワンダー?
ランドビーとポールトはワンダーという名前に引っかかる
——あ
中央本部の情報室でトールから聞かされた言葉を2人は思い出した。
『2人には話しておきたいんだけども、フルトム隊長が戦死された……お亡くなりになられた。
フルトム隊長はA隊のワンダー兄弟という敵に命を奪われた。』
——潰す、絶対潰す
——必ず、仇を取る
ランドビーとポールトは目を合わせ、頷いた。
2人は腹の底から怒りが沸き溢れた。
雷が大きな森に落ちた。
エピソード27.雷が落ちたを最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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